見出し画像

映画『cloud』観てきました(ネタバレあり)

 公開初日の夜、暇だったこともあり一人で映画館へ。予約した時は客はまばらだったけれど、いざ行ってみるとかなり埋まっていてびっくりでした。

 事前情報としてはサスペンスホラーってことしか知らなくて、なんとなく「菅田将暉がサイコパスの役でもやるんかな?」って思っていたら全然違いましたね。

 簡単にあらすじをお伝えすると、工場勤務の主人公(菅田将暉)が副業の転売で一発儲けたことを契機にビジネス拡大させようとしたら、あちこちで恨みを買っていた相手たちに集団で襲われてしまうというもの。雇った従業員の青年(奥平大兼)の助けを借りて命懸けで逃げ出すも、数々の相手を手に掛け恋人(古川琴音)までも殺し、人生転落していく話。

 ストーリーだけをなぞるとそこまで特徴的ではないように思えますが、実際に映画を観ると引っかかるところが多々あって考え込んでしまい、すっきりした気分では観終われず。

 主人公が菅田将暉だったし、ジャンルがサスペンスホラーってこともあって完全にエンタメとして気楽に楽しめる映画と勘違いしておりました。

 それこそ映画の前半はずっと緊迫感が切れずに食い入るように観てたんです。それだけスリリングな見どころが詰まってて面白かった。たとえば、”もしかしたらこの人、精神状態やばいかも”的な人が複数登場してきて、それぞれが何しでかすかわからない雰囲気が漂っていて怖いんですよ。そしてそいつらが主人公を恨んでいるのがわかる。決定的な何かは起こらないけれど、ずっと不穏で。あれはもう菅田将暉はいつ殺されてもおかしくなかったですね。

 後半になってくると、(個人的には)そんな緊迫感が失速した印象でした。途中まではちゃんと怖かったですよ。菅田将暉が振り向き様ライフル突きつけられてたところまでは。

 でもだんだんと、「これもしかして菅田将暉死なない感じ?」「あれ、全然生き残るじゃんこれ」って思ってしまって。

 なぜなら絶好の殺害チャンスを襲撃者たちはことごとく無駄にするんですよね。せっかく菅田を壁際やボロい小屋に追い詰めても、後ろで不審な物音がしたらみんなでゾロゾロ様子見に行って、菅田将暉を一人にするという。案の定、その度に菅田は逃げるし。心の中でずっと突っ込んでました。「いや見張り立てようや!」と。

 またライフルに弾装填しようとしたらボロボロ取りこぼして菅田に返り討ちにされてるし。せっかく人質取ったと思ってもあっさり隙見せて殺されてるし。

 だから途中から、これ監督は菅田将暉を殺す気ないんだなと思って、かわりに全然別のことをずっと考えていました。

 それは、奥平演じる謎の従業員・佐野の正体について、です。

 当初彼は、『東京に行ったけど学がなくて仕事つけず、こっち(地元)に戻ってきた』と恥ずかしそうに言っていました。仕事ぶりも真面目で素直な好青年、という印象だったのが、途中から違和感が出てきます。

 菅田の仕事場の窓ガラスが誰かに割られてしまった時のこと。佐野がその犯人を捕まえ「かつての後輩です」と言いました(セリフはうろ覚え)。その犯人は全身をぶるぶると震わせながら地面にうずくまり慌てて逃げていきます。そいつを見届けながら「もうこんなことさせませんから」と佐野は平然とした様子。菅田は礼を言いますが、どこか釈然としませんね。無害そうに見えた佐野だったのに・・・実は怖い人?

 また菅田からぜったいに自分のPCを触るなと言われていたにも関わらず、菅田が不在の時に隠れてPCを立ち上げ何やら探っている。またネットで菅田のエゴサをし、菅田への恨みを持つ者たちが集う掲示板を読み込んでいたり。そのことが菅田にばれるとエゴサには触れず、「値上がりしそうな(転売に適した)商品をリストアップしていたんです」「僕にも手伝わせてくださいよ」と図々しく迫ります。

 この時点で、登場時は自分は学がないと言っていた佐野でしたが、バカってわけじゃない、むしろ異様に勘が鋭く頭が切れるタイプだなと感じました。

 菅田に怪しまれて仕事を首になった時も、去り際、菅田に危険が迫っていることを告げ、何かあれば連絡ください(頼ってください、だったかな)と言ってどこかへ消えていきます。

 次に佐野が画面に出てきた時は、どこかの駅のホームで、謎の老人男性から紙袋を受け取っているシーンでした。この男性は佐野に向かって敬語で「組織に任せてくださればいいのに」と意味深なことを喋ります。組織・・・とは?

 佐野は何者なのか。もしかしたらヤクザのようなアウトローの人間か?だとしたら、彼は学がないのではなく、頭は常人より良いが学歴がないだけとかそういう意味だったのかも、なんて想像しました。

 佐野が受け取った紙袋の中には拳銃が何丁か入っていて、ここで完全に裏の人間であることがわかります。実はこの時菅田は、自分への恨みを持つ者たちからの襲撃を受けている真っ最中。佐野はそんな菅田をGPSで追って救出に向かいます。

 ここがね、もう謎です。危ない場所に出向いてまでなぜ菅田を助けるのか。何か理由があって執着しているとしか思えない。でもそれがなんなのかよくわからない。数ヶ月だけの、ただの雇用主と従業員の関係ですよ?菅田と佐野の関係が深くなるエピソードも特にないので、やっぱり佐野に何らかの思惑があるのでしょう。佐野というキャラクターの、この映画での役割は一体何なんだ。

 佐野は菅田に拳銃を分け与え、襲撃者たちを次々と殺していきます。最後、佐野と車で去っていくシーンでエンディングを迎えますが、暗澹とした空の色がフィクションじみていて現実感がなく、『これが地獄の入り口か』という菅田の力を落としたセリフで終わります。だとしたら佐野は、菅田将暉を地獄に引き入れた悪魔か何かなのかな・・・

 また文字数がすごいことになってしまったのでさらっと触れますが、菅田の恋人の秋子も、何を考えているのかよくわからない人物なのです。

 そんな感じで、ずっと頭がぐるぐるしていて気がつけば考え込んでしまう。そんな映画でした。時間があればもっかい観に行って、考察でもしてみたいところだけれど・・・(多分しない)

 解釈が色々と出てきそうな作品だったので、他の人の意見も聞いてみたいですね。

いいなと思ったら応援しよう!