見出し画像

メキシコTemazcal旅 導入編

サウナ比較文化学旅シリーズ第3弾では、2024年1月の現地フィールドワークをもとに、中米のメキシコ合衆国および近隣国でプレヒスパニック時代(スペイン侵略期以前)から原住民が受け継いできた蒸気浴文化Temazcal(テマスカル)の、知られざる歴史と世界観に迫ります。

日本で手に入りうる情報だけでは謎の多いテマスカルは、現地でみずから体験して、その歴史と今日の姿を確かめなければ…と昔から強く憧れ続けていた入浴文化。いっぽう治安など不安な面も多く、一人でメキシコに乗り込むことをずっと躊躇していました。

ところが昨年、私に匹敵するサウナ&民間信仰マニアの伴侶と縁あって入籍しまして、トントン拍子でテマスカルの国メキシコがハネムーン先に可決され、ついに長年の夢が叶ったのです!

どこを旅していても、メキシコと言えばサボテン…のイメージに見事に応えてくれる国だった

初回はいつも通り導入編として、メキシコの基本情報や、旅人目線での率直な感想・推しポイントをまとめます。


ハワイと同緯度の南国、気候は標高が左右する

何を隠そう、私にとってはアメリカ大陸へ初上陸となる西廻り旅でした!
メキシコには全4つの異なる時差エリアがあるのですが、首都メキシコシティをはじめ大半は日本マイナス15時間、フィンランドからだとマイナス8時間(例えばカンクンの位置する州はそこから1時間縮まる)。

フィンランドからは、トルコ航空(イスタンブール経由)でトータル18時間くらいかかりました。日本からはアエロメヒコ航空の直行便があり、成田からメキシコシティまで13時間弱だそう。夫は羽田からJALを利用しアメリカ(往:LA / 復:ダラス)経由で渡航していました(お察しの通り、国際遠距離夫婦は新婚旅行も現地集合・現地解散です)。

エクアドルより上なので、国土は北半球に収まっています。

アメリカの巨大さの直下では規模感がぼやけますが、メキシコも実はかなり大きな国で、国土面積は日本の5倍以上。人口は日本とほぼ同数の1億2600万人強で、うち870万人くらいが首都メキシコシティに暮らしているそうです。

地図を見ての通り、すべての国土が北半球内。中央部にあるメキシコシティの緯度がちょうどホノルルと同じで、東はカリブ海に面しているので、常夏のthe南国なのだろうというイメージを持っていましたが、実際はちょっと違いました…。

例えば、ビーチリゾートの名門カンクンなどがあるユカタン半島東部は、まさにイメージ通りのブルーオーシャンとジャングルに囲まれた、高温多湿な熱帯気候。私たちが訪れた1月も、日中気温は30度を超えていて、常に灼熱の太陽がじりじりと背中を照りつけていました。

カリブ海のビーチリゾートは、あまりにもすべてのレイアウトがイメージ通りすぎた!

いっぽう首都メキシコシティあたりは、標高2000mを超える高地ということもあり、かなり昼夜の寒暖差を感じました。夜は長袖が必要なくらいに肌寒い。とはいえ、お昼間は十分半袖で過ごせたので、太陽もろくに昇らない冷凍庫世界の国から来た身には、同じ北半球の国とは信じられないくらい日々うららかで過ごしやすかった…!せっせと積極的に日差しを浴びて、北国暮らしでは不足しがちなビタミンDの合成に勤しみました。

メキシコシティ国際空港への着陸間際に見えていた、高山の盆地に広がる街並み。
東京並みの広さ&密集度!!

治安に怯えながら入国したけど…

メキシコと聞くと、とにもかくにも「治安が悪い」というイメージが先行します。公共交通機関ではスリ被害で済めば御の字、高速バスやレンタカーはジャックされてもいい覚悟を…などと、旅の先達たちにトンデモエピソードを浴びせられてきたので、(いわゆる安全圏以外の国々を)旅慣れた私たちもさすがに最初は身構えていました。

けれど実際に悪名高いメキシコシティから旅を始めたところ、直感的にはどうもそこまでの不穏さは感じられない。むしろ、そのごトータル2週間かけて大都市から地方の無名の村まで旅して回っての率直な感想は、「なんて旅しやすい国だったんだろう」という極めてポジティブなものでした。

最初は利用を躊躇していた地下鉄や市バス(ドア開きっぱなしw)も、
格安で使い勝手が良いので、大丈夫とわかってからは普通に乗り回していました!

首都の地下鉄でもオンボロ市内バスでも、時間帯を選べばぎゅうぎゅうに混み合うなんてこともなく、危険エリアの立ち入りや白昼以外の移動は避ける&常にスリの目を気にして荷物管理する…という当たり前の危機管理さえ徹底していれば、不安を感じる雰囲気は特にありませんでした。むしろ地下鉄やバスでは、私のような女性旅行者を見ると、男女問わず「ここに座っときなよ」と席を譲ってくれるのです…!

正直、欧州の悪名高い国々での移動時のほうが、よっぽどもっと気を張っているよなあ…と思います。

都市間を移動する高速バスも、ADOという大手会社のバスはフィンランドの高速バスに匹敵する快適さだったし、時刻表がほぼ存在しない低ランクバスでも、気長に待つ忍耐と時間さえあれば、いつかはちゃんと迎えに来てくれるし笑、乗り心地はいたって普通です。

地方の街や村では人力三輪車もよく走っていて、地元の人の移動の足となっていた
結局、公共交通機関に加えて、高速バス、レンタカー、レンタサイクルと、
考えうる民間交通手段はほぼコンプリートした!

タクシーに関してはUberやDidiが浸透しているので、活用すればぼったくりや酷いドライバーに遭遇することもないですが、配車が難しいエリアでパッと捕まえたタクシーでも、事前にちゃんと価格交渉に応じてくれて、特に不快な思いをすることはありませんでした(ただしリゾート地は定額制ながら超強気価格です)。

市場の売り子さんたちの呼び込みは威勢と活気に溢れているけど、
しつこさや押し売りの気は一切ない

それから、治安不安定国にはつきもののの、物乞い、しつこい客引き、旅行者を選んで声かけてくるいかにも怪しい人に一切出合わなかった。面倒だなあと目を細めたのは、空港でのタクシー運転手のキャッチくらいでしょうか。とにかく、めざとく声をかけてくる人が全然いないのが逆に不思議だったくらいです。

さらには、欧米諸国では避けて通れないアジア人差別的な言動もまったく浴びせられなかった。旅行中に日本人やアジア人旅行客に全然出会わなかったし、そもそもメキシコ人も黒髪で顔つきもややアジア人に親しいので、私たちの容姿を見て侮蔑したりカモにしようという発想自体がないのではと感じていました。観光地でときどき出会うアメリカ人のほうが、この地ではよっぽど異邦人感が出ているではないか…。

どこへ行っても野良犬・野良猫天国なわりに、道路は意外とキレイ

あとこれも不思議だったのが、どこの街や村でも野良犬や野良猫にこれでもかと出会うのに、路上がさほど汚くないのです。去年キューバにしばらく滞在していた夫いわく、あっちでは犬の糞を踏まないように歩くのにも一苦労だったそうですが…。ユカタン半島の旅の間は、野生のイグアナたちがのんびり日向ぼっこしている光景も当たり前に見られて、爬虫類好きの私を常にときめかせてくれました!

こんな感じで、実際に街歩きをしていたら良い意味で裏切られ続け、前評判に対して拍子抜けしっぱなしだった…というのが、私たちの素直な印象です。本当に終始好印象しかない素敵な国でした。もちろん、運が良かっただけといえばそうかもしれませんが、半月も臆さず精力的に動き続けた末の総評ですし、いち経験談として参考にしていただければ。

まったく飽きる気配のなかったメキシコ料理

他の料理に浮気することなく、毎日1食は必ず屋台やローカル食堂でタコスを食べていた

これも個人談に過ぎませんが、幸せなことにメキシコ料理がとにかく口に合っていたようなのです。2人して毎日食べていても飽きが来る気配もなく、お腹や体調を壊すこともなく、それどころか旅先としては異例の体調の良さが続いていました。野菜たっぷりで、とうもろこし粉と豆が主食だから、自然とグルテンフリー食が続いていたからかもしれません。

メキシコシティのホテルそばで深夜営業していたタコス屋台。肉を挟んだトルティーヤだけが
手渡されて、サルサ数種類やワカモレ(アボカド)やライムはお好みでトッピングし放題!

とりわけ、タコス深夜屋台の活気と豪快さ(とリーズナブルさ)には、すっかり虜に!屋台は明け方までずっとやってるので、時差ボケで夕食すっとばしてベッドに倒れてしまってた旅の序盤は、朝4時台からモーニングタコスに繰り出していました(笑)
あちこちで食べていると、具や皮の調理法にも地域差があるのがわかってきましたが、総括としては、やっぱり首都の屋台で食べられるタコスが一番美味しかったな〜

最終夜に写真を見返しながら数えたら、なんと旅の間に2人で81タコス食していた!私はさらに帰国後もロスが酷く、今も数日おきにアボカド&トマト&パクチー&ライムを買いに走って、フィンランドの自宅にて本場のタコス再現に勤しんでいます。

青とうもろこし生地を使った、青灰色のトルティーヤ。サルサも具材も野菜たっぷりで嬉しい
バナナの葉で肉やとうもろこし粉の生地を蒸した、食感の不思議な料理
チーズたっぷりサボテンスープは、ザーサイみたいな味がした
オアハカやタバスコはカカオの名産地。
フランスやベルギーの名だたるチョコブランドが地元農園を囲い込んでいるのだとか

タコス以外にも、試してみないことには味の想像がつかないローカルメニューにもいろいろ挑戦しましたが、総じて私の舌はOKを出し続けていました。和食至上主義の自分的には、これはもう稀に見る相性の良さ。お酒も度数に関わらず飲みやすいものばかりで、飛行1時間程度の国内線で無料のテキーラやラム酒が振る舞われていたのは、さすがに驚いた!

スペイン語を多少身につけておくほうが、断然ラク

今回の移動経路。メキシコシティ周辺を巡った後にオアハカ→メリダと順に国内線で移動し、
後半はバスやレンタカーなど乗り継ぎ、ユカタン半島を徐々に東へ移動してカリブ海を目指した

メキシコの公用語はスペイン語。街なかでは、観光地の窓口以外では英語はほとんど通じませんでした。一応数ヶ月前から付け焼き刃でスペイン語を勉強していき、多少は役に立ちましたが、複雑なコミュニケーションはスマホの翻訳ソフトを駆使しながらどうにかするのが無難。現地情報が鍵になるテマスカルのフィールドワークに関しては、現地のコーディネーターさんに事前交渉や現場通訳を依頼しました。やはりプロにお願いすると、得られる情報量が桁違いなので、ありがたかったです(翻って、フィンランドでの自分の仕事意義も実感できました笑)。

そんなわけで、今回ほとんど他力と文明の利器に頼りっぱなしではありましたが、数字、基本挨拶や表現、たびたび使う一般名詞くらいはある程度事前に覚えていったほうが断然楽だし、行く先々で相手を困らせずに済むのでオススメです。特に、あらゆるシーンでぱっと聞き取ったり口にできて助かったのは数字ですね。

ただしそもそも今回の旅は、ナワトル語やマヤ語といった
原住民族の言語こそが鍵となるシーンも多かった

次回予告。

本編の初回記事では、正直どこから手を付け捉えてよいやらわからない、壮大な世界観と歴史を持ったテマスカル文化の解像度を上げるために、まずはその語源や基本となる利用目的、文化を継承している民族の今と昔の姿を押さえていきます。保養やリラックス目的ではない入浴文化に切り込むのは初めてのことで、書きまとめる前からすごくドキドキしています…!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?