顧客起点の新規事業づくりを学ぶためにNTT東日本からSun*へ出向。「学べることは全部持ち帰る」ハングリー精神で社内に新風を巻き起こす存在に
クライアントのプロジェクトに入り、顧客起点で物事や課題を捉え、体系的に新規事業を立ち上げていくのが、Sun*のビジネスデザイナー(BD)の主な役割となっています。
そんなBDチームに、NTT東日本から出向してきたのが大穂さんです。
2023年8月にSun*へ出向後、大手製薬会社や大手証券会社、大手銀行など、さまざまなクライアントのプロジェクトに参画し、DX戦略のロードマップ策定や事業案の企画、サービスデザインの支援などに関わってきました。
Sun*として、外部からの出向社員を受け入れたのは初の試み。
ビジネス・テック・クリエイティブの各職種別にプロフェッショナル人材が多く在籍するSun*に出向を決めた背景や、出向社員に期待していた成果について、大穂哲史さんとGeneral Managerの井上一鷹に話を聞きました。
「メンバーの人当たりの良さ」と「体系的に新規事業を学べる環境」が出向の決め手
── NTT東日本の「社外派遣プログラム」を希望された経緯を教えてください。
大穂:社外派遣プログラムとは、NTT東日本の社内では習得できないスキルを、1年間社外への出向を通じて習得し、帰任後に習得したスキルを社内に還元することを目的にしたプログラムです。
毎年、公募の中から選抜者が決まり、社外派遣プログラムに参加することができます。私は入社5年目に応募し、選抜されたのがきっかけでSun*へ出向することになったのです。
NTT東日本では、ずっと新規事業を担当する部署で働いていましたが、大企業で新規事業をやろうとすると、どうしても実証実験(PoC)で止まってしまうケースが多いと思っていました。
また市場規模が大きく、かつ収益性の高い“ホームラン級”の新規事業を最初に考えようとするため、「机上では良いのに、リリースしたら失敗する」ということが続いていました。
こうした状況を傍目で見ていたときに、私が思ったのは顧客起点が欠けているということでした。
そこで、社外で新規事業に携わりたいと考えるようになり、社外派遣プログラムへ応募することになったのです。
── なぜSun*に出向を決めたのでしょうか?
NTT東日本の社内では、顧客起点の新規事業を作るのは難しいと思ったので、そのもとになるサービスデザインの考え方を軸に新規事業を数多く手がけた実績のあるSun*に興味を持ちました。
新規事業に関するいろんな書籍を読んでいたのもあり、最初から専門性のある人材を集めて新規事業に取り組むことが鍵になることは理解していました。
そういう意味では、新規事業に必要なB(ビジネス)、T(テック)、C(クリエイティブ)の人材を専門チームとして組成し、プロジェクトに取り組むSun*に入ることで、「どうしたら顧客起点に沿った形で、うまく新規事業を立ち上げられるのか」というのを学べると思ったのです。
また、私の知人でNTT東日本出身の西谷さんが、Sun*で楽しそうにお仕事をされているのも知っていたのも、Sun*へ出向しようと思ったきっかけです。
新規事業に特化したビジネスを強みにしているSun*の環境で働くことで、他の候補だった出向先に行くよりも、得るものが大きいと考えていましたね。
Sun*ならではの知見やノウハウを学ぶことができますし、何より0→1で新規事業を生み出そうと取り組む人たちから刺激をもらえるなと。
最終的には、Sun*で働くメンバーの人当たりの良さと、新規事業の体系的なノウハウを学べる環境が、Sun*へ出向する決め手になりました。
── これまで、Sun*としては「出向社員の受け入れ」を行ってきませんでしたが、今回初めて受け入れた背景について教えてください。
井上:Sun*では「誰もが価値創造に夢中になれる世界」を実現させるためにビジネスへ取り組んでいますが、大穂さんと最初に話したときから、そのモチベーションを強く持っているなと思っていました。
「Sun*に入ったらこういうことをやりたい」という青写真をプレゼンテーションしてくれるなど、すごく勢いがあってフットワークの軽さに驚いたのです。
その姿勢から、まさに価値創造に夢中になろうとしているハングリー精神を感じましたね。なので、そこまで出向社員を受け入れるのに大変なことはありませんでした。
最初から最後までプロジェクトに関わることで意識変化が起こった
── NTT東日本とSun*では、働き方も業務の進め方も異なるわけですが、Sun*に入ってからは、どのような形で業務のキャッチアップを行い、新規事業に携わっていったのでしょうか?
大穂:2023年8月にSun*へ来てからすぐ思ったのは、「自分自身の経験の浅さ」でした。
NTT東日本でずっと新規事業に関わってきたつもりだったのが、それがほんの触り部分だけだったことに、あらためて気づかされたのです。
新規事業のプロセスとして、初めにコンセプトメイクしてから事業のロードマップを作っていく際に、市場規模や事業性といったマクロ視点に寄りすぎてしまっていたため、ミクロ視点が足りていないと感じていました。
その一方で、Sun*ではデザイナーやエンジニア含めてもマクロとミクロの両方の視点からコンセプトを積み上げていくのを、当たり前のようにできていました。
Sun*に入社後、まずは事業構想から考えるプロジェクトに携わらせてもらったのですが、0から作る上での進め方や分析の仕方といった体系的に新規事業を作っていくアプローチは全く知りませんでした。
なので、最初はSun*のメンバーと並走しながら、新規事業の進め方を現場で必死に覚えられるように努力しましたね。
転機になったのは、10月頃から1月にかけて参画したプロジェクトでした。
これまで、Sun*のメンバーの動きを見ながら並走していたのに対して、このプロジェクトでは、自分自身でクライアントへの提案やファシリテーションの実施をやらせてもらったのです。
そのため、自分の中でも明確に意識変化が起こったタイミングだと感じていて、ビジネスデザイナーとして身につけるべきスキルや、「いかにバリューを出して還元していくか」というマインドセットをより意識するようになりました。
今までも新規事業に関わってはいたものの、どこか中途半端になっていたというか。
最初の構想を考え、新規事業を立ち上げていくまで走り切る経験は、自分にとって本当に初めての経験で、ひとつの案件を最後までやり切ることができたのは、すごくいい財産になったと感じています。
出向を通じて「Sun*との繋がり」を作ることができた
── 業務以外のカルチャー面に関しては、どのような違いを感じましたか?
大穂:NTT東日本と違って、Sun*では明確な職種が設定されており、かつ各々で専門領域がありながらも、“自分らしさ”を持っているメンバーが多い印象です。
年次アワード「SAA(Sun* Annual Award)」で集まったときも、Sun*で働くメンバーが楽しい雰囲気でイベントに参加し、メンバー同士で交流を深めているのを見ると、あらためて「個性を持って活き活きと働けるのがSun*の魅力」だと思うようになりました。
こうした文化を、大企業にもインストールしていきたいと考えています。
── Sun*で働いてみて、得られたことはありますか?
大穂:Sun*独自で開発した「Value Design Syntax(バリューデザイン・シンタックス、以下「VDS」)にある「新規事業の20の問い」をベースに、アイデア磨き上げていくように、フレームワークを使って「顧客起点での事業作り」を実体験として経験できたのは、自分にとっても良い学びになりました。
Sun*へ来る前にも、井上さんの著書である「異能の掛け算-新規事業のサイエンス-」を読んでいたんですが、やはり実際の現場でSun*のメンバーとプロジェクトに関わらないと、書籍にある知見は得られないと感じましたね。
書籍の表面的な知識に加え、実体験を経ることで、VDSのフレームワークを使った新規事業開発の解像度がより緻密化していくわけであり、自分はそれができたのは非常に大きかったなと思っています。
また、Sun*の強みであるBTCが三位一体となってプロジェクトを推進していくのを経験できたのも、自分にとってはポジティブな学びとなりました。
そして、「Sun*との繋がり」が作れたのも良かったと思っています。
出向期間が終わり、NTT東日本に戻ったとしても、何か悩みがあったらSun*のメンバーへフランクに相談したりすることができるので、Sun*との繋がりはこれからも大事にしていきたいですね。
前のめり思考で、150%の成果を目指していくことを意識
── 実際に出向社員を受け入れてみての所感をお聞かせください。
井上:大穂さんは多くのメンバーと議論を深めたり、お客様と仲良くなろうと振る舞ったりと、明るく前向きな姿勢で仕事と向き合っていたのが印象的でした。
また、新規事業を作っていく際に、否定的な意見を言うのは簡単ですが、プロジェクトを前に進めていくために建設的な意見を言えるのも、大穂さんの素晴らしいところだと思っています。
実際にプロジェクトの案件をこなしていくことで、Sun*の新規事業開発の全体像を掴めことができていますし、新規事業におけるサービスデザインに関しては、最初からリードメンバーとして、与件整理やイシューの特定、タスク設計を担ってくれていますね。
大穂さんを受け入れて思ったのは、出向期間が1年しかないからこそ、その間で学べることは全部学んでいくという気概をものすごく感じたことです。
大穂:NTT東日本の代表として来ていて、さらに新規事業開発を学ぶのにこれ以上ない贅沢な環境を与えられているからには、「100%のことだけやっていてはいけない」と考えていました。
どうせやるのであれば、150%を目指していく。
ロールにあまり縛られず、自分が興味・関心のあるものは全部やる。
このような前のめり思考は、Sun*に入る前から大事にしていました。
井上:大穂さんは、NTT東日本から出向してきているわけですが、Sun*のメンバーは誰ひとりとして特別視せずに、フラットに接しながら一緒に仕事をしていました。
だからこそ、入社後のキャッチアップも最低限の期間で終えて、すぐに実際のプロジェクトに関わることができたのではと思っています。
さらに、プロジェクトのクライアントワーク以外にも、自ら率先してNTTとの仕事を作るなど、地に足つけて色々な業務に取り組み、新しい道を切り拓いていくのは、まさにBizDevの動き方を体現しているなと。
そこは大穂さんならではの光る才能だと捉えています。
ビジネスデザインをしていくのは、あくまで机上の話とも言えるわけです。
でも大穂さんはそこに留まらずに、事業案のサービス協業先としてNTT東日本のグループ会社を繋ぐなど、新たなビジネス機会や協業可能性を創出するところまで動いていたんですよ。
こうした大穂さんの活躍は、既存のSun*のBDメンバーも大きな刺激になっていることでしょう。
予防医学研究者の石川善樹さんも「勝手な責任感とかわいげ」が、いい仕事をする人の素養だと言っていますが、「頼んでもいないのに、どんどん前に進めていく」ことを厭わない大穂さんは、間違いなくその素養を持ち合わせていると思います。
Sun*でのハングリー精神を忘れずに、帰任後も「価値創造に夢中になれる世界」を作っていく
── 最後に、NTT東日本帰任後にやりたいことや目標について抱負をお聞かせください。
大穂:NTT東日本に戻ってやりたいことは3つあります。
1つは、Sun*で新規事業開発のノウハウを学べたので、今後は自分で事業テーマを設定し、新規事業の立ち上げに挑戦することです。
また、Sun*で学んだ知見やノウハウを、NTT東日本の社内にも展開して、「価値創造に夢中になれる世界を作っていける」人材を大企業の中からも輩出していければと考えています。
最後は、出向という形で NTT東日本とSun*の間で関係性が持てたので、今後は両社で協力できるところは共創していき、価値創造を作っていく取り組みも視野に入れています。
中長期的なビジネスの提案や協業を視野に入れながら、私が少しでも“カタチ”を残し、レールを敷いていければと考えています。
Sun*で新規事業開発を経験するという、貴重な機会は二度とないと感じるくらい、Sun*の環境にすごく感謝していて。
学べることは、全部持ち帰りたいという気持ちがあるからこそ、ハングリー精神を持ってやってこれたので、今後も変わらず精進していきたいと思います。
井上:価値創造に夢中になれる世界を作っていくためには、大企業の中にいる優秀な人材が必要不可欠だと考えています。
大穂さんが主導して、新規事業を立ち上げていくと、それがNTT東日本の社内外にも広く波及していき、ひいては日本が元気になっていくことでしょう。
これからも大穂さんの活躍を応援したいですし、Sun*として協力できることがあれば、また一緒に仕事していきたいですね。