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減薬にチャレンジしてみるということ

■初めての減薬

私は6年前にうつ病を発症した臨床心理士です。今では特に体調不良でお休みをするような事もなくフルタイムで働いています。ここ4年くらいは服薬内容も変わらず、ずっと同じ分量で服薬治療を継続してきました。それをこの2ヶ月くらい徐々に減薬し始めています。今回は何故私がこれまで減薬をしてこなかったのか、そして何故今になって減薬を始めるのかについてお伝えをしていきます。少しでもこの発信が皆様のお役に立てれば幸いです。

■何故減薬してこなかったのか

私が服薬している内容は主に抗うつ剤(SNRI)、睡眠導入剤、睡眠持続剤の三つの用途、計4種類のお薬です。お薬の品名はここでは伏せておきます。減薬調整をしているのはこのうちの、睡眠持続剤と導入剤についてです。何故減薬をしてこなかったのか、というと結論としては「様々な状況の変化があったため、減薬のリスクを取るよりは服薬内容を維持してコンディションに乱れがないか、安定した状態を優先させるため」です。もちろん、この治療指針については主治医との相談の上で決めています。

過去の記事でも触れていますが、ここ3年ほどで私自身を取り巻く環境が大きく変わりました。転居や新たな職場環境、パートナーとの同居等です。こうした環境変化がある時、心身のコンディションが崩れる事があらかじめリスクとして考えられました。そんな時にさらに服薬調整をした結果、心身のコンディションを崩してはせっかくの回復が逆戻りになる危険性があります。リスクがある時程、リスクを分散させる、極力安パイを選択する。その為にもそうしたプライベートの環境変化については主治医にも逐一報告をしてきました。

■何故今になって減薬するのか

今回減薬を図るのは先述の通り眠剤関係のお薬です。その減薬には、眠剤を利用する事への抵抗感をもっていらっしゃる方々が懸念される事と恐らく共通する点が関係しています。つまり、依存症の問題です。

眠剤の中にはベンゾジアゼピンという成分が含まれているお薬があります。(含まれていないお薬もあります)このベンゾジアゼピンという成分は「その薬無しではいられなくなってしまう」依存性と、「薬が同じ量では効かなくなってしまう」耐性という性質を有しています。この性質が、処方量増加とその一方で長期的に服用を続けるほど薬が効かなくなってくるという悪循環をもたらすことにつながりかねません。その為近年の精神医学の現場ではこうした依存と耐性を新たに作らないよう、処方制限を設けるなどして極力ベンゾジアゼピン系の眠剤の処方を避ける医師が増えているようです。

私自身、発症から6年、毎日欠かさず眠剤のお世話になってきた身です。決して処方期間が短かったわけではないでしょう。しかしながら、服薬継続に伴う依存性耐性の問題と環境変化に伴うコンディション悪化とを天秤にかけた末、眠剤の服用を継続してたという経緯があります。それが2020年12月現在、環境変化等がある程度収まってきた事、そして年末年始の休暇を利用して仕事に影響が出ない範囲で減薬の影響を慎重に観察できるという判断のもと、主治医と相談の上で減薬を図ることとなりました。

とはいえ、いきなり全量を無くすわけではありません。既にここまでの2ヶ月でベンゾジアゼピン系のお薬の減薬は少量ずつ行ってきました。この2ヶ月で睡眠の質に大きな影響が出ていない事が確認できたので、入眠導入剤、持続剤の双方を減薬し、お薬に依らない睡眠に向かって舵を切り始めたということです。

■薬は必ずしも悪ではないが薬以外にも方法はある

うつ病等精神疾患の治療に際しては、第1選択はやはり薬物治療であることに変わりはないと思います。うつ病のどん底の状態で、運動療法や食事療法を勧められたとして「寝付けない現状」「意欲がなく体が動かせない現状」「どうしようもなく死にたくなる気持ち」の中で誰しも運動や食事の改善に取り組めるわけではない、むしろそんな方は稀なのです。だから、最初のうちには薬物治療が必要なのです。

睡眠が十分に取れないと脳が回復しないことは過去にもお伝えをしてきました。睡眠には体力が必要なんです。何故なら睡眠中に体と脳を修復するのですから、その修復にはエネルギーを要するのです。そのエネルギーがなければ、そもそも睡眠が十分に取れない。これは、加齢に伴いお年寄りが早起きになったりする事を思い浮かべていただければ、ご理解いただけることでしょう。

なので、最初から薬を否定したり、眠剤を拒否してしまうと、その修復に必要なエネルギーがなかなか確保できない。そうした観点に立って考えると、やはり初期段階では服薬治療が多くの人にとって有効といえます。一方で、服薬だけではうまくいかないこともある。上述の依存性や耐性のように、薬には良い面だけではなく良くない側面も必ずあるのです。だからこそ、薬と上手にお付き合いをしていく為には必ず薬情に目を通し、ネット検索等で作用機序や副作用を確認した上で、心配な症状があればつぶさに主治医に報告し、相談する事が欠かせません。そして、徐々にコンディションが回復してきた暁には、服薬だけではない回復の方法を日常生活に取り入れていくことが、お薬から上手に離れる上で必要です。

そして、お医者さんはスポーツトレーナーでもなければ管理栄養士でもありません。なので漢方を上手に使ったり心理療法的な取り組みへの助言はしてくれたとしても、あなたの日常生活の運動量や3食の栄養バランスについてまでは短い診療時間ではとても指導できません。そこは、患者であるあなた自身が積極的に治療に必要な情報を集めて、必要な取り組みを実践して、それを継続していく努力が不可欠です。そうしてあなたの努力の積み重ねで土台ができてきたと感じられた時、徐々にお薬から離れる相談を、ここはお医者さんと相談してください。

主治医はエスパーではありませんし、あなたの全てを管理把握する統治者でもありません。あくまでも、治療の主体者は患者自身。あなたの前向きな取り組みが、必ずや今あなたを苦しめている症状を解決してくれることでしょう。


ここまで目を通してくださってありがとうございます。

SUNNY  DAYSカウンセリングルームはオンラインカウンセリングを実施しています。もしご自身のお悩みや症状に関するご相談がございましたらお気軽にお問い合わせください。


有資格者の心理カウンセラーが自身のうつ病経験のしくじり体験談やそこから復職にいたるまでのコツや、病気と付き合う為のノウハウを記事にしています。遠隔カウンセリングも行っておりますので、なかなか外に出るのが難しかったり直接人と会うのが苦手な方もお気軽にお問い合わせ下さい☺️