グループセラピー (1分小説)
快晴のため、今日のグループセラピーは、公園で行われることになった。
私たちは輪になり、芝生の上に座った。
「では、ルミさん。この前の続きから、お話しください」
セラピストは、ネームプレートに書かれた仮名通りに、私を呼んだ。
「はい。初めて大麻を目にしたのは、22歳の時でした。クラブで、見知らぬ男に手渡され、興味本位から使ってしまったんです」
みんな、真剣に話を聞いてくれている。
「それから5年間、コカインや覚醒剤、さまざまなクスリに手を出してしまい、たち切ることができませんでした。
努力はしたんですが、無理で。友達に借金して買っていたから、信用までも失い…」
初老のケイスケさんが、共感してくれた。
「オレには分かるよ。何としてでも、ヤクを手に入れたくなる気持ち」
OLのハルナさんも、慰めてくれる。
「一般の人は、理解してくれませんよね。去っていくだけで」
「ええ。そのつらさに耐えられなくて、繰り返し使ってしまいました。
みなさんには、私の生い立ちから、現在に至るまでの話を聞いてもらい、だいぶスッキリしました」
違法薬物という、共通の罪を背負った者でしか分かりあえない空間。
たとえ、世間から大きくズレていたとしても、私には唯一の居場所。やっと、心許しあえる仲間たちに出会えたのだ。
「きっと、みなさんとなら更正できます。これからも参加し続けます」
近くを歩いていた園児が、引率の保母さんにたずねた。
「あの女の人、どうして、一人で話をしているの?」
※この作品を書いた直後に、槇原敬之さん逮捕のニュースに遭遇。タイミングに唖然です。半日間迷いましたが掲載しました。
アクセス数を狙い、アップしたわけではありませんが、そう捉えられても不思議ではない状況です。ご不快になられたファンの方がおられたら、すみません。
また、「コメント」「記事の話題」「お気に入りマガジンへの紹介」のお礼は、こちらに書かせていただきます。作品の意味をご理解くださり、ありがとうございます。
by shedshed
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