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サマーフィルムにのって

夏が終わろうとしていた。
私の夏は後期授業開始とともに消えていく。
虚しくも逃れられない残酷な制限。

この夏も簡単に淡く消えかけていた。
どこにも行けない。ただそれだけでこの夏の価値が下がっていくのだった。

大人になるにつれて夏への特別感が薄れていく。
僕もこうやって、ワクワクやドキドキを感じる子供心を失っていくのだろうか。僕は子供心を失った大人が大嫌いなので、必死に抗っていきたい。

このまま放っておくとなんだかいけないと思い、僕は「この夏を過ごした」という証明をするために、この夏最後の何かをしようと、

夏が終わる前に、夏の映画をみよう

と思うのであった。

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映画のためだけの外出

カメラと財布を鞄に入れてバスに乗る。
今日行くのは実は初めて入る映画館で、少し古くて豪華。
アイボリーな壁に年季の入ったレッドカーペット。
いいねいいね。
いつも見ている映画館より狭かったから、スクリーンが近く感じた。

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見たのは「サマーフィルムにのって」という映画。
ちょうど今日が公開して一ヶ月たった日らしい。

恋×友情×時代劇×SF×青春映画という内容。
ネタバレをするのは嫌なので内容については少ししか触れないけれど、映画の終わり方が天才的だった。ストーリーも面白い。キャラクターも個性的。映像は独特の色味に統一されていて、主人公の吸い込まれそうな瞳やキラキラした青春を良く魅せていた。今の時代に合ったメッセージ性も含まれている。バランスよく好評価な映画、と感じた。

この内容なら漫画でもアニメでも面白いだろうなって感じたけど、映像が綺麗すぎて映画としてこの作品を見て良かったなと感じた。影が淡い青色で僕の好きな色を持った世界観だった。まぁ映画として形にしたことによる意味も大きいけれど。

もともとこの作品を知ったのは、映画好きの兄からおすすめされたのがきっかけで。そこから調べてみたところ、ヤスダ彩さんという方が撮った現場写真に目を奪われた。

この夏はこれを見ないと終われないって思った。

見終わって最初に感じたのは、この映画を作ってくれたことに対する感謝だった。「この作品を映画として形にしてくれてありがとう」という気持ちが湧いて出た。

僕は正直そんなに映画を見ない。
ディズニー+に入った時にマーベル作品を一気見したくらい。
流行っているものを友達と見に行くくらい。
この作品を見て、今まで見ていた映画は『履修のために見ていた映画』と感じた。環境が僕に見させた映画だと。

兄にこの話をしたら、映画を多く見るようになってから同じようなことを感じたと言う。それから映画の楽しみ方を知ったとも言う。

この『サマーフィルムにのって』という映画は、僕に映画の面白さを気づかせてくれた映画なのかもしれない。

帰り道、街の風景をカメラで切り取りながら
そう思った。

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そうして僕の夏が終わりを迎えた。
新しいワクワクを抱えて僕はもうすぐ20歳になる。
僕はこうやって大人になっていくことにする。

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