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本の廃棄を検討する 10

子ども喧嘩に親が出る、というのはカッコ悪いことかもしれないし、自律性を奪うことかもしれないが、結構な金を出しているのに、その目的が達成できないのは本末転倒なので、大騒ぎする準備を立てておいた。

まあ、それはそれ以上考えても、不愉快になるだけなので、新書の整理を進めていく。

宮崎哲弥『新書365冊』(朝日新書 2006)

すっかりコメンテーターとしてのしゃべりがゆっくりになってしまった宮崎さん。昔は、宮台さんや福田さんとならんで、分かりやすい知識人だった時代があったのですが、それもまた、昔の話になりつつあるのですね。

自分はブックガイド本が好きで、その本の指示に従って、本を購入していくことが多い。それを一つ一つつぶしていく、そんな読書をしていた。結局、自分がないといえばないのでありますね。

2006年における新書のラインナップをみて、なんというか隔世の感がある。捨てられないかなあ。

小和田哲男『井伊直虎 戦国井伊一族と東国動乱史』(洋泉社歴史新書 2016 第2刷)

井伊直虎なのに2刷なの?って、日曜日のNHK大河ドラマの強さにおどろくばかり。これは、ちょうど井伊直虎が大河でやっていたときに、ちょっとした興味で資料として購入したもの。

洋泉社の歴史新書は、これは純粋にコレクションしているので、捨てないけど、井伊直虎のことをすっかりわすれていたよ。

ピンポイントでこじあけるようなキャスティングだなあと思ったけれども、次代の井伊直政の最期が、例の島津義弘の後退戦のときなので、ちょっともったいないし、主人公としては短すぎるので直虎から始めたのかな、と邪推した。

彦根にも行ってみたいなあ。

鈴木淳士『クラシック名盤ほめ殺し』(洋泉社新書 2000)

クラシックにしても、ジャズにしても、特に誰かからの伝承があったわけではないし、友人たちに詳しい人がいたわけでもないので、何から入ったらいいかわからず、こういったガイド本を読みました。ガイド本は好きです。

そうした伝承が行われるようなコミュニティにいられれば幸福だったのでしょうが、私は人嫌いなので、あまり、そういうところにはいられませんでした。なので、ガイド本と図書館で借りる本が、私の導きだったことは否めません。

ただ、この本を買ったのは、2000年ではなく、もっとあとのことかもしれない。クラシックについては、ほんと、教養のつもりで聴いていたから、なんとも言えないな。

ガイド本なので捨てない。

加藤秀俊『自己表現 文章をどう書くか』(中公新書 1987 第26刷)

異端の社会学者である加藤秀俊さんの文章指南。社会学者なので、コミュニケーションという観点から書き起こしていて、案外読みやすい。

パラパラめくっていて、最初の方に、柳田國男の「涕泣史談」の引用があって、これって「泣くことの歴史」を書いたエッセイだっていうんですね。柳田にこんなエッセイあったんだ、と思わせる、そんな細かいところまで目配りされている本。

小説家の取材の徹底ぶりの話など、結構教訓になっているものが多い。これも文章読本コレクションの一つだから、捨てられないかも。

石井美樹子『シェイクスピアのフォークロア 祭りと民間信仰』(中公新書 1993)

これも、もう読まねえかなあと思わなくもない。というのも、シェイクスピアの訳本全集をとりあえず読んで、その上で、シェイクスピアを通して、エリザベス朝の祝祭文化を見ようという本で、そこまでもう知らんでもいいかなあと思うからだ。

作品すらまともに読めてないし。

何回か蜷川幸雄の演出のシェイクスピア劇には行って、楽しかったけれども、やっぱりそこまでなんだよね。原文で読みたいとか、そこまではなかなか…。ただまあ類書を今後買って知識をアップデートするかというと、そうでもないだろうから、まあ捨てなくてもいいのかしら。

綺麗な本だし。

佐々木毅『近代政治思想の誕生 16世紀における「政治」』(岩波新書 1981)

この本は、今になってみると興味深いので結論としては捨てない。ルネサンスからバロックにかけて、イタリア半島に「近代なるもの」が顔を出す時に、教皇を頂点とした教会権力に対し、世俗権力がどのようにして自らの力能を認識したのかを考えさせられる本で、良い本だ。

要するに、教皇権の番人である状態を王たちが自認している時には、王権なるものの自立性はないわけで、その自立が思想において可能になっているのがマキャベリの著作であるという話。

ルネサンス後期の権力論は、いわゆるマルクス主義的な権力奪取の方法論に対して、別の権力移譲の形を想起させるので、そうした観点からも読まれる。

まあそういうのは青春の一ページな感じなので、これもとっておきたい。

遠野物語研究所『『遠野物語』の誕生 『遠野物語』の道を歩く』(遠野物語研究所 平成20年)

これは純粋な新書じゃないし、昔私の母方の叔父が市役所でこの講座を立ち上げた時の、市民講座の記録が本になったもの。第何回かは覚えてないけれども、これに駆り出されて誘導係のようなものをして、最後の打ち上げで、石井正巳先生や佐藤健二先生と飲んだ記憶がある。といっても私は一塊の編集者で、若輩者だったから、お話を聞いていただけだったんだけれども。

佐藤健二先生は、社会学の人だったけれども歴史的なこと、民俗学的なことにも知見が深く、出会った大学の先生の中でも比較的穏やかな方であった。当時、本の著者として知っていて、そんな人がと思って気後れしていたけど、スーツがバブルだなあと思った印象が強い。

これはメモリアルなものなので捨てない。


なんか気持ちも定まらないまま書いてみた。

いずれにしても人生になんかどうにでもなるわい。

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