ステラおばさんじゃねーよっ‼️61.墓前にて〜納骨〜
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️60.途絶えた線(ライン) は、こちら。
🍪 超・救急車
週末に約束した3人は、八雄市の【しらゆり園】へリムジンで向かった。
それぞれが喪服姿で車内をくつろぐさまには、少し違和感があった。
開眼供養は特に行わない宗派にならい、3人だけで墓碑建立の納骨式を執り行う。
腕に抱えた聖の骨壷は、ずしりと重く感じた。
そしていつも以上に早く、園に到着したような気がした。
事件の渦中に呑まれ、墓碑建立が危ぶまれたあの日…。
もうあの場所には、建立できないかもしれない…とさえ思った。
それが無事再開、竣工したのもあって、軽やかな気持になったのだろう。
園庭の一部を駐車場として使わせてもらい、車から降りた3人は、颯爽とあの丘を目指した。
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真冬真っ只中だが、その日は暖かな陽射しが風の冷たさを、ほんの少し和らげてくれていた。
丘の傾斜には、禿げた芝生の所々に霜柱ができ、それを踏むとぬかるんで、歩きづらかった。
ひかりは、丘に上るまでは運動靴を履き、丘の頂上にある古びたベンチに着くと、底の低いフォーマルな黒靴へ履き替えた。
ポーちゃんは、墓参り一式と聖の大好物だったエクレアの箱を持って、革靴の底を滑らせながらもしっかりと土を踏みしめ、前に進んだ。
カイワレは、聖の骨壷を両腕で抱えながら、慎重に傾斜を上った。
それぞれの歩幅で、丘のてっぺんにある桜の樹を目印に上った。
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聖の要望通り、桜の樹の下には、【河愛家之墓】と刻まれた石塔が見えてきた。
そこへ近づき、地下にある石室の石板を外したカイワレは、骨壷をその中へ静かに入れた。
ポーちゃんとひかりはその間、御数珠を指にからめ手を合せた。
「聖…伯母さん。伯母さんのこれからの家が、ついに完成したよ!見晴らし、最高でしょ?安らかに眠ってね」
カイワレは、やさしい気持で聖に語りかけた。
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この日を迎えるまでの間に、カイワレは地権者として、人骨発見時の様子やそれに触れた経緯を、警察に事情聴取されていた。
しかしひかりの顧問弁護士がカイワレの代理人として、警察に理路整然と事情を伝え、事なきを得た。
弁護士は具体的に、以下の事を伝えた。
聖が亡くなる間際に遺言書で遺産の存在を知り、土地の権利を受け継いだ。そのためそれ以前の事は、無関与である事。
カイワレが人骨の第一発見者で、最初は野生動物か何かの骨かと思い、偶発的に触れてしまった事。
この2点の言い分で、警察はおおかた納得してくれたようだった。