#2言の葉ひらり_鯉のぼり(1/3)
鯉のぼりの始まり
端午の節句が近づき、庭先やベランダに鯉のぼりの姿が見られます。近頃は町の風物詩として川風に吹き流される何十もの鯉のぼりを見ることも増えてきました。五月晴れの青空に鯉が泳ぐ姿は清々しいものです。よく晴れた空にかかる青みがかった雲を「青雲」と言いますが、この語には地位や学徳の高さという意味もあります。
さて鯉のぼりは中国の後漢書(432年)「堂錮列伝・李膺(りよう)」に現れる「竜門」にちなむものです。
竜門は黄河中流にある渓谷の急流で、数千の魚が竜門下に集うも、その滝を登ることはできませんでした。そこから竜門を難関のたとえとし、次の語句が生まれています。
こうして語源は古いのですが、行事としての鯉のぼりの歴史は意外と新しく、『日本人形玩具辞典』
とあるように、江戸時代の町人達の中にその始まりをみることができます。
とはいえ高崎出身の川野辺寛(かわのべかん)が記した『閭里(りょり)歳時記』安永九年(1780)刊では、次のように
鯉の記述はなく、普及の程度は定かではありません。
狂言台本にみる「鯉の滝登り」
言語の面から「鯉の滝登り」の探索をすると、この語句の初出は『日本国語大辞典』(小学館)によれば、狂言台本の虎寛本(1792年)にあるようです。<つづく>
エッセイは金曜日に配信する予定です。
[参考文献]
北原保雄・吉見孝夫編著(1987)『狂言記拾遺の研究』勉誠社
北原保雄・小林賢次(1991)『狂言六義全注』勉誠社
斎藤良輔編著(1997)『新装普及版日本人形玩具辞典』東京堂出版
天理図書館善本叢書和書之部編集委員会(1984)『天理図書館善本叢書和書之部第六十三巻鷺流狂言傳書保教本四』八木書店
笹野堅校訂(1942)『能狂言 大蔵虎寛本 中』岩波文庫
森銑三・北川博邦監修(1983)『続日本随筆大成別巻 民間風俗年中行事上』吉川弘文館
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