「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」(塩野七生著、新潮社)ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロ
ユリウス=クラウディウス朝
さて、「ローマ人の物語」もいよいよ帝政が始まっていくということになります。
カエサルのあとを継いだアウグストゥスによって始まったローマの帝政、その後、義子のティベリウスに継がれます。そして、その弟の孫のカリグラ、そしてカリグラの混乱を収拾するティベリウスの甥のクライディウス、そしてネロと。
ここまでの皇帝は、アウグストゥスの後を受けたその義子ティベリウスを除いて、カエサルの血を何らかの形で付いている者たちです。ティベリウスが名門貴族クライディウス家の出であることから、カエサルのユリウス家と合わせて、ユリウス=クライディウス朝と呼ばれているそうです。
カリグラ、ネロ
この二人の名は、現代でも悪の皇帝としての名を轟かせています。しかし、このⅦ巻を読んでみると、意外にカリグラもネロもさほどひどい皇帝ではなかったとの感じを受けます。その理由もこのⅦ巻で塩野七生さんが明らかにしてくれています。
ティベリウス、クラウディウス
ティベリウスとクラウディウスに至っては、これはむしろ賢帝であるということで塩野さんも語っています。近代に入ってこの二人は様々な研究の結果、再評価すべきとの思潮が育まれてきたということです。
これは、塩野さんの筆によって全く納得できることです。
歴史と言うのは、人間を具体的に見つめるという点で、単純ではなく、一人一人の思いや悩み、弱さと強さがない交ぜになって展開していくからこそ、面白い、ということがこのⅦ巻もより良く感じさせてくれます。
ユダヤ、キリスト教との関り、成り行きの始まり
そして、このⅦ巻では、おそらく今後の「ローマ人の物語」で主旋律となってこようユダヤ、キリスト教徒の関りの始まりが語られます。
ティベリウスが帝位についた紀元十四年の十四年前にキリストが生まれ、ティベリウスの在位中の紀元三十三年にキリストが刑死するわけです。
ネロによるキリスト教弾圧も、キリスト教による世界制覇状態とも言える近現代から理解していたものとは、全く違う様相を呈していることが塩野さんの筆によりわかります。
ユダヤやユダヤ教についても同様の理解が得られます。
第Ⅷ巻以降が楽しみ
ユダヤ、キリスト教に着目すると、ますます今後の「ローマ人の物語」は楽しみとなってきます。
今後も、書評として掲載し続けますのでご覧いただければ幸いです。