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ホストクラブの初回に行って来た件【大人の社会科見学】

六月某日、ホストクラブの初回に行く。
前にも書いた通り、私はこういった事に関しては吝嗇なので、一晩でホストクラブに数万円をつぎ込むのはさすがに少し気が引ける。
十万円あったら、都内の高層階の良いホテルにルームサービス&朝食つきで泊まれるだろうし、長距離フライトのエコノミーの席をグレードアップさせる事も出来る訳で。

それでも、普段インスタやYouTube等で観ているホストクラブがどんな所なのか一度自分の目で見てみたくはあるので、まずは初回料金で入ってみる事にした。私の実家は歌舞伎町で遊んだ後に帰れる場所にはないので、安全面も考慮して、大通り沿いのビジホも予約した。これにて前準備は万全だ。

歌舞伎町を夕方以降に一人で歩く事自体、一抹の不安を感じるが、それを言ったらベルリンの治安もどっこいどっこい、なかなか良い勝負だと思う。梅雨の季節で傘を差しながら早足で移動した事もあって、外で声はかけられなかった(もしかして、私なんて声をかける価値もなかった…?(´;ω;`)ブワッ)。

この日一番緊張したのは、店のエレベーターに乗った瞬間だ。何でも、エレベーターの扉が開いた瞬間、直接店舗に繋がって「いらっしゃいませ!」と声をかけられると言うではないか。これでは、店の扉の前で一息ついたり、やっぱり勇気がないからやめようと、折り返したりする事も出来ない。降りる階のボタンを押したが最後、私は腹を括る(?)しかない。Es gibt kein Zurück!

店内に入ってから席につくまでの事は、とても緊張していたので正直あまり覚えていない。ちなみにこの日記は、お店や推しホストの紹介ではなく、あくまでホストクラブなる所に社会科見学をしてきたよという話なので、店舗名等は伏せる。

で、初回の感想:ほぼ、企業の面接だった。
キャストさんが私の卓にやって来ては挨拶&自己紹介をし、短い時間で「自分を売り込む」というか、「何故他のキャストではなく、自分と飲み直し(初回料金を遥かに上回る)をするべきなのか」を、彼らが全力でアピールする時間だった。

私が「面接」させて頂いたのは六、七人ほど。話が上手い人との時間は短く感じられるし、イケメンでも話が噛み合わない人との時間は比較的ゆっくり過ぎていく。私は人生でこの時ほど相対性理論を肌身に感じた事はなかった(アインシュタイン曰く、可愛い女の子と一緒に過ごす楽しい一時間は、まるで数分のように感じられるそう)。

さすがに女性をもてなすホストクラブだけあって、お世辞は上手い。おそらく彼らのお母さんと同世代くらいであろう私をメチャクチャ褒めてくる。沼る女子がいる訳だ。

客とホスト、一対一の会話だから、人によって合う合わないはあるだろうけれど、会話の運び方が上手い人とそうでない人では、同じハコでも天と地の差だった。売れっ子と呼ばれる人が何故売れているのか、十分弱の会話でもよく分かったし、客の懐に入る術は、フリーランスとして働いている身としては、とても参考になった。

そして、キャストさん達と接して何よりも驚かされたのが、彼らのテーブルマナーというか、鮮やかなテーブル捌き?だった。
話に花を咲かせながら、目の前のドリンクがいつの間にか継ぎ足されているのは当然だが、私のグラスについた水滴か何かを、とあるキャストさんがサッと拭いた際には、早すぎて何が起こったのか一瞬理解出来なかった。まるでテーブルマジックを見させられているような早業で、気がつけばおしぼりはおにぎりのような形に畳まれて、テーブルの端にちょこんと載っている。私は後にも先にもあんな形に畳まれたおしぼりを見た事がない。
森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」という自叙伝形式の小説で、主人公が友達に誘われて、あまり乗り気ではないまま遊郭に連れて来られたところ、脱衣を手伝う凄腕のお婆さんが現れて、あれよあれよという間に足袋を脱がされてしまった…というエピソードがあった気がするのだが、それを思い出した。世の中には色々なプロがいるんだな…。

世の中といえば、昨年、バーコンベンションというベルリンの見本市に行った際、ヨーロッパ中から集まったいわゆる夜職の人々を見かけたが、女性はとにかくセクシー、男性はヒゲ&筋肉ムキムキのワイルド系が多かった。髪型は短髪かオールバック。歌舞伎町の美的感覚とは大きく異なるが、みんな違ってみんないい。世界は広いなと思うと共に、お金を出せばアイドル顔の男の子達と一緒に呑めるって、やっぱり日本は良い国だなとつくづく感じたし、貴重な文化だなとも思う。

うん、帰省したら、また行きたい。

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