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セルフデベロップメント産業クエストチームインタビューvol.1「人生100年時代に必要な社会寿命」

SUNDREDで現在進行中の新産業共創プロジェクトの一つ、「セルフデベロップメント産業」。チームを率いる三石原士、柏木誠、藤川佳則、吉田直樹の4名が、SUNDREDパートナーの光村圭一郎を聞き手に、セルフデベロップメント産業やプロジェクトの進捗について語り合いました。

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「働く」「学ぶ」が決定的に変わる

−本日はよろしくお願いします。さっそくですが、まずはセルフデベロップメント産業とはなんぞや、というところから説明していただけますか?

セルフデベロップメント産業とは?

三石:ひとことで言うと、「人間中心で、ありたい姿を実現させる産業」です。順を追って説明しましょう。人生100年時代、終身雇用の崩壊、副業・兼業・ジョブ型・プロジェクト型などの新しい雇用・勤務形態の普及と、昨今は「働く」に関する状況が大きく変わり、働き方や生き方を自己責任で選択する時代に突入しています。一方、それが可能な環境が整っているかというと決してそうでなく、個人にとって主体的で自由な選択をすることは難度が高くなっています。レールに乗っかっていればキャリアや人生をある程度予測できた時代から、自分で選び行動する時代になったものの、それを支える環境がない。ないなら自分たちで生み出そうというのが、セルフデベロップメント産業共創の起点です。

支える環境がない?

−なるほど。環境がないというのは、社会的基盤やサービスがないということですか?

三石:転職支援、企業内研修、ビジネススクール、自己啓発セミナーなど、キャリアをサポートするサービスはあるのですが、現状ではそれぞれが連携できておらず、学びやキャリアの履歴や関連データがバラバラに存在する状態です。本来であれば、こういうデータは個人資産のはずです。このデータを自分自身で持ち運び活用することで、より良い働き方や学習の機会、さらには生き方を得られるのではないか。社会全体をこうしたあるべき姿にもっていこうというのが、セルフデベロップメント産業のビジョンです。

学ぶ

−「働く」に加えて「学ぶ」の視点も重要かと思いますが、そのあたりはいかがですか?

藤川:「学ぶ」に関しては、教育にせよ研修にせよ、従来は提供する側の論理で産業構造が組み立てられてきました。学びの履歴データも縦割りで、教育を施す側に蓄積されています。学校に成績証明書や卒業証明書を取得しにいく、というのはその典型例でしょう。個人が自分の学びの履歴データを所有し、いつ誰にどう開示するかを自分で決められる社会にはなっていません。なっていないからこそ、そこにチャンスがあるはずだ。そんな課題意識を持っています。

−現状では個人中心、人間中心にはできていないということですが、これによりどんな弊害や不利益が生まれているのでしょうか?

藤川:一つは、何をどう学べばいいか、今の自分にとって最適な学びが何かがわからない、ということ。後から振り返ると点と点が結ばれて線になる……というのは人生においてよくあることですが、それはあくまでも偶然そうなったわけで、局面ごとに最適な選択だったかどうかはわかりません。つまり、学びの機会を逸していたかもしれないわけです。学びの履歴をログとして持っていることで、どのような学びが今、必要なのかを気づけるようになるかもしれない。学びのあり方は大きく変わってくると思います。

人生100年時代

吉田:これまでの工業化社会においては、既存の仕組みのなかで自己を最適化すればよかったわけですが、レールがないこれからの時代は個別に自己理解をしたり道筋を考えたりしないといけません。また、今の社会システムは人生100年時代に対応していないので、システムに頼らずに自分で泳がないといけません。このままだと弊害や不利益が生まれることは必至なので、今こそこの課題に取り組むべきタイミングだと考えます。

個人が自分のデータを持ち歩けること

−個人が自分のデータを持ち歩けること。そのデータを自己理解のために使い、何をどう学ぶかをメタ認知的に選択すること。この2つがセットになってつくられていく産業と考えて良いのでしょうか?

三石:はい。データの話になりがちですが、あくまでも「人間中心」がキーワードです。自分の強み・弱みや経験を社会でどう活かすのかを考え、行動する。就職する、起業する、兼業するなどいろんな選択肢のなかから自分で選び、どこに向かうのかを自分で決める。「なれる自分」から「なりたい自分」へとステップアップする。それを可能にするための産業分野ということです。

ディスカッションを重ね「目的を共創」する

−ビジョンを実現するために、セルフデベロップメント産業では具体的に、どのようなアクションをしているのでしょうか?

柏木:ここにいるメンバーでディスカッションを重ね、個人と社会との関わりの長さを表す「社会寿命」という概念を考えました。
今後、個人はどんどん社会において価値共創に取り組んでいく生き方が主流になると考えていますが、その機会を得られるかどうかは学習、教育、研修、キャリアアップ、自己啓発などによって大きく左右されます。コツコツ積み重ねていると未来の選択肢は豊かになる一方、何も考えずに時間を過ごしていると選択肢が乏しくなってしまいかねない。定年後、お金があって健康なだけでは不十分で、やはり社会との接点が“生きがい”必要ですよね。

「社会寿命」を延ばすセルフデベロップメントサイクル

−そのような社会との接点を、いつまで持てるかというのが「社会寿命」という考え方ですね。

柏木:はい。そして、この「社会寿命」を延ばすために重要なのが、私たちが構想した「セルフデベロップメントサイクル」です。まずは自分の特性と価値を理解し、自分が取り得る選択肢について理解し、「なれる自分」を描く。さらに、未来の「なりたい自分」を描く。この「なれる自分」と「なりたい自分」のギャップを埋めるのが自分に最適な学びである…というサイクルで、これを回し続けることで社会寿命が伸び、人生100年時代を豊かにすることにつながる。そう考えました。

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エコシステム構想

−それを実現するのが「セルフデベロップメント」産業ですね。

柏木:そうです。ただ、先ほど三石さんや藤川さんがおっしゃったように、必要なサービスやビジネスがバラバラに分断して存在している。そこでセルフデベロップメント産業では、「自分を理解するサービス」「学習機会を提供するサービス」「価値創造の機会を提供するサービス」などのように整理し、データを共有するデジタルプラットフォームでつなぎ合わせることを考えています。これが、SUNDREDの新産業づくりのポイントである「エコシステム構想」です。

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吉田:そうしたセルフデベロップメントサイクルに基づき自己理解を深めて最適なかたちで学ぶ個人を支えると同時に、そうやって学んだ人が活躍できる場を創出することも重要だと考えています。個人の学びのデータの活用により、これまで平均化されてきた学びやキャリアの個別化が進み、働く場や形態のバリエーションもよりカスタマイズされたものになっていくはずです。実際、すでにヘルスケアやメディカルの分野では同様のことが起きています。

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セルフデベロップメント産業

インタビュー

#柏木誠 (NHN PlayArt株式会社)
#藤川佳則 (一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 准教授)
#吉田直樹 (SUNDRED株式会社 パートナー|三菱総合研究所 参与)
#三石原士 (SUNDRED株式会社 パートナー|パーソルキャリア株式会社 経営戦略本部 ミッション推進統括部 プロデューサー)
#光村圭一郎 (SUNDRED株式会社 パートナー|三井不動産 BASE Q 運営責任者)※ファシリテーター


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SUNDRED / 新産業共創スタジオでは2月17日〜19日にカンファレンスを開催します。

インタープレナー、企業およびその他の組織、起業家・スタートアップ、それぞれの観点から新産業の共創について考えていくとともに、具体的な新産業共創プロジェクトについても皆さんとディスカッションしていく機会とさせて頂く予定です。是非ご参加下さい。