見出し画像

「小説 雨と水玉(仮題)(41)」/美智子さんの近代 ”指輪と両親”

(41)指輪と両親

美智子の両親への報告の話が定まってきたので、二人とも少し落ち着いてきた。
昼食を食べ、食後のコーヒーをゆっくりと飲みながら、
「今日は、クリスマスプレゼントの指輪を買いにいくでしょ?」
「ありがとう。それは楽しみにしてました」
「僕、お店とかよくわからへんけど、
美智子さん、ここがいいとかお気に入りのお店は、ある?」
「わたしもあんまり、、、、阪急とか行ってみて、、、」
「そしたらそうしよ。
どういう指輪がいいの?」
「あの、普段使いさせてほしいんで、
石とかは小さくていいんですけど、可愛いのが」
「うん、そしたら、行ってみる?」
「はい」

「あの、啓一さん、わたし、この辺のものが、、、」
「うん、あの店員さん、この辺のものを彼女に出してもらえます?」
「これと、これをはめてみていいですか?
こっちはこう。どうかな?可愛いでしょ?
次はこっち、どうやろ?こっちもいいみたいやけど、、
色がついてる石は可愛いんやけど、ダイヤの方が長く身に着けられるかも」
「うん、なるほど。長くつけれる方がいいかもね、それにダイヤの方も可愛いよ」
「はい、そうなんです。そしたらこちらでいい?」
「うん、美智子さんが良ければ」
店員がサイズは合うみたいなのでお直しは無いと言った。
「あの、啓一さん、クリスマスプレゼントなんやけど、もうつけさせてもらっていい?
ずっと身につけていたいんで」
「うん、全然、僕はもう。
そしたら店員さん、それでお願いします。
いいのに決まってよかったね」
「ありがとうございます、すごく嬉しい」

早めの夕飯を食べながら、この後のことを二人で相談した。
今晩はばたばたするから明日にも美智子が両親に啓一のことを話してみて、その夜に電話でその様子を聞かせてもらうということにした。そして両親の都合が良ければ来週の土曜日に自宅を訪ねる、啓一は美智子にスーツを着て行ったらよいかと確認した。時間が有れば、啓一へのクリスマスプレゼントの洋服を買いに行くなどを話した。

「なんか、忙しいですね、啓一さん、いつも日帰りやから、一泊できるといいのに。身体は大丈夫?疲れてない?」
「うん、ありがとう、大丈夫。
ただ一泊できるといいのはいいけど。ほら曽根の社宅にいるO君ところに泊めてもらうっていうことも出来るやろうけど、彼も新婚さんやからねえ。」
「それは気を使わないとあかんと思う。
そやからわたしが東京に行くっていうのも。
両親に話したら、東京のお店も見てみたいっていうのもあるし」
「うん、そうやね、来週ご両親に話してみて。
でも僕、ちょっと緊張してきたかもしれない。美智子さんのお父さん、どんな人なの?」
「うん、普通のお父さんやと思うんやけど、、、
わたしには優しい。だから大丈夫やと思う。」
「そう。
もしかしてお母さんがとっても怖いとか?」
「そうなんです」
「えっ!そうなの?ちょっと待って、どんなお母さん?」
「ウソです、ウソ。大丈夫です」
「もう、びっくりやなあ、美智子さん、ちょっとそういうとこあるよね、まったく」
「ふ、ふ、ふ(笑)」
「でもきちっと緊張していくよ、はじめが肝心やから。
なんか気を付けておくことあったら前もって言っといてね」
「ええ、でも普通にしてくれたらいいと思う。大丈夫です」

八時くらいの新大阪発新幹線に乗るつもりで梅田を出た。
新大阪で新幹線ホームに向かいながら、啓一が
「これからもいろいろなことがあると思うんやけど、二人でよく話をしてやっていけば大丈夫だと思う。何かあればとにかく二人で話そう。僕は気が利かないから何でも言ってください、頼みます。」
と言うと、美智子は、繋いでいた手を少し引っ張るようにもう片方の手で啓一の腕を抱えて身体を寄せてきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?