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2020年はオーク樽の当たり年

SUNSET CELLARShatone(はとね)fah(ファー)です。米カリフォルニア州でワインを生産しています。今回は、ちょっとマニアックな樽の話をします。
といいますのも、2020年はSUNSET CELLARSにとって、樽の当たり年でした。

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オーク材の話

オーク樽は単なるワインを保管する容器ではありません。ワインを熟成していく際に、樽が大きな働きかけをします。オーク樽の木目や栓の隙間を通り、微量の酸素がまるで呼吸をしているかのように継続的にワインへ供給されることで絹のような質感を出し、渋みを抑える効果があります。

ワイン用の樽にはアメリカ産、フランス産、ハンガリー産など様々なタイプがありますが、SUNSET CELLARSではニュートラルフレンチオーク樽(だいたい4年ほど使い続けて、オーク特有の香り・風味が残っていない状態のもの)のみを使います。これはフレンチオークのきめ細かな木目が優しくゆっくりとした熟成を助長し、そして葡萄そのものの味を引き立てるためです。フランス産オーク樽と言ってもすべての樽が同じというわけではありません。作り手や原産の森、乾燥技術、形、そして焼き加減などによって大きく性質が異なります。

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ワイン樽として使われるフレンチオークは、代表的に2種類あります。ヨーロッパ全土で見つけることのできるのがイングリッシュオーク(クエルクス・ロブール種) 、セシルオーク(クエルクス・ベトラエア種) です。セシルオークの方が、イングリッシュオークと比較して、風味成分を豊かに含み、木目が細かく、レアなものとされています。Alliers、 Vosges、 Tronçaisなどの森がセシルオークの採れる有名な森で、このセシルオークで作られる樽は非常に高い評価を受けています。

樽、買いました

2020年私達のワイナリーでもコロナ禍や山火事に見舞われましたが、クラブメンバーの皆様へより多くのワインをお届けするため増産に踏み切り、そのおかげで新しい樽を購入することになりました。TaransaudSylvainはワインメーカーのダグがこよなく愛する樽メーカーです。Dean-"O"という樽専門家を訪れた際、ダグが「とって高品質の樽が手に入った!」と言って、とても嬉しそうにしているのが印象的でした。

そんな私達の当たり樽、2つをご紹介します。

Taransaud "T5"

T5はお金で買えるオーク樽の中で、最も誇り高く、高価な樽のひとつです。フランスの国有林でもあるTronçaisの森から取られたセシルオークの木材を使っています。厳選されたセシルオークを使い、通常の倍の時間とも言える5年の年月をかけてゆっくり外気にさらして自然に木材を乾燥させていきます。これが「T5」の名前の由来です。

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T5シリーズの樽はひとつずつに、2名しかいない樽の製造者(Meilleur Ouvrier de France、もしくは Compagnon du Devoir)どちらかの名前のサインがあります。
非常にきめ細かい木目のおかげで、ワインの熟成がゆっくりと進行して、エレガントな味わいを形成していきます。

Sylvain "Collection"

特定の区画で育てられた、なんと樹齢300年の最高品質オークから造られる樽シリーズです。それぞれの樽が唯一無二の存在で、その樽のためだけにデザインがあり、苗木が植樹された年、伐採された年、樹の名前そして樹のイメージ画が彫り込まれています。私達が確保できたはRéno-Valdieuの森から伐採された樹齢354年(1655-2009)のオークから作られた、75樽のうちの72番のものです。

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樽の木目を眺めていると、この樹が見てきた世界の歴史というものを想像せざるを得ません。ルイ14世の絶対王政、フランス革命、ナポレオン戦争、アメリカ独立宣言、明治維新、産業革命そして2つの世界大戦……。現代物理の祖、ニュートンの理論が発表される32年前、ダーウィンの進化論の200年前、アインシュタインの相対性理論の250年前、半導体ができる300年前に植樹されたものなのです。そして現代、この樹は樽となって、これから何年もワインを熟成させながら、未来を見ていくのでしょう。世界の転換期となるような2020年に私達の手元に届いたという巡り逢いに、ちょっとだけ縁を感じました。そんなこの樽で熟成するのはSUNSET CELLARS のフラッグシップワイン、2020 Barbera ヴィンテージです。

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SUNSET CELLARS (サンセット セラーズ)

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