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スーツが似合う人

10月以降気分が落ち込みやすい傾向にある。このモヤモヤした状況を解決したくて所謂自己啓発本を何冊か手に取ってみたものの、今の自分に一番応えてくれるのはどうやらオードリー若林の言葉らしい。

スーツ姿の男性を見てああいう風にはなれないから別の道を探すしかなかったと彼はある番組で話していた。電車の中で押し固められて1秒でも長く寝ようとするスーツ姿の人達を見て、こういう風にはなりたくないと思った新卒1年目の自分。今ではマスクがないと恥ずかしいくらい口を開けて寝てしまうこともできるようになった。慣れは恐ろしい、だけどまだそちら側の世界にはうまく染まれていない気がしてならない。

去年購入した冬用スーツは1か月間毎週のようにスーツ屋に通って補正してもらったが、結局サイズが合わなかった。デスクワークをしているとふくらはぎまでスラックスの裾が上がってきてしまい、立ち上がっても裾が下がってくれない。今年もあのスーツを着る季節になったが、毎回自分の手でずり上がった裾を戻す作業があまりにも惨めに思えて今年も着る気持ちは持てなかった。

しかしながら、スーツそのものは必需品だからやむなくオーダースーツを頼むことにした。日本人の平均的な体型であらかじめ用意された既製品ではなく、自分のために作られたオーダーメイドならきっとサイズは合うはず。とはいえ、そちら側にいない自分がサイズのぴったりなスーツを手に入れたらそれはそれで違う気もする。毎日スーツを着る違和感、色の選択肢は紺黒灰くらいしか無いしメンズは異様にぴっちりとしている。考えれば溢れてくる違和感を丁度いいスーツを手に入れることで受け入れてしまうのだろうか。

オーダーメイドのスーツ屋に行った時、竹中直人風のイケオジ店員さんに対応してもらった。オーダーこそ絶対に良いと押し売りするわけではなくあくまで落ち着いた接客。いざ作ると決めたらきめ細やかにヒアリングをしてくれて、身体の色んな部位を採寸してもらった。
極めつけは店を出るときの一言「今までにない着用感をお楽しみ頂けますので出来上がりをどうぞお待ちください。」→楽しみになるやん
これが良い仕事というんだろうなあ。スーツ屋のあの店員さんは今まで会った人の中で一番スーツの似合う人だったと思う。

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