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『老人支配国家日本の危機』(文春新書)エマニュエルトッド著/日本の出生率低減・人口減少について 及び 世界情勢について

『歴史人口学で見た日本』速水融著

日本の出生率低減・人口減少についてたびたび記してきた。日本の歴史人口学の泰斗速水融氏の著作については最近下記で紹介した。

『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』エマニュエルトッド著

もちろんそれは近年日本でも盛んに評論活動している世界的泰斗のフランス人エマニュエルトッド氏の近年の著作から導かれたものだ。
改めて彼の下記の大著については掲載させていただく。

『老人支配国家日本の危機』と『歴史人口学で見た日本』

以上を踏まえて、『老人支配国家日本の危機』を取り上げたい。これは昨2021年11月に出版されたもので、速水融氏著作を読んでからと思い、一昨日12/28に読了したので紹介し、日本の出生率低減・人口減少について論じたい。

わたしが速水融氏の著作で気付いた
1)日本の失われた30年のゼロ経済成長と出生率の関係性
2)家族形態として、日本に存在する三形態、特に中央日本と西南日本の核家族性、多子性
の2点のうち、2)については家族形態のみならず文化性についても、『老人支配国家日本の危機』は同様に取り上げている。

移民の導入方法の提示/『老人支配国家日本の危機』

エマニュエルトッド氏は、さらに移民の制御ある形で導入する重要性について論じている。当初、表題から推してかなりラディカルに移民の導入を論じるかと私は懸念していたのだが、全くそんなことは無く、合理的な移民導入方法を微に入り細に入り整理した形で提示してくれている。
詳細は、一章三節の”「日本人になりたい外国人」は受け入れよ”を参照いただきたいが、出生率向上の強力な取り組みと共に進めよという提言が重要である。
移民を近視眼的経済視点で捉えるのではなく、昨今喧しい多様化ではなく日本への同化を主眼とし、熟練労働者を積極的にまた出身国を集中しないこと(特にChineseに注意)等、我々自身よく考えるべき視点を提供してくれている。
このことについては、やはり真剣に、また左翼に利用され誤った結論に導かれるの十分に気を付けた上で、積極的に議論すべきものと思う。

世界情勢に関する見識、これから

書名として、日本の出生率低減・人口減少に特化しているとの誤解を与えるが、前半弱と終盤が書名主題に関する記事であり、中盤は近々の世界情勢に関するものである。
この世界情勢に関する部分の記述は、また非常に刺激的だった。

トランプ後の情勢に十分繋がる論述であり、英のブレグジット、米のトランプ登場により世界がグローバリズムから反転した流れが歴史の必然との認識を示している。
つまり、もうこの流れはグローバリズムへと戻ることはないとの認識なのである。このことは冷戦終結後グローバリズムに惨敗した日本にとって極めて重要であろう。
確かにバイデン民主党も超党派で対中対応を強く進めている状況、特に先端技術の囲い込みなどの徹底ぶりを日々ニュースで目にしている現状からは世界の潮流は保護貿易の方向に確実に流れていると言えそうである。
我々保守の立場からするとなお油断ができない焦燥をひとまず置き、落ち着いた目を持ち直して、この流れを国益に還元していくとともに、流れを決して変えることなく強める方向への言論や経済活動が求められるものと思う。

しかし、一方でロシア、China情勢は限界戦、超限戦的な工作を含めて、現実の戦争へと進むリスクはかつてなく高まっており、日本の危機は深まるばかりとの感慨は尽きない。

このような情勢を怜悧に捉えながら、
出生率低減・人口減少への対策を一刻はやく打っていくことが今日本に求められていることである。
政府及び議会人、そして在野の有志の活動、考え方に、日本の、いや世界の将来が掛かっていると言って過言でないと思う。



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