「目標達成に必要なオリジナルフローを考え抜く」天職に巡り合ったKさんの好きな仕事の見つけ方
誰しも人生で失敗し、妥協した経験があるのではないでしょうか。私の場合、大学受験が初めての失敗でした。滑り止めで受かった大学に進学したとき、自らの人生に妥協することを覚えたのです。「みんな失敗と妥協を繰り返して生きているのだろう」。そう思ったものの、ある人物が頭に浮かびました。高校時代にお世話になった先輩、Kさんです。
Kさんは学生時代からサークルなどで好きなことに打ち込み、社会人になってからも好きなことを仕事にしている人です。「好きなことを仕事にしている人は、失敗や妥協する経験がなかったのだろうか」「好きな仕事がわからないと悩む人も多いなか、どうやって好きなことを見つけたのだろう」。
伺ってみると最初の就活は思い通りの結果ではなかったものの、私と違って妥協はしていませんでした。そして好きなことを見つけた方法は、思っていたよりシンプルだったのです。どのように好きなことを仕事にしたのか、詳しく伺いました。
クライアントの望む空間をチームで具現化する
——「空間デザインのプロデューサー兼ディレクター」とは具体的にどういったお仕事をされているのでしょうか。
エンターテイメント空間にアニメやゲームなどのコンテンツ・キャラクターを実装し、非日常感のある体験づくりに携わっています。私はクライアントに寄り添い、要望を具現化できるようチームづくりを行う立場です。プランナー・デザイナー・テクニカルディレクター・制作統括担当者などと一緒にプロジェクトを進めています。
これまでで一番印象に残っている仕事は、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の会場内施設のプロデュースを担当したことですね。
空間デザインを志した理由
——今の仕事を選んだ理由を教えていただけますか?
もともと建築に興味があり、大学時代は建築デザインの専門学校にも通っていました。「空間デザイン」という仕事はバンド仲間やアルバイト先の同期が教えてくれたのですが、調べてみて「自分のやりたいことはこれだ」と直感しました。
——そのように思い至ったのはなぜなのでしょうか?
以前アルバイトしていた飲食店が潰れてしまったことがあるのですが、営業日も残りわずかというときに、社員もアルバイトも切ない気持ちを抱えながら働いたことがありました。そのとき「あとでみんなの脳裏に蘇るのは、建築自体よりもそれぞれの人生や想い・過ごした時間そのものが息づいた”空間”なんだろうな」と感じていたんです。そのことを思い返して、空間デザインを志すようになりました。
就職浪人を経て志望企業に内定
——就活当時はどんな企業の選考を受けたのでしょうか?
「やりたいことが100%実現できるのは空間デザインだ」と確信していたので、他業種の選考はほとんど受けませんでした。また業界の中でも自分の理想とする企業が2社あったので、「どちらかにしか入社したくない」とも考えていましたね。でも、残念なことに2社とも採用選考で落ちてしまったんです。
——さまざまな業界の選考を受ける学生も多いと思いますが、ピンポイントで就活を進めていたんですね。選考に落ちてから他社への就活を再度スタートさせたのでしょうか?
いえ、「好きなことしかやりたくない」という気持ちが強かったので、他社の選考を受ける気持ちはまったく起きませんでした。かわりに、頭の中には「大学留年か就職浪人か」という2つの選択肢がありました。
——なぜ大学留年が選択肢に入ったのでしょうか?
当時は内定先が決まらなかった場合、「新卒」という強みをなくさないために、わざと卒業単位を落として留年する文化があったんです。そうすれば翌年も「新卒」として就活に臨めますからね。周囲にもそういった理由で留年する人はいたんですけど、そのためだけに高い学費を払うのはバカバカしいなと思って。
そこで選考に落ちたあとすぐ、志望した2社の人事担当の方にそれぞれ連絡しました。ダメ元で「大学は卒業するのですが、来年もう一度採用試験を受けるので、新卒枠で選考に進ませてもらえませんか?」とお願いしました。すると「いいですよ」と承諾していただけたので、大学を卒業して就職浪人することにしたんです。
——人事担当者に直談判したんですか!?学生とは思えない行動力です。
今思えば、口約束を信じるなんて危機管理意識が低いなと思います(笑)でもその結果、翌年は第二志望の企業に内定することができました。ただ入社後も「第一志望の企業(現職の会社)で仕事がしたい」という気持ちが消えず、5年後に念願叶って転職することができました。
アルバイトで「やりたい仕事」を見極める
——学生時代にやりたいことが見つかっている人は少ないと思うのですが、Kさんはどうしてやりたい仕事がわかっていたのだと思いますか?
好きなこと・興味のあることに関する経験を重ねながら、「これは本当にやりたいことなのか」と自分の気持ちを確かめていたからだと思います。
学生生活を通して建築に興味を持っていた私ですが、当時はほかに写真や調理も好きでした。そこで、アルバイトで建設現場の荷物運びをしたり、ブライダルフォトを撮影したり、飲食店での調理も経験しました。調理のアルバイトは4年間続け、最終的には調理師免許も取得したくらいです。
でも空間デザインの世界を知り、閉店してしまった飲食店での経験を経て、「空間デザインこそが一番やりたいことだ」と気づくことができました。
好きなことが見つからないなら「興味」を探る
——学生時代から現在に至るまで「好きなこと・やりたいこと」を人生の主軸にして歩まれていらっしゃいますが、一方で「好きなこと・やりたいことが見つからない」と悩む人も多いと思います。そういった人へ何かアドバイスがあれば教えてください。
好きなことは見つからないけど、「興味のあることがひとつもない」という人はいないと思うんですよね。仮に今は興味のあることが全くなかったとしても、過去には何かしら惹かれるものがあったはずです。その惹かれた分野にまずは手をつけてみるといいんじゃないかなと思います。
学生時代にバスケが好きだったのなら関連した仕事をしてみればいいし、バンドが好きなら音楽で生活していけばいい。「好きなこと」を難しく捉え過ぎているのかもしれないですね。
——世間では「好きなことを仕事にしない方がいい」と言う人もいますが、Kさん自身はどのように感じていらっしゃいますか?
自分の時間の多くを仕事に割くことになるので、興味の薄いことは仕事にしたくないと私は思っています。なので、「好きなことを仕事にした方がいい」と思っている派です(笑)好きなことであれば自分の情熱をそのまま注ぎ込むことができますし、周辺分野のものごとについても興味が持てます。
「空間デザイン」は幅広い見地に立つことを求められる職業なので、まさにこの仕事は天職だなと感じています。
「建築・空間デザイン界の鈴木敏夫になる」
——Kさんの今後の目標を教えてください。
「建築・空間デザイン界の鈴木敏夫になりたい」とずっと思ってるんです。鈴木敏夫さんはアニメ雑誌のパイオニアである『アニメージュ』にはじまり、主にジブリ作品のプロデュースを通して宮﨑駿監督の名を世に知らしめましたよね。同じように、チームのさまざまなクリエイター個人を世間に広められるようにしたいです。
日本の建築業界にはブランド力を持っている人が少ないんですよ。たとえば有名な建築家というと、安藤忠雄と隈研吾くらいしか思い当たらない人が大半なのではないでしょうか?私はその後に続くクリエイターを、自分のチームから輩出するという野望を叶えたいです。
理想はクライアントから「あのクリエイターに作ってもらいたい」「あのクリエイター面白いよね」と声がかかり、それが社会の認知としても浸透している状態ですね。
——Kさんの次なるプロデュース案件を教えてください。
直近だと2025年に開催予定の「大阪・関西万博」が勝負所だと思っています。コロナ禍ということもあり、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」で日本がフルスイングできなかった分、社会にとっても会社にとっても大きな花火にしたいと思っています。
——Kさん、お忙しいところ貴重なお話をどうもありがとうございました!
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