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スピンオフから独立した人間ドラマ。『室井慎次 生き続ける者』【映画感想文】

※この記事は、#ネタバレ を含みます。

『踊る大捜査線』シリーズが大好きで、ドラマも映画も全部見てきた。だから、『踊る』シリーズの新作と言われれば無条件に見に行く。

『室井慎次 生き続ける者』も、前作『室井慎次 敗れざる者』からの続きが気になっていた。『敗れざる者』と『生き続ける者』のどちらも、『踊る』シリーズの成分が薄いのは分かっている。それでも、室井のその後がどうしても気になってしまう。

風のうわさでは、作品の賛否が分かれているとも聞く。そこで私は、あえて評価を見ずに鑑賞した。
結果、涙腺を刺激されて目を腫らして帰る羽目になった。

『踊る大捜査線』スピンオフから独立した人間ドラマ

メインとなるストーリーは室井本人の退職後の人生。

『踊る』シリーズでおなじみの登場人物も出てくるし、前作で起きた事件の解決も見られる。警察ドラマの側面もあるけど、室井自身が退官しているため、警察色は弱い。事件もあっけなく解決したし、犯人も予想通りだった。『踊る』らしさは、耳かき1杯分程度しか感じられなかった。

確かに、『踊る』シリーズから派生したスピンオフ作品だが、シリーズのイメージを強く持っていると、はしごを外されたような気持ちになるのも、わからなくはない。登場人物たちが華々しく事件を解決するイメージは、今でも根強い。

しかし、前作と今作をスピンオフとしてではなく、シリーズから独立した物語として捉えてみる。そうすると、『踊る』シリーズから離れた、人間ドラマとして楽しめると思う。

話がぶつ切りなのは否めない

これまでの『踊る』シリーズの展開は、幹となる1本の大きなエピソードがあって、そこにたくさんのエピソードが後からどんどん重なり、最後に数々の伏線を回収しながらメインの話も解決していく流れだった。

それに比べると、前作と今作については、話がぶつ切りな気がする。
閉鎖的な地域住民との和解、日向真奈美の娘・杏が打ち解けていく様子は、もう少しエピソードが欲しかった。背景が浅く感じてしまった。どうしてもリズムの悪さが気になってしまう。イマイチ流れに乗り切れておらず、話がぶつぶつと切れていて、独立して見えてしまった。
それぞれのエピソードは、深堀すればいいものが多かっただけに、惜しい。

泣けるシーンが多いのは、演出と役者さんの力

それでも、ところどころ涙を誘うシーンが多い。特に私は涙もろく、家族の絆に心を動かされやすい人間なので、ピンポイントで涙腺を刺激された。

リク(里子)が実の父親に引き取られる場面は、室井家で過ごしてきた日々を思って涙してしまった。そのあと、父親に暴力を振るわれて脱走したリクが、自力で室井家に戻ってきたシーンも痛々しかった。(子どもが辛い目に遭うシーンはホント心から辛くなるのよ)

わが子の年齢がリクに近いこともあって、感情移入しすぎたかもしれない。途中から、リクがしゃべるだけで泣きそうになっていた。リク役の子、双子キャストみたいだけど、健気な感じが良かった。

まとめ

雑に思えたところも多かったけど、結局ぼろぼろ泣いてしまったので、私としては良かったのだろう。結末は消化するまでに時間がかかりそうなので、パンフレットを読みながらもう一度考えることにする。

『踊る』シリーズ特有のスカッとした感じ(特にドラマや映画の1・2)が好きな方にはお勧めできない。重めの人間ドラマを受容できる方に、お勧めしたい。


気になる方は、ぜひ劇場へ。

涙もろい方は、ハンカチ持参で。
涙もろい女性は、メイク用品もお忘れなく。
(化粧直しできなくて、そそくさと帰ってきた)

前作のレビューはこちら。

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