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【エッセイ】エンパス!現実主義の母と私と幽霊と 11. 祟りは手に負えません

 私からすれば仏壇に手を合わせるのに、お墓参りにだって行くのに、何故幽霊とかの話には眉をひそめるのか全くもって意味が分からない。

 現実主義の母は幽霊はもちろん、占いやその他の不思議系の話も一切信じようとしなかった。
 思えば、親戚たちもその手の話題はあまりしていなかったように思う。そういう信じない家系だったのだろうか。……いや、母の実家はお稲荷様を祀っていたようだし、そんな事はないと思いたいのだが……。

 しかし突如として親戚中を巻き込んだある不幸の連鎖が始まって、私はとてももどかしい思いをする事になる。

 それは祟りと疑わざる得ない霊障だった。

 不幸は祖父母の家の長男が病死した所から始まった。遡ればもっと前からあったのだろうが、分かりやすいきっかけがそれだった。
 そこから死の連鎖が始まって、約二年ごとに必ず誰かが死んでしまうという奇妙な事態に発展する。お爺ちゃんお婆ちゃんと続いて祖父母の家が全滅すると、今度は親戚中へとその連鎖は広がった。

 死因のほとんどが病死だった。だがおかしな事に男ばかりが命を落とす……。

 そっち系の勘が鋭い人ならもうお気付きだろうが、子孫繁栄を潰すが如く、この徹底的にやる感じ……。これは狐しかないだろう。


 前述の通り祖父母の家はお稲荷様を祀っていた様だし氏神様もお稲荷様だ。
 なにより私がそう確信したのは祖父母の家の近くにお稲荷様を祀っていた社があったのだ。
 聞けば昔は祖父母の家が管理していたそうだが、それをいつからか他の家が管理するようになったという。何故管理を放棄したのかは知らないが、それが起因となっているのは間違いない。他の家が管理といっても実際その家が掃除や何かをする訳じゃなく、結局は放置される事となったのだから。

 二年毎に男ばかりが立て続けに死ぬという異常事態が起こっているにも関わらず、母や親戚は皆頑なに霊とか祟りは否定した。そんな話をしようものならぶっ飛ばされる勢いだ。

 現に私だけがいち早く祟りに気付いたので居ても立っても居られなくなり、遠回しにお祓いをした方がいいのでは? とチラッと言ってみたのだが、またもや母に「なにバカ語ってんだ!くだらない!」とすごい剣幕で怒られた。

 それでもあの時の私は気が急って、誰かが死ぬ現状をとても黙って見ていられなくて、こうなったら私一人で何とかしようとコッソリ密かに動いていた。

 近くのお寺さんに相談したり、一人で出来る簡単な除霊を試したり、ネットで調べて力のある京都のお坊様に相談したり……。

 ちなみにお坊様の霊視によると、あれは祟りだろうと私の意見と一致した。ただ、さすがお坊様にはもっとよく視えたらしく、他の複合的な要因のせいで余計に事が大きくなってしまっているという事だった。
 お坊様には本格的な除霊が必要な事と、最低でも二人がかりで除霊に当たらなければいけない、それでもこれを鎮められるかどうかは分からないと難色を示された。そして放っておくのも一つの手だと……。

 放っておくだなんてとんでもないと、その時は思った。だが、すぐにお坊様が難色を示したその言葉の意味を知る事になる……。

 それからすぐに、私は生まれて初めて テレパシーというものを受け取った。

 実に不思議な体験だった。脳内に直接言葉が届けられたのだ。耳では聞こえないメッセージ。けしてそれは人間のものでも、ましてやその辺にいる幽霊のものでもない。声なのに声じゃない。感覚自体がまるで違う、別次元の波動を放つ存在からのものだった。

 肝心のそのメッセージだが、私の行動に対する注意や警告みたいな内容だった。
 要は、今立ち向かおうとしている相手はあなたの手に負える相手ではないというもので、もし何かしようものなら大変な事になると、予知の映像まで見せられたのだ。

 全容としてはこうだった。

『動くべきじゃない。今立ち向かおうとしている相手はあなたの手に負える相手ではない。どう動こうと敵わない。あなたが何かしようとすれば全ての災いがあなたに降りかかるだろう。あなたに牙を向けるだろう。全ては因果。学び。皆がこなすべき課題なのであってあなたがそれを邪魔すべきでない。手を出すべきではない』

 見せられた予知の映像は、もし私がこのまま除霊だ何だで動いた場合のものだろう。泣き喚く親戚の叔母さんたちに私が首元掴まれて責められていて、酷い言葉で罵られ、そして死ぬほど憎まれていた。
 どうしてあのような状況にまでなってしまうのかはよく分からないが、恐怖も胸の痛みも感じる実にリアルなものだった。

 きっとあのまま突っ走っていたなら私はあの予知の映像通りになっていたのだろう。それを止めさせたのがあのテレパシーであり、賛否両論あるだろうが、その後、結局私は何もしなかった。いや、出来なくなったのだ。
 恐れをなした訳ではけしてない。言い聞かせられるように、諭されるように、魂に自然とストップがかけられたのだ。

 それでも、もどかしい気持ちはずっとなくならなかった。分かっているのに何も出来ない、しばらくは罪悪感に苛まれた。

 結局、祖父母の家が完全に取り壊され、更地になるまで死の連鎖は続いた。実に約15年、犠牲者は祖父母の代前を合わせると14人以上にのぼる……。


 
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