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リトアニアPirtis旅 導入編

予告したとおり、【あやなの比較文化学】シリーズ初回はまず、去る2020年7月27日〜8月2日にフィールドワークに訪れた、バルト三国・南西端の小国リトアニアに息づくサウナ文化 Pirtis(ピルティス)についての、さまざまな見聞や体験の成果をご報告していきたいと思います。今回はエッセイの本題に入る前の導入編として、リトアニアという国のいろはや滞在情報についてざっとまとめました。旅のイメージや計画にお役立てくださいね。

リトアニア共和国ってどんな国?

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リトアニアと聞いて、果たしてどのくらいの日本人が国の位置を正確に思い描いたり、何かしらのキーワードや著名人などを思い浮かべることができるでしょうか。

正直に言うと、上の地図を見ての通り比較的〈ご近所〉に住んでいるわたしにとってさえも、バルト三国のなかでは一番縁遠くてイメージも薄く、恥ずかしながら長年モヤがかかったままの国でした。唯一、ユダヤ難民にビザを発給し続けた日本人外交官の杉原千畝さんの滞在国、というエピソードが思い当たるくらいでしょうか。それこそ、サウナ事業に従事し始めてから国名や評判を聞く機会がにわかに増えたので、それで初めて気にかけるようになった国家です。

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面積は6.5 万平方キロでちょうど四国と九州を合わせたくらい。人口は約280万人(大阪市の総人口に近似、フィンランド国内のちょうど半分)。歴史上何度も首都が移ろっていますが、現在の首都は、ベラルーシ国境にもほど近い南東部の街ヴィルニュス(Vilnius)です。時差はフィンランドとも同じ、日本マイナス7時間(夏季は6時間)のゾーン内。

リトアニアを含むバルト三国はみな旧ソ連への編入国でしたが、ソ連崩壊後は速やかにヨーロッパ諸国へと歩み寄り、2004年にEU・シェンゲン協定・NATOへの加盟を果しています。通貨も2015年以降はユーロが使われていますが、ユーロ採択国の中ではまだかなり物価が安いほう。特に交通費と宿泊費がべらぼうにリーズナブル。(…と、少なくともフィンランド在住者としては感嘆せざるを得ない!)

※ところで、ここで予め主張しておくなら、(呼び名は違えど)サウナ浴文化を醸してきた世界的な歴史舞台はやはり、バルト海を取り囲む国々…すなわちフィンランド(東北欧)・バルト諸国・ロシア。そして、そのそれぞれの国特有のサウナ史を紐解く際にまず必ず押さえておくべきは、周辺国、とりわけロシア(帝国/ソ連)への併合時代の有無やタイミングです。どの国においても、その史実がやがて何かしらサウナ文化変容のターニングポイントを生むのです。リトアニアもまた、1795-1918年まで国土の大部分がロシア帝国の支配下に置かれ、さらに1940-1990年までリトアニア・ソビエト社会主義共和国としてソ連の同化・融合政策が強いられていた…という事実を、ぜひ次回以降も頭の片隅に残しておいてください!

街に降り立った印象

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首都ヴィルニュスには、要塞都市だった中世の街並みがよく保存されていて、立派な城壁に囲まれた旧市街一帯が趣深い歴史地区として世界遺産登録されています。

首都が街ぐるみで世界遺産なのは、かつてハンザ同盟で栄えたエストニア・ラトビアとも共通する特徴。ですがとくにヴィルニュスは、いかにも観光客用というお店やレストランだけでなく、あくまで一般市民の住居・生活空間としても旧市街が機能しているようす。憩いの場となる緑地や公園も多く、外国人観光客をほとんど見かけない今夏でも、古き良き街角を地元の人が行き交っています。歴史の重みを背負った街並みとは対照的に、さほど気取らない素朴で軽やかな雰囲気が街中に流れているのが好印象でした。

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あとは、他のバルト諸国や北欧がルーテル派のキリスト教を国教としているのに対して、唯一カトリックを国教に定める国なので、教会建築の荘厳さや装飾が圧倒的!そこが一番、ほかの北欧・バルト諸国との街並みの印象の違いを強調していた気がします。(ちなみに、教会建築からこれみよがしな華美な装飾を排除し、シンプルに慎ましく聖書の世界へ立ち返れ…と説くのが北欧諸国の採択するルーテル派。この思想こそが北欧のシンプル思想の源流なっているのでは?といつも密かに思っている)

旅人を困らせないモバイル先進国

日本では馴染みがないかもしれませんが、バルト三国屈指のIT大国として世界的に名を馳せるエストニアに本拠を置き、まさにエストニア版Uberと称されるサービスアプリ「Bolt」が、ここリトアニア各所でもすっかり浸透していました。タクシー配車も乗り捨て電動キックバイクもフードデリバリーも、なんだってBoltのアプリからサクっと低料金で調達可能。今回市街から辺鄙な場所へと移動することが多かったので実際に何度か車を配車しましたが、中心街ならすぐ迎えに来てくれるし、15分乗ってもフィンランドのタクシーの初乗り運賃にも満たないリーズナブルさ(しかも明瞭な事前決済)なので、利用価値は抜群でした。

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そしてもうひとつ、チケット購入システムはまだ首都のヴィルニュスに限られますが、TrafiというMaaSシステムも主要都市を網羅しているので、DLしておけば移動経路調べのストレスがぐっと軽減されます。土地勘がなくとも行き先までの手段候補や最新交通事情をさっと教えてくれて、経路が決まればそのままバスチケットも割安で買えます。(むしろ2020年7月現在、コロナの影響でバス車内でドライバーからのチケット購入は全面禁止になっており、車内ではまさにTrafiをDLして買うよう指示されていました。)

一定時間市バスなど乗り換え放題のシングルチケットがアプリ経由で0,69ユーロ〜(100円未満)。フィン価格に慣れていると、あまりに安すぎて身震いがするわ!!

そのほか、街なかではほぼあらゆるお店やサービスでカード・モバイル決済可能で、わたし自身も滞在中に現金を使ったのは、サウナ師へのサービス料を手渡したときくらいでした。携帯のSIMについては、わたしの場合フィンランドの携帯がEU圏内ではそのまま使い放題なので購入情報がありませんが、電波自体は田舎地方でも安定していたし、飲食店では無料Wifiが使えるところがほとんどでした。

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このようにテクノロジー活用面で不便はまったくないし、対面コミュニケーションにおいても、都市部なら若い世代を中心に十分英語が通じます。看板案内は現地語表記のみの場合も多いですが、ラテン文字表記の言語なので、地名などはとりあえず発音すれば音声認識が可能。総じて、旅人が路頭に迷うことなく観光や移動を楽しめる快適な国だと感じました。

次回予告。

というわけで次の記事から、皆さんを未知なるリトアニアンPirtis文化の世界へとご案内します。初回は、今回のわたしの旅をご厚意でコーディネートしてくださった、プロサウナ師であり言語・歴史・象徴学研究者の素敵な女性との出会いについて。そして彼女からまず最初にレクチャーいただいた、語源学の観点からひもとくリトアニアや世界のサウナ文化のルーツについて書きたいなと思っています。どうぞお楽しみに!





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フィンランド在住の自営業者。Suomiのおかんというふざけた屋号を掲げ、メディアコーディネーター、通翻訳者、文筆家、フィン語講師として快活に仕事し遊んでいます。2018年に著書『公衆サウナの国フィンランド』を出版、いつの間にやら「サウナ文化研究家」としてのお仕事依頼がメインに。
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