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ステラおばさんじゃねーよっ‼️90.島の郵便局〜情報弱者

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️90.島の郵便局〜お礼状 は、こちら。



🍪 超・救急車


10月半ばも過ぎた頃、知波は近所のちいさな郵便局を訪れた。

入口から数メートルしか離れていない郵便窓口前で、「鳥海島の【人魚の岬】で働く人へ手紙を出したい」と局員に告げた。

「お調べしますので、しばらくお待ちください」

と言い残すと、局員はその場を離れた。

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数分後局員は戻ると、投げかけた問いに笑顔で答えた。

「お待たせしました。鳥海島には、【簡易郵便局】しかなくて、郵便局員はいません。その役割は、島唯一の雑貨店【人魚の里】が担っています」

【人魚の里】って、《百貨店》の事ね。

知波は【人魚の里】の住所を教えてもらい、手帳にそれを書き入れた。

加えて局員は、

「鳥海島へのおおまかな到着日は、1週間から10日はみてください。表封筒には必ず赤字で「局留め郵便」と書いてお送りください」

と笑顔でつつがなく説明した。

「ありがとう」と軽く会釈し、知波は郵便局を後にした。

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そう言えば、夏男にはもっと肝心な事を聞きそびれていた。

それは、夏男の苗字である。

知波は散々迷った挙句、《民宿「人魚の岬」夏男 様》と、封筒に記した。

小さな島だもの、きっとこの宛名で届くわよ。それに季(とき)ばあがなんとかしてくれるよね…。

知波はしれっと自分に都合良く考えた。

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さらに数日後、封書を郵便ポストへ投函した直後、知波はある事柄を思い出した。

夏男が現・島長だということを。

んもぅ、《鳥海島 島長》でネット検索すればよかった!

今さらながら、情報弱者の自分にあきれた。

⭐︎

202×年11月1日ーーー。

基本1日2回、午前・午後便で、食料や雑貨、郵便物等の船便が鳥海島へ届く。

港へ届いた荷物は仕分けされ、業者がしかるべき場所へ配送していく。

実際に鳥海島へ郵便物が届くのに、「5日以上7日くらい」時間を要する。

知波はポスト投函後6日め辺りから、見知らぬ番号の着信履歴に敏感になっていた。

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〜♪♪🎶♪♪🎶〜

11月1日夕刻、知波の勤務休憩中にスマホが鳴った。

急いで休憩室の外に出ると、「はい、小鳥遊です」と応答した。

「夏男です。山岸 夏男ですが、知波さんですか?」

「あ。あ〜っ夏男さん?!はい、わたし知波です!!あ〜ぁ、良かったぁ〜!!!手紙が無事届いたか、心配で心配で…」

スマホ越しの夏男に、思わず不安を吐露した。

夏男は言った。

「知波さん、手紙を読ませてもらいました。…今まで悠一朗の事で心配、迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした」

そう言いながら深々とお辞儀する夏男の姿が思い浮かんだ。

知波は、

「あら、やだぁ!謝っていただくつもりなんてありませんよ。こちらこそ色々申し訳ございません。でもこうしてお電話いただけて、本当に良かったです。これって、夏男さんのスマホですか?」

そう訊ねると夏男は、

「はい、そうです。チャットメールもやっていますよ。アドレス、教えてもらえませんか?」

想定外の返答に知波は一瞬面喰らったが、

「はい。少しお待ちくださいね」

と伝えると、自身のアドレスが記された手帳を探しに更衣室へ向かった。

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