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検便はいつも失敗する ~トマス・ピンチョン『ブリーディング・エッジ』2~

明日、人間ドックなので、若干ナーバスになっている。

人間ドックくらいでナーバスになるなんて、と思われるだろうが、私はただただ臆病なのである。

臆病というか心配性である。

このように心配がなくなったらどんなにいいかと思うほどである。

一方で、過剰な期待に基づく心配もある。急に1億円拾ったらどうしよう、とか。

そういう期待と、病を得たらどうしようと思う気持ちはちょっと似ている。

下の子は、上の子が楽しんでいると正論を言って冷や水を浴びせる時がある。

要するに、自分はルールを守っているのに、なぜ兄はルールを守らないのか、と私に言ってくる。

私も、その場合、上の子にルールを守るように言う。

具体的に言うと、母親が出かけている午前中は、二人ともYoutube見放題の状態となる。

しかし、Youtubeについては、下の子は20分みたら、40分休憩というルールを設けている。勉強などについての努力義務はない。

上の子は、普段、塾などに行って、Youtubeをみる時間は少ない。なので、母親の出かけている時間は、Youtubeを見放題をつい楽しんでしまう。私も、許容しているときもある。

しかし、下の子はそういうときにおいても、「私はYoutube我慢しているのにお兄ちゃんはずっとみられていいな~~」と言う。

雰囲気が悪くなって、上の子には、勉強やれといい、下の子には、お兄ちゃんが勉強やっている間はみるなと言い、なんかグダグダの状態で、皆が嫌な気分になって終わる。

どうすることもできない日常である。

レッジは、90年代に映画の盗撮屋(例の映画館の予告の前に流れる「STOP!映画泥棒」のアレですね)をやっていたところ、その斬新な映像泥棒の手法に眼をつけた「NYUで映画を講じるプロフェッサー」に声をかけられた。

その先生の講義で自身の映像をみせたレッジは、その後映像作家としての仕事をし始める。そんなレッジにマキシーンは、「結婚絡みのトラブル?」と冗談を言う。レッジは、「ある会社のドキュメンタリーを撮ってるんだけど、いつもトラブるんだ・・・」と愚痴る。

簡単な経理の公開情報をみようとしても、それはディープウェブに送られて、簡単には見られないという。それを見るためにエリック・アウトフィールドという天才ハッカーをやとったとも。しかし、それ以外に、自分のクライアントの正体をみたいという。

レッジにドキュメンタリー映像を頼んでおきながら、チャチなお金しかくれないコンピュータ・セキュリティ会社「ハッシュスリンガーズ」の会計状況のデータを見たい、というのがレッジの要求だった。

その会社のCEOはゲイブリエル・アイスという。どうもお坊ちゃんのような雰囲気で相手をけむに巻きつつ、実相はかなりヤバい奴らしい。テック関係でみるようなギーク(おたくっぽいという感じ)さがほとんどないらしい。なので、会計をちょろまかしているだけではなく、もっと何かヤバいことをやっているんじゃないかということを調べてほしいということらしい。

レッジとは、マキシーンが旦那とうまくいってないときにひょんなことから乗ったクルーズ船ディナーの中で知り合った。そのクルーズ船は、高級船舶ではなくコンテナ船を使ったクルーズで、ちょっと訳ありの団体のパーティーなどが一緒に行われていた。

そんな訳あり団体の映像を撮影していたのがレッジ・デスパードだった。興味を惹かれてマキシーンがつけて行ったら、向こうから声をかけてきた。

一緒に、撮影をしていたら、アーウィンというカモ切手の収集家夫妻がいた。妻はグラディスという。80年代風のパワースーツに身を包み、ダイナスティのファンで、名前を一時期クリステルに変えてしまったという。夫と妻、どっちが変わっているのかどうかわからない。

色々な人と出会うが、みな少し変わった癖と思考を持っていた。今回のクルーズ船の目的は、ハイチとドミニカの国境線で、非合法な楽しみにふけることだった。マキシーンも巻き込まれて、それなりに楽しい夜を過ごした。

マキシーンがそこで出会ったのがジョエル・ウィーナーという不動産男。魅力的だがワルで、その男に加担させられたマキシーンは、会計士としての公認を取り消され、モグリの未公認会計士として、社会の吹き溜まりに巣くう連中の作業を引き受けるようになっていった。

でも、まだ公認としての矜持はあるという。

「免状は押し入れにしまっても、魂の壁にはちゃんと貼ってあるんだ」
「どこが不良だよ」
「『バッドな会計士』ってね。TVシリーズにできないかと思って。パイロット版のシナリオ、あるんだけど、読んでみる?

p.33

健康診断で、いつも、悩ましいのが検便である。

だいたい失敗する。

なぜオッサンになると、2回取るのだろう。

1日目と2日目。

心配性なので、前日と当日ちゃんと取れるように、1週間まえくらいから食生活に気を付ける。

一度、間違えて、前日朝にとらずにいて、ヤバい!と思って夜に無理やり出したら、血が検出されたこともある。

それ以来、検便は、何か失敗するんじゃないかと緊張する。

血圧が170を超えるくらい(嘘)。

しかし、やはり、今日も失敗した。

流れ出る液体の量が多く、便器に敷く紙が破れて、ボチョンと音がしたからおかしいなと思ったら、裂けて下に落ち込んでしまっていた。

アッと思って、仕方がないから、昨夜子どもが放置したカップラーメンの割りばしを一本拝借して、サルベージしてとった。なんとも間抜けな姿をさらすことになった。

しかし、水に浸かっちゃいけないのではないかとか、あれやこれやと、不穏な想念はわくが、妻に言ったら、「そんなの持ってかなくてもじゃあ後日・・・と言われて終わり。後日もってったためしがないわよ」とのたまった。

そういうものなのか、と思った。

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