DUNE関連映画をランク付けしてみよう
アイキャッチ画像引用元:映画.com
最近やっと「DUNE 砂の惑星 PART2」を見たので、DUNE関連映画のランキングでもやってみようと思いつきました。
DUNEはフランク・ハーバート作の壮大なSF叙事詩。昔読もうとして序盤で挫折した。映画化はこれまで二回、映画製作ドキュメンタリーが一回作られている。
対象作品はデヴィッド・リンチ監督の「DUNE/砂の惑星」(1984年)(以下リンチ版DUNE)、アレハンドロ・ホドロフスキーが映画化を試みた顛末を描くドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」(2013年)、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「DUNE 砂の惑星 PART1」(2021年)「DUNE 砂の惑星 PART2」(2024年)(以下ヴィルヌーヴ版DUNE1、2)。
さて私のランキングは、
1位 ホドロフスキーのDUNE
2位 ヴィルヌーヴ版DUNE2
3位 ヴィルヌーヴ版DUNE1
4位 リンチ版DUNE
それでは以下に各作品の感想を。
ネタバレはなし。ただしホドロフスキーのDUNEに関してはネタバレっていうか事実が書いてあったり、ホドロフスキー自身の発言が引用されていたりします。
ホドロフスキーのDUNE
砂漠の星で繰り広げられる壮大な物語よりも、映画づくりについてのドキュメンタリーが面白く感じるというのは完全に自分の趣味な気がする。でもとても面白いドキュメンタリー。
「エル・トポ」や「ホーリー・マウンテン」などのシュールな作品で知られる、チリ人監督アレハンドロ・ホドロフスキーが1970年代に一流のスタッフを集結させ、自らの全てを賭けてDUNEの映画化を試みたが、結局彼の夢が実現することはなかった。
ホドロフスキーの独特のビジョンはかなり期待感が高まるし、映画化されていたら傑作になっていただろうと関係者は揃って言う。ただ、これに関して私は少し懐疑的。
何故ならこういった予算のかかる大作の監督は、辛抱強さとか、コミュニケーション能力とか、マネジメント能力とか、作家性だけでなく仕事を粛々と処理する能力が必要だと思うんです。ホドロフスキーは名声を得ていたとは言え、つくった映画は自分自身や身内を起用した小規模な映画であり、ディレクションのやり方も結構独特らしい(ホドロフスキーの息子談。自分の思い通りにいかないとすぐキレる、など。映画ではなく何かの記事で読んだ)。出演者には一流スターも含まれ、関わる人数も膨大な映画をまとめあげるのはどうも向いていない気がする。映画スタジオがこの企画に乗らなかったのは、もちろんホドロフスキーの実験的な試み(上映時間20時間を想定していたりとか)に資金をぶちこむ勇気がなかったというのもあるでしょうが、やはり生粋の芸術家であるホドロフスキーの、職業として監督をこなす能力にも懐疑的だったのではないかと思う。
と、1位にした割に何だかネガティブな意見になってしまいましたが、映画が作られなかろうが、作られても失敗しそうであろうが、このドキュメンタリーが面白いのは変わりません。
やはりホドロフスキー自身には強烈なカリスマ性があり、彼に心酔して共に夢を追いかけたスタッフ達同様、観ている側も彼に導かれるようにどんどん映画に引き込まれていきます。
一番好きなシーンは、映画製作が頓挫したあとデヴィッド・リンチが監督したDUNEを映画館に見に行き、あまりのひどい出来に嬉しくなってしまった!と告白するところ。「進撃の巨人」の「10年は引きずってて欲しい!!」に匹敵するカッコ悪い台詞を嬉々として発する、ホドロフスキーの魅力が爆発する名シーン。
あと、この作品はヴィルヌーヴ版DUNEのファンにも是非おすすめしたい。きっとそこかしこにヴィルヌーヴ版DUNEの祖先的な要素を感じられるはず。
ホドロフスキーと仲間達の挑戦は決して無駄にはならなかった。失敗に関する話でありながら、それでも前を向き続けるんだ!という極めてポジティブなスタンスが良い。
ヴィルヌーヴ版DUNE2
DUNE関連映画の中での最新作。
この映画の順位が「ホドロフスキーのDUNE」よりも下なのは、以下の理由によると思う。
IMAXシアターで見ていない。
この映画はIMAXで見るべきだと繰り返し聞いた。IMAXじゃなくてもせめて映画館で見るべきだった。さすがにうちの32インチのテレビではダメだったと思う。
前評判がとにかく高く、期待値が上がりすぎた。
北米映画レビュアーたちの大半はこの映画は傑作だと称賛していた。そして、確かに面白い。さすがはドゥニ・ヴィルヌーヴ。ここ何年かで見た大作映画でこれより面白いものがあったかと聞かれると、ちょっと思い付かない。ただ私はここ最近のハリウッドの大作映画をあまり見ていない。単純に見る気がしなくて…
ここら辺の事情はとてもここで語れる量ではなく、DUNEの話題から離れてしまうので省略します。が、ものすごく簡単に書くと、昨今のハリウッドの大作映画の不調、それに不満と危機感を抱く映画レビュアー達にとってDUNEはまさに救世主〈リサーン・アル=ガイブ〉であり、ここで一発潮目を変えて欲しいという期待が込められた上での大絶賛なのではと思う。ただ、こういう現象はDUNEにだけ起きたわけではないとも思う。これについてもまた別に記事にするかも。
私はと言えば、正直この映画の感想をどう書いたら良いのかわからない。2時間45分という長さを全く感じさせなかったから、この映画に相当な吸引力があるのは確か。文句も特に思い付かないんだけど、同時に引っ掛かりもなかったというか…
それにこの映画は明らかにPART3に続くので、これは言わば中編で評価がしにくいというのもある。
ただ、誰かを神格化しその人に自分たちを導いて欲しいという願いと、自分たちで未来を切り開くべきだという意思のぶつかり合いはやはり興味深い。そこにはいわゆる「白人の救世主」に対する批判も勿論盛り込まれている。と、当たり障りのない感想を書いておきます。
あと、さっきのホドロフスキーではないけど、やっぱり「進撃の巨人」っぽさを感じた。
この記事はネタバレなしなので、進撃の巨人のネタバレも一応避けるためかなりぼんやりした説明になってしまうけど、ポールの能力、そして原作から改変されているらしいチャニの行動などがね…さてPART3ではどうなるか。
ヴィルヌーヴ版DUNE 1
この映画は決して悪くないんだけど、中心となる領主家であるアトレイデス家にとにかく興味が持てなかった…そして代わりに悪役のハルコンネン家がもっと見たかった。
だいたい、ステラン・スカルスガルドとデイヴ・バウティスタという特徴的な容姿の俳優を起用した上に白塗り+丸坊主にさせるなんて、面白くなるに決まってるんだから反則だ。その上ハルコンネン家には変な声で謎の詠唱をするやつがいたり、男爵が真っ黒い重油みたいな風呂に沈んでたり、ビジュアル的に面白いシーンが多すぎた。これに比べるとアトレイデス家のミニマリストっぽい屋敷とか、レト公爵の高潔な人柄とか、ポールのかっこいい能力とか、悪くはないんだけどインパクトに欠ける。俳優も皆すごく良かったんだけど、ハルコンネン家のキャラをいくらなんでも立てすぎたと思う。
リンチ版DUNE
ホドロフスキー達から製作権が有名プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスに移り製作された、珍妙なSF作品。
ストーリーや設定をそのままナレーションで説明するなど、編集がズタズタ。しかしこの珍妙さが好きだという人もいるらしいし、デヴィッド・リンチのファンならリンチ史として見ておいて損はないと思う(リンチが自分の作品だと認知されたいかは謎だけど)。ちなみにホドロフスキーはリンチの才能は認めていて、「彼は天才なんだから、きっとスタジオが作品をめちゃめちゃにしたんだろう」という意見。
個人的に印象に残っていて好きなのは、ナメクジみたいな巨大生物がただただ宙に浮いている映像。ナレーションでストーリーを強引に引っ張っていくわりに、よく意味がわからない抽象的なシーンを残しているのは一体誰の判断なんだろう。謎多きチャーミングな失敗作。
さて、今回この記事を書いてみて、ヴィルヌーヴ版DUNE3が公開されたら映画館で見るべきだと思った。それが公開されるとき自分の状
況がどうなっているかわからないけど、出来れば見に行きたい。諸事情あって映画館にはもう何年も行けていない。
Part3以外に前日談が製作されるのも決定しているようだけど、そっちは正直どっちでも良い。というか、やっぱりこういうフランチャイズ化のニュースには身構えてしまうんですよね。
全てを見通すクイサッツ・ハデラックがこの世界にいない限り、あれこれ手を伸ばすのは慎重にならないとね。
それではこの辺で。