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63 1人で抱え込まず、チームで動く職員集団をつくる

先日、各学年の研究推進担当が集まり、来年度の本校の研究テーマを協議する会議に参加しました。私は特別支援部の研究推進員としての参加です。
今年度はICTがメインでしたが、児童の実態や担任の先生方の強い要望から、「特別支援教育」を中心に研究を進めることになりました。

理由は、「支援を要する児童の多さ」です。つまり、担任が多様な特性を持つ児童に対してどのように対応すればよいか苦慮している現状が浮き彫りになったのです。

管理職からは

「特別支援の基礎・基本を職員が学べる研修の機会を設けるべきだ」

と本校職員の特別支援教育の基礎基本の理解・実践力向上を来年度は目指していきたいという方向性が見えてきました。

「じゃあ、どうする?」

結論から申し上げると、2つの実践を考えました。

1:特別支援教育の基礎研修を定期的に行い、理解を深めること

2:チームで動く学年、学校集団を作り上げること

です。


1:特別支援教育の基礎研修を定期的に行い、理解を深める

特別支援教育の基礎基本としてまず押さえたいのは、行動の背景には「感覚・認知」があり、感覚という入り口を通って入ってきた情報をもとに、認知という意味付けがなされ、行動が発生するという一連のメカニズムについてです。
次に、行動の4つの分類である「逃避行動」「要求行動」「注意喚起行動」「自己刺激行動」についての説明と対応方法について説明します。
また、発達障害の種類や特性、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質がもたらす影響、増やすための関わり等、様々な視点から特別支援の基礎基本を伝え、日々の学級に生かしていってほしいと思います。
伝達方法は見出しにも述べた研修の場を設けることですが、その時間を確保することは難しいのが現状です。特別支援教育通信を定期的に発行したり、教材や資料を提供したりしていくのが現実的でしょう。
さらには、先生方に私からクラスの成果・課題・悩み等について話しかけ、雑談の中で特別支援のポイントを話していくこともコーディネーターとして重要な役割になってくるでしょう。

2:チームで動く学年、学校集団を作り上げる

基礎研修で知識は身につくとは思いますが、実際に子ども達との関わりで知識があれば上手くいくかと言えば、そうではありません。
実際のところ、私自身、学級経営で失敗した経験が少なからずあり、知っていることとできることは違うと分かっているつもりです。

さらには、教職員大量退職時代で、どの学校も若手が多い現場となっているはずです。だからこそ、1人で抱え込まずにチームで動く学年集団、学校集団を形成することが、一番の近道ではないかと私は考えます。

実際に、以前全学年60名足らずの学校に勤務していた時、5,6年担任が協力して、教科ごとに教える科目を分ける取組を行っていました。いわゆる教科担任制です。国語、算数、道徳は担任で教えますが、技能教科は得意教科をそれぞれ持ち合って教えており、それが高学年の安定と成長につながっていました。まさに、チームで動く高学年集団となっていました。

現在勤務している学校でも、4年生はそれぞれ技能教科で、得意分野を生かして学級の垣根を越えた教科担任制を導入しており、安定した学年経営ができている印象です。

なぜ、このような取組をすると学級、学年が安定するのか?
それは全体で見る意識が高まるからだと考えます。

従来の小学校のほぼ全ての教科を担任が見るスタイルだと、専科の授業や、担任が病欠や研修等でいない時、クラスが荒れることがしばしば起こります。それは、良くも悪くも担任に依存しているからです。
また、教員の得意を生かすことで、知的で楽しく、価値のある授業を提供できるからです。その教員への尊敬や信頼も向上します。小さなことを言えば、教材を使い回せるので働き方改革にもつながります。

チームで動くとは、学級や学年の垣根を越え、全員で子どもを見る意識を全教職員が持つことです。
そのための手っ取り早い方法が、特定の教科を教科担任制のようにすることなのです。

その成功事例は先に述べた通りです。さらには、特別支援学級担任が積極的に交流学級のクラスへ関わることも大切です。
実際、私は前任校では交流学級の体育、図工をT1で授業していました。
交流学級担任はT2で全体を見たり、職員室で校務分掌の仕事をする時間に充てたりしていました。他にも多くの学年の授業をさせていただき、主にプログラミング教育の実践をしてきました。
授業をすることで、学年の垣根を越えて様々な子どもと関わる機会が増えます。いざという時に指導しやすいメリットもありました。
現在は、自教室を開けることが難しいため、交流学級で授業することが叶わず寂しさを覚えます。機会があれば、させていただきたいと思っています。

全員で見る意識で教職員が関わると、子どもの意識も変わります。

「担任の言うことだけ聞いていればいい」
から、
「先生の話を聞こう」
へと意識変革が起きるのです。

実際に教科担任制をするとなると、低学年では難しく、高学年から実施するのがベターだというのが実感です。学年の担任同士の関係性も大切で、自分のクラスは自分で全てやりたい方も一定数おられます。
その際は、複数クラスで合同授業をしたり、習熟度別指導をしたり、1時間のみ入れ替わって授業したりするなど、工夫次第で様々な学習形態、学習方法を取ることができます。

まとめ:1人で抱え込まず、チームで動く職員集団作り

最も大切なのは、

1人で抱え込まず、チームで動く職員集団作り

だと考えます。
その中で、特性や環境要因から不適応行動を起こす子どもに対して、感覚面、認知面と照らし合わせて表出される行動に対して個別の配慮を行ったり、保護者との連携のもと、通級指導教室、特別支援学級への学びの場の変更を行ったりしていくことが、現実的で実現可能な特別支援教育を推進するために学校が進むべき道なのではないでしょうか。

言うのは簡単ですが、実際にやるのは途方もなく困難な道のりです。
しかし、百戦錬磨のベテランですら、
「特別支援教育を研究していく必要がある。どのように対応していけばいいか分からない」
と訴えるほど、特別支援教育は喫緊の課題となっています。

十数年担任をしてきた自分の実感ですが、

安定しているクラスは、医療や福祉と連携し、個別の支援計画を作成している児童が多い印象を受けます。

もちろん、「言うことを聞かない!勉強ができない!」からとむやみにすぐ医療や福祉につなげようとするのはよくありません。行動のみにフォーカスした浅はかな対応であり、その背景要因を注意深く探ることが大切です。

ただ、落ち着かない学年の特徴として、発達障がいに見られる特性が見られるにもかかわらず、そのままにしているケースがあります。それも1人、2人ではありません。たくさんいるのです。

担任が自分1人でなんとかしようとしていたり、保護者がその実態を十分理解できずに医療・福祉へつながらなかったりした結果、学年全体が落ち着かず、問題行動が頻発したり授業が成り立たなくなったりして、教師も子どもも保護者もつらく悲しい状態になってしまいます。

少しでも、専門としている特別支援教育の知識やスキルを発揮して、1人残さず「楽しかった!成長できた!明日も学校に来たい!」と言える学校になるようにしていければ、こんな私でも、少しは学校へ貢献できる、価値ある教員となれるかなと思っています。

今回の記事は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。


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