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【ダメな子なんていない】<相撲くん>の場合

相撲くんについて

まず真っ先に書きたいと思ったのは、<相撲くん>でした。

名前の由来は、太っているとかではなく、
彼が小学生にして大の相撲ファンであり、
「◯◯が土俵入りする時の塩の撒き方」などと言って唐突に相撲モノマネを披露してくれるからです。
しかもそれがものすごく上手い。
それは大横綱が何十年もやってきた体に馴染んだ動きそのもの。

私は彼のその相撲モノマネが大好きなので相撲くんと名付けた、それだけのことです。


普段の彼の様子

相撲くんは出会うと必ず、物凄い勢いで近づいてきて、じっと顔を見つめ、話しかけてきます。

真顔のような、微妙に口角が上がっているような、不思議な笑顔で。

その語り口は殆ど、タイトルを言ってから話し始めるか、質問形式。
そして、とっても"唐突"です。

🙂
タイトル:「『ゴジラ-1.0』で○○が襲撃を受けた時に××に襲撃を知らせる時のセリフ」
「『〜〜〜〜〜〜!!!』🤬」
🙂

「…えっと…『ゴジラ-1.0』観に行ったのかな?」

「(うん!)🙂」(満面の笑顔で頷く)


「……そう!良かったねぇ☺️
(なんて返すのが正解…?)」

…とか

🙂
「問題です。○○○○○(昆虫名)が〜〜する時にメスが取る行動とは一体なんでしょう。」
🙂

「知らないなぁ…。…○○とかかなぁ…」

「正解は、○○○○でした🙂」


「…へぇ!詳しいねぇ!☺️
(なんて返すのが正解…?)」

とか。

※ちなみに、クイズに正解すると🙂←この笑顔のまま少し悔しい顔をして(これならどうだ…!)と言わんばかりに別の問題を出してきます。

いつも内容は、
「……それで一体私はなんて返したら良いのだ…?」と言いたくなる、コアなものばかり。
しかも、こちらが止めない限り、というか止めても、永遠に話し続けるのが彼の恐ろしいところ。(永遠にモノマネシリーズが進むか、永遠にクイズを出されます。)

何かまともな反応をしてあげたいのですが、
反応すると嬉しくなってトークが益々加速するのと、モノマネやクイズも数が重なると次第に私のリアクションの方のレパートリーが尽き、「ほぉ…」とか「はぁ…」とかしか言葉が出てこなくなってきてしまうのです…

ごめんね相撲くん、
私のリアクション力も鍛えなきゃ…



相撲くんとの会話はいつもこんな流れです。

私だけじゃありません。相撲くんは誰にでも同じように唐突に話しかけます。相手がどんなに忙しかろうと、たとえ相手が他の人と話し中だったとしても、まるでそれが全く見えていないかのように。


とある女の子はこう言います。

「あの子本当にやばい子ですよね…」
「ずっと話しかけてくるんですけど…」
「要注意人物」
「無理!」
「対応しきれない、扱いづらい」

とある人はこう言います。

「彼は問題児だ」


相撲くんの筆舌に尽くし難い魅力

でも、私はそうは思いません。

むしろ、相撲くんは他の「普通の子」に比べ
とっても魅力的な子です。

柔らかで、ひょうきんで、コアな自分の世界を持っています。
たくさん人に話し続けるのは、日頃、大量の情報が頭に入ってきて、脳の容量が耐え難いから、それを人に話してアウトプットすることで、整理したり処理したりしているのだと思うのです。

1つの興味の対象物に対して、人よりも具に情報を得られるから、モノマネが上手いし、知識がたくさんある。(そしてそれを披露したい)

きっと、何か一つに没頭したら彼の知識に適う人はいないでしょう。

いわゆる、天才肌。

その個性や能力は、後天的に得ようとして得られるものではありません。

しかも、相撲くんはとっても良い子です。

悪口や人を傷つけるようなことは言わないし、暴力も暴れたりもしません。
言うことも聞きます。時間も守ります。
「これお願いね」と言うと、にこにこの口をキュッとして、(うん。)😐と勇ましい顔で頷き、しっかりやってくれます。
人をみて対応を変えたり、差別することもありません。誰にでも同じように接します。
まるで武士です。

ただひたすら、脳内に広がるマイワールドに生き、そのマイワールドを人と共有したい。それだけのこと。
それって、我々も同じでしょう?

いつ会ってもその不思議なにこにこ笑顔でいるのがマスコットキャラクターみたいで可愛く、
芸達者で、どうしても愛してしまう
魅力溢れる子なのです。



ある日、相撲くんは
いつもと同じ、にこにこ笑顔で、
いつもと違って、真面目に、こう言いました。

「僕ねぇ、学校でいじめられてるんだ🙂」

「…そうなの?」

「うん。」
「だからいつも教室で一人で静かに過ごしてる。普段はほとんど喋らないよ。」

「…でもね!ここでは何をしてもいいんだって思える!自由にしていられるから、楽しい!!🥳」



相撲くんの魅力を守りたい

「変な子」「問題児」「変わってる」「おかしい」
そう言われた子どもは、
にこにこしていて、傷付いているようには見えません。

それでも静かに、その言葉たちは彼のアイデンティティの中に取り込まれ、自分を押し殺して、学校という社会で生きている。
こんな小さな体で、無意識のうちに「社会に合わせる」ことを覚える。

せっかくの、誰にも真似できない魅力が、個性が、こうして萎縮していくのはなんと勿体無いことかと、悲しく思いました。

なぜ、相撲くんが私にそのことを話してくれたのかは分かりません。

でも嬉しかった。

私に話してくれたことがではありません。
ここをそういう場所だと思ってくれていることがです。

学校ではそうだとしても、
せめてここでは、
居たいように、やりたいようにしていてほしい。

自由な自分で居てくれて、ありがとう。

むしろもっと、そのあなたの魅力を拡大し続けてほしいと願うのです。

"個性的"って、素晴らしいこと。


相撲くんは今日も、
自分の頭の中に広がる宇宙を
色んな人に話し続けています。




※【ダメな子なんていない】とは

私が出逢った人々について描く
文章ドキュメンタリーシリーズです。

端的に言うと、人間観察。
良く言うと、他者理解。
悪く言うと、人のことを勝手に記事に書くな、という話。笑

※個人が特定されない範囲で書きます。
※脚色はなるべくしない方針です。

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