三蔵法師は、どこにいる? ~慈恩寺を訪ねて~
私が幼稚園か小学校低学年の時、ドラマが再放送?してました。
西遊記です。
カッコいい歌だなあ!と、子どもごころに思いました。
作詞した奈良橋陽子さんのおじいさんは関屋貞三郎という内務官僚で、先生が内務省の研究をして研究費をとってきた流れで、少しだけ内務省の研究をしたときに、ちょっとだけ名前が出て来て、頭の片隅にありました。
内務行政の話は、あんまり面白くないなあ、という実感を得ましたが、比較的早くにマルクスの『資本論』とか、テイラーの著作とか(労務管理の昔の古典みたいなやつですね)、社会主義っぽいものを早くに官僚が研究している痕跡があったのは、面白かったです。
それはともかく。
天竺を目指した玄奘さんは、今どこに眠っているのでしょうか。
ここにいた。
埼玉県に慈恩寺台地という高台があり、その先端に「玄奘塔」があります。
マジ、リスペクトです。
これまた小学校低学年の頃、機動戦士ガンダムが再放送?されてました。「ジオン軍」「ジオング」。「ジオン」という響きは、子どもたちの頭にきざまれ、同じような響きを持つ地名だった「慈恩寺」は、ある種の崇敬の対象とされました。
そのことをたまたま立ち寄った東岩槻なる駅にて、電撃的に思い出したのです。
たまたま東岩槻に行くことなんかあるかよ、と埼玉県人なら思うはずです。
確かに。
しかし、それでも、たまたまなのです。
私は、ボーッと上の子のテストが終わるのを待ってました。
Google mapsを見て、「お、慈恩寺」。
この辺にあったのか。
そういえば慈恩寺中学校出身の同級生が、地名カッコいいと言われて、すげー田舎だよと言ってたな、と。
慈恩寺台地は、先日てつをさんの埼玉縦断の写真の中で目にして、それが気になっていました。
慈恩寺は、天台宗の名刹です。
正確には華林山慈恩寺というのかな?
食い違いの道が、この門の前にはありますが、城下町っぽい(写真の張り紙参照)。
見通しが悪いのでクラクションが頻繁になってました。
駐車場が広いので、イベントの時以外は、車でもいけます。
途中、道が狭いので気を付けて。
午前中に行ったら、数人しかいなくて、こういうところにも少子化や不況の波が、と思いました。
天長年間(824〜834)の創建だそうです。来年は創建1200年らしいです。すごいよね、1200年。ほんとかよって感じもありますが、様々な戦火に焼かれて、建物は新しいはずです。といっても、1843(天保14)年ですけどね。
大きな藤棚があって、その季節には綺麗なんでしょうね。今はタネと実が瓢箪みたいに成ってました。
観音様も有名なようですが、それらを鑑賞する時間はありませんでした。
「千手観世音菩薩」ですね。
最初、ここに玄奘さんがいるのだと思ってました。ところが、地図をみたら、ちょっと離れたところにいるようだ。
ハイハイ。
グーグルマップで見ると、この地図にある道は、出てこない。
ふむ。
歩いて行くと、藪がせり出していたり、打ち捨てられた宝物殿のようなものもあり、さすがに平成、令和の時は、こうした寺社には冷たいようです。
あっ、塔だ。塔が見える。
地図にしたがい小さな道をゆきます。
結構遠いのと、女性一人で歩くのはよくない感じがしました。
そして、冒頭の門にたどり着きました。
ここは、空気が良い。
塔がそびえたっています。
どなたかお香を焚かれていたのか、良い香りがしていました。
おばあちゃん家の香り。
私のおばあちゃんは、へんくつな人だったので、今の子どもらのように甘やかされてはいませんでしたが、甘いものをくれようとはしてくれました。服もつくってくれました。ちょっと、古いので、あんまり着ませんでしたが、心遣いに感謝しました。
今は荒れ果てた岩手の母屋の庭には、すぐりの実が成っていました。そのすぐりの実を漬けて、それを割ってのむジュースが好きでした。あんまり優しくないおばあちゃんでしたが、赤すぐりの実をとって食べたり、ジュースにしたりしてくれました。
そんなことを、塔を見ながら、思いました。
空は曇ってきました。
子どもを迎えに行って、駅と逆の方向に歩き出しました。
「三蔵法師、行くぞ」
「えっ、何なの、それ」
「誰もこの道行かないだろう、これがブルーオーシャンって奴だよ」
「単に変な道だから行かないだけでしょう」
「どいつもこいつも駅に向かうだけで、三蔵法師に会いに行こうなんて思いもしないじゃないか。俺は三蔵法師のところに行くんだ。」
「わかったよ・・・」
上の子と一緒に、玄奘塔と慈恩寺に行きました。
「おかあさんには内緒だぞ」
「変な道を開拓させられたとだけ言うね」
「文化っていうのは寄り道しないと生まれないもんなんだよ」
「ハイハイ」
帰り道、あみじゃがのサワークリーム味を食べて、機嫌を直してもらいました。
そして、遅くなった埋め合わせに、焼肉食べ放題をおごりました。
三蔵法師に会いに行ったのは、妻には内緒です。