ステラおばさんじゃねーよっ‼️⑭変わらないもの〜聖先生
👆 ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ⑭変わらないもの〜2年ぶりの帰省 は、こちら。
🍪 超・救急車
ふたりは我が家である、児童養護施設へ向かった。
電車とバスを乗りついで、2時間と少しの小旅行だ。
高層ビル群をすり抜け小1時間もすれば、見覚えのある山々の青い稜線がくっきりと見えだす。
終着駅へ近づく車窓からは、天日干しされた稲束(いねたば)の金色、休耕土の深いこげ茶色が、通り過ぎてはあらわれる。
駅からはさらに40分、バスに揺られて山を登っていく。
まるで巨大な緑の要塞に突入していく感覚だ。
「なつかしいね」
カイワレは、ひとり呟くように言った。
「そうだね。あ!今通り過ぎた国道沿いのさ、駄菓子屋ってなくなってた?!見落としたかな〜それともつぶれちゃったのかな?」
ポーちゃんがそんな風に問いかけてくるから、カイワレはなぜか哀しい気持になった。
「うん」
時が過ぎるのは早い。
真剣に真面目に、夢中に生きるほど、時の体感はとても早く感じるものだ。
街もモノも変わる。
そして、人も。
それぞれの人生のなかで、その時に必要な何かを選びとりながら、人は生きる。
だから相手が変わったと感じたり、自身が変わったと感じられてしまうのもお互い様なのだ。
けれど自分にとっての美しかった風景、楽しかった時間、ワクワクした気持、そして健やかな心身は、いつまでも変わって欲しくない。
そんな感傷にふけっていると、通り過ぎゆく景色にさえ刹那の美しさを感じてしまう。
木漏れ日がバスの窓から入ってきて、横に座るポーちゃんの顔をキラキラと浮かび上がらせた。
窓に顔を寄せて、黙って遠くを見つめるポーちゃんは無邪気に見えたが、瞳は少しだけ潤んでいた。
⭐︎
「ただいまー!!!」
ふたりは施設の入口にあるインターホンへ向かって、一斉に大きな声を投げかける。
すると少し遅れて、
「おかえりなさい!!!」
と女性の声が聞こえると、門扉が自動で開いた。
ふたりはそこから足速に歩く。
建屋の玄関先には、手を広げた人の影が佇んでいた。
「たいちゃん、ポーちゃん、お久しぶりねぇ!」
と満面の笑顔で河愛 聖(かわい ひじり)は、ふたりを出迎えた。
「ご無沙汰してます!先生、お元気でしたか?」
カイワレがたずねると聖は、
「この通り元気よ、げ・ん・き♡」
とチャーミングに返答してくる。
「これ、お土産です!」
ポーちゃんがケーキ屋の袋を丁重に、聖へ差し出した。
聖は受け取りながら、
「ありがとう!これはケーキかな〜?じゃあコーヒーを淹れてくるから」
と言い、足早に食堂へと引っ込んでしまった。
以前となんら変わりない聖先生に、ふたりは同時に顔を見合せ、ほほえんだ。
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