ステラおばさんじゃねーよっ‼️②夢のなかの夢〜火災報知機-1
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ①カイワレは、こちら。
🍪 超・救急車
その夢は、《夢のなかで夢を見ている、夢》だった。
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波も立たぬ湖面に、一粒の雫が落ちた。
そしてその波紋は静かに、眉間に派生した。
朝なのか、昼なのか、夜なのか。
時間の間隔も感覚もまったくわからない。
ただ足先が異様に冷ややかなのは、わかる。
わたしは今、何処にいるのだろうか。
薄ら、紅い温かなものを感じる。
それは、光を凝縮したような円型の点を。
カーテンの隙間からこぼれる光の点!
それは、眉間に流れ落ちた汗を更に温める。
あ、朝日か。
朝日だ、な。
季節外れのエアコンの冷気は体だけを冷やし、熱は、額だけに凝集されていた。
今日は、初出社の日だ。
起きねば。
起きようとすればするほど、体も頭も重たくなる。
ダメだ、起きねば。
起きてコーヒーメーカーに、冷凍保存されたとっておきの粉をセットしないと。
眉間にあった雫が鼻筋からすーっと流れるのと同時に、けたたましい機械音が鼓膜を賑わ(にぎわ)す。
寝室沿いにある、共用廊下の、あの火災報知機か?
その哭き声が不快過ぎて、五感全てを叩き起こす。
ガバっと一気に、体は直角に保たれた。
何事か?
火事…なのか?!
寝惚けたままパジャマ姿で自室の玄関扉を開くと、左耳の鼓膜をつんざくけたたましい音、音、音。
音はあふれ返り、壁越しに感じた音震が、頼んでもいないのに全身を通過していく。
それから両の鼓膜がやられ、気が滅入った。
新しくて、爽やかな朝を一瞬で、【いきなり】ブチ壊すには、充分過ぎる事件であった。