私を信じた先に何がある? 元中学不登校生が私を信じた結果 ー教育現場③ー

こんにちは😀

今回はどうしても書きたかった話をさせていただきます。

タイトルに物凄く悩みました。嘘のような実話が私の教師時代に起こりました。

新卒して入った学校。それは以前に「動物園」と形容してしまったほどの偏差値の低い高校でのお話です。

私は大学生時代に塾講師のアルバイトをして教える技術を磨いていました。そして英語教師としてその学校に赴任しました。

その学校は当時2種のコースに分かれていました。総合コースと特進コースの2つ。進学校化を目指す学校においては当時この2つ目の名称で使われていた高校が多かったと思います。「総合コース」というのは「進学コース」とは違い、ただ進学ではなく高卒就職希望者や勉強が嫌いな生徒などが集まり、とにかく、手のかかる生徒がたくさんいました。一歩進んだと思ったら三歩下がるなんてザラにありました。

そんな総合コースにある1人の生徒がいました。クラスでイマイチパッとせず、落ち着きがなくて、変わり者だけどとても純粋な子。いつも私の前ではニコニコしていました。そんな印象を最初は持っていました。

でもその生徒には暗い過去を持っていました。中学生の頃、「なんで生きないといけないのか」という生に虚しさを覚え、人間関係に悩み、そのまま⚪︎んでしまうほど精神的に病んでいたそうです。そしていつしか不登校になりました。

中3の時に「リセットしたい」という気持ちと「このままではいけない」という気持ちに押され、私が赴任した高校と同じく1年生として入学してきました。

彼の入学試験の成績はよくなく、英語なんて信じられないぐらい出来ておらず、ローマ字ですら怪しかった生徒でした。

そんな彼がいる教室に授業しに行くと、休み時間が終わるまで私の近くにいて、楽しくお話をしたりしていました。

「変わっているけど純粋でいい子だなあ」と改めて実感したものの、「勉強できないんじゃあ、こういう生徒にも明るい未来は来るのかなあ?」と正直不安に思っていました。

私の当時の授業スタイルは「難関大学合格」を目指した授業を提供するスタイルで、しばしば進学のお話を授業に入れて話をしていました。でも進学の話なんて聞いてくれる生徒なんていないよなあ…って思っていました。

そんなこんな思いながら1学期が終わり、2学期になり、その生徒が私のもとにやってきて、英語の質問をしてきました。「案外真面目なんやな」って思って対応していました。すると次の授業にまた別の質問を。そんな感じが繰り返し起こり、遂には彼は教科書もノートを持って来ずに、私のもとに質問してきました。

「先生!overってなんですか?」

びっくりしました。私はあえて意地悪になって「overというのは前置詞である物体を飛び越えるようなイメージを持っていて、それが抽象的な意味につながって・・・、あ、ここまでは難しいかな?」と解答したところ、彼は「そうなんですか!英語って凄い生き物みたいに生きているんですね!」と彼は目を輝かせていました。

そこから彼に会う度に英文法談義をするようになりました。彼はクラスでも特に浮いた存在ではなく(というか周りがあまりにも浮きまくっている存在が多すぎた)、友達とも談笑をしていました。でも私を見つけるとすぐに英語の話になりました。私も英語が好きだったのでずっと語り合っていました。

3学期になって、彼は2年生から特進コースに上がることになりました。その勉強に追いつくために、彼専用のプリントを作り、英語構文力を上げることに専念していました。

そのプリントでもいつも私のところにやってきて、笑顔で添削を受けて、皮肉られてもニコニコ顔で、本当に面白いやつだなって思っていました。

そして2年生の1学期、彼は英検を受けたそうです。何級だと思いますか?

3級でも準2級でもありません。

2級です。2級は大学受験レベルで、彼には到底届かない級だろうなっと思いましたが、「本人が受けたいというからそうしたろうか」ということで送り出しました。

団体受験だったので、学校で合格速報をネットで調べることができ、正答数も調べることができました。

彼の結果を見たところ、「やはりな。」

彼は落ちました。

しかし、彼はとんでもないことを成し遂げていたんです。

リーディングとライティングが9割正解していたんです!

これには「えっ!?」となり、その日の放課後、彼を職員室前の廊下に呼びました。

「お前、ちょっとこの問題を解いてきてくれへんか?」と渡したのは「河合塾の全統マーク模試」。高3が受ける模試です。「私の考えが間違いでなければ・・・」と思い、翌日彼は持ってきました。

点数は予想通り、「140/200点」。内心、「こいつ、何も知らなかった状態から1年でこんだけ伸びたのか!」と驚きました。

そして彼に言いました。「お前、どこの大学に行きたいんや?」と。

彼は「先生と同じ関関同立大に行きたいです。そこで心理学を学びたいです!」と。力強く言いました。

彼に聞きました。「なんでそんなに英語ができるんや?」と。

「先生の授業が、先生とのやりとりが楽しかったからです。」と。

私は彼に約束しました。「お前を絶対にその大学に連れて行ってやる。」と。

ここから私は彼とのマンツーマンの授業を放課後、毎日職員室前の廊下と机でしました。

彼はいつ見ても英語に対してすぐに飲み込み理解し、1覚えたら10歩進んで行きました。どんなに言われても笑顔。できなくても怒る気もなく、むしろ意地悪なことを言って、彼の気持ちに火をつけさしました。

いずれ、周りの先生から、「弟子が来たぞ」と揶揄われるようになりました。私もどんな時間でも弟子とのレッスンが1番楽しくやり甲斐を感じていました。

高3になって、さらに勉強に拍車をかけ、遂に私は彼に「論破」されました。唯一の敗戦を彼の前に見せてしまうほど、彼の英語力は大きな存在へと進化していきました。

そして、迎えた受験日。彼は同志社大学の心理学部の試験を受けにいきました。担任の先生と一緒に彼の成功を祈りました。

受験後、担任との電話で「数学と理科が5割ぐらいしか自信ない・・・。英語が9割なかったら合格できない🥺」という彼らしくない後ろ向きな発言をしつつも、電話での話口調は不安と笑顔で話していたと感じました。

そして、合格発表日、私とその担任は彼からの電話を待っていました。電話がかかってきました。担任が出ました。「そうか!おめでとう!」と電話が来ました。

電話後、担任の表情を見て、「受かったぞ!」と。

私はとても不思議な気持ちでいました。成功の喜びと彼が遠くに行った姿に感動しました。

卒業式、私が出勤すると1枚のルーズリーフが置かれていました。

見ると

If I had not entered 〇〇 high school, what life would I spend now? I cannot imagine that, but I’m very sure that I wouldn’t love English as much as I love.
・・・(長くなるので割愛🙏)

彼からの英語の手紙でした。私は嬉しさのあまり、コピーを撮り、赤ペンを握りました。

最後の授業をしました。彼の英文を添削し、彼にその正しい答えを直接お返ししました。最後まで私は意地悪でした。

卒業式が終わると、私の元にやってきて、「先生に出会えて本当に良かったです。先生のおかげで人生が変わりました。」とお礼を言われました。

後日、大学受験合格報告会を新しく大学受験にトライする生徒たちの前で、彼は「00先生の指導のおかげで、・・・」と言ってくれました。

そんな彼も、先日大学を無事卒業し、現在は不動産業で働いています。

彼は最後まで私を信じてくれました。私は常に「生徒が俺を信じた先に何があるのか?」と自問自答しており、時々同じ英語科の後輩にも「生徒があなたを信じた先に何があるのか?」と伝えることが多かったです。

彼が私に証明してくれました。私を信じると無限大の英語力を手にすることができると。彼は後日談で、英語の試験は9.5割の得点だったそうです。私を信じた先に明確なゴールがあると、教師として自信を持つようになりました。

今でも、彼とのレッスンは昨日のことのように思い出せます。彼が私を信じてくれたからこそ、彼は成功を収めました。

人を信じることは難しいです。私も信じた結果、裏切られ、パワハラに遭い、人間不信にもなったりしました。でも、でも、どこかであなたのことを信じたい、人がいるんです。そんな人たちを裏切っては何も手元に残りません。信じてくれている人を大切にしてください。

彼のようにそこら辺の雑草が大きく美しい花へと進化する、誰もがそんな可能性を持っています。人を信じ、そして裏切らないように努力してください。どんな結果であっても、受け止めてあげてください。何気ない出会いが人を変えるきっかけになります。

今教師をされている方、目指そうとしている方へ、
生徒があなたを信じた先に何がありますか?その先の向こう側に連れて行ってあげてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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