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SNSの世界とは違う本物のファンクラブを目指す『ALLLY』の取り組みと付加価値

デジタル・クリエイティブスタジオとして、ビジネス・テック・クリエイティブの三位一体で、新規事業の立ち上げやプロダクト開発を支援するSun*。

2021年にはプロアーティスト向けのファンコミュニティシステム「ALLLY」(旧 MOOOS)をリリースしました。

画一性のあるプラットフォームではなく、アーティストごとにカスタマイズ可能な基盤システムを提供し、さらにはマネジメント会社との共同運営による独自スキームを確立。

新しいファンクラブの“あり方”や“カタチ”を追求しながら、ビジネスを展開しています。

今回は、ALLLYの事業に携わる株式会社Sun Asteriskの事業部長大竹浩介さんと長井龍一さんに、ALLLYを立ち上げた背景や事業が目指す方向性や未来について、話を聞きました。


最高に熱量の高い場所で、最高のファンクラブ体験を創りたかった

── まずはファンコミュニティシステム「ALLLY」のサービス内容について教えてください。

大竹:ALLLYは、プロアーティスト向けのハイエンドなファンコミュニティサービスです。

特徴的な点は、ひとつのアプリやWebサービスに複数のアーティストが混在するプラットフォームではなくSun*が開発したシステムをアーティストごとにカスタマイズし、OEMで提供していく点です。

アーティストが所属するマネジメント会社と協業し、システムの管理・運用を行いながら、より良いファンコミュニティへとアップデートしていくビジネスモデルとなっています。

他社の場合は、アーティストの知名度やファン数の規模にかかわらず、システムを提供していますが、弊社の場合は高品質なサービスに拘って個々のアーティストの意向やファンの意見に耳を傾けながら特別な体験価値を創出するため数千人規模のファンを抱えているプロアーティストを中心にサービス展開しています。

── なぜファンコミュニティシステムの開発をSun*の新規事業として立ち上げたのでしょうか?

大竹:ALLLYを最初にリリースしたのは2021年6月になります。

私がSun*に入社した理由のひとつにSun*の強力な開発力を使って「自社事業を創る」という思いが強くありました。

そこで、今までのキャリアで培ってきた経験や知見を生かし、新規事業として立ち上げたのがALLLYだったのです。

私のキャリアを振り返ると、ライブドアやLINE、MIXIといった事業会社でマッチングサービスに深く関わってきました。

人と人をシステムで繋ぎ、様々な出会いを作っていくという仕事をしていたのですが、長年サービスを掘り下げていくなかでマッチングから溢れる人も多い実情に対してある種の構造的な限界を感じていました。

マッチングサービスにおいて、最終的に目指すゴールは「自身の価値観や存在を承認してもらえるかけがえのない人との出会い」と考え、日々出会いの創出に力を入れていました。しかしながら人と人との物理的なマッチングには年齢、容姿、経済力、環境等、サービスの仕組み以外の様々な要素が前提として立ちはだかり、ユーザーの期待に応えられない場面が多くあったのです。

一方で、推し活文化に目を向けると、容姿や年齢、性別など関係なく、誰もが公平に好きなアーティストを応援することができ、アーティストは楽曲配信やLIVEを通じて多くの人の人生に深く関わっていきます。

Sun*に入社前に働いていた17LIVE(イチナナ)では、新しいライバーという文化を通じて誰もがライバーと交流しながら深まる絆、高い熱量を感じました。

このアプローチならかつてマッチングの世界で果たせなかった思いを果たせるのではないか、ライバーではなく『アーティストとファン』という聖域にこの仕組みを入れたら、強烈に価値観や存在が承認される世界を実現できるのではないか、こうした思いが今の事業を始める原体験になっています。

参加する全ての人にとって最高の居場所であり、健全な承認のある場所になるようシステム設計から運用までワンストップで提供させていただいております。

アーティストと共に丁寧なプロダクト創りを

──Shuta Sueyoshi、煮ル果実、倖田來未、浜崎あゆみ
と複数のファンコミュニティをリリースしてきましたがどのような背景で取り組んでいったのでしょうか?

大竹:事業推進に強い思いを持っていたものの実際にはアーティストあってのことですから、アーティストの意向なしには始まりません。そんな中でエイベックス・マネジメントさんとご縁があり、当時ソロファンクラブを企画していたShuta Sueyoshiさんを紹介していただきプロダクト開発がスタートしました。

着手時には既にアーティストの世界観が明確で、オリジナルのキャラクターもありましたので、ご本人のご意見を伺いながらUIを丁寧に作り込んでいきました。

ヘッダー画像を変えるだけのプラットフォーム型のサービスと異なり、アイコンの一つひとつ、ライブ配信内で使うギフトのデザインまで全て世界観に合わせてオリジナルで制作しました。

── ファンコミュニティシステムの開発では、どのような苦労を経験したのでしょうか?

大竹:通常のファンクラブは掲載されたブログや写真、動画を閲覧するといった一方通行的なコンテンツが主流ですがALLLYはアーティストと交流できるライブ配信やファン同士のチャット掲示板、アーティストとの1on1のミーティングなど双方向のコンテンツが主流です。

システム設計にも運用にも様々なノウハウが必要になるため技術選定やシステムコンディションのチューニングでは様々な試行錯誤がありました。

レベニューシェアモデルだからこそファンクラブ運営が「自分ゴト化」できる

── ALLLYの実際の取り組みやユースケースについて教えてください。

大竹:ALLLYでは主に以下の取り組みを行っています。

  1. 商品企画・機能追加

  2. ファンクラブのブース運用

まず①についてですが、スクラッチくじや推し活グッズを販売するECサイトの商品を企画しています。

アーティストと相談しながらグッズを制作していくわけですが、コミュニティ内でファンの方にアンケートを取ったり、アーティストがライブ配信でデザインをファンと考えたりと、双方向なやりとりを意識した商品企画ができるように意識していますね。

機能追加に関しては、先ほどもお伝えしたチャット機能やタイムライン機能などに加えて、「アーティストのコメントだけ拾いたい」といった細かいニーズも拾い、定期的に機能改善ができる体制を整えています。

②のブース運用は、アーティストのツアーが始まると、我々もそこに帯同してライブ会場にブースを出展します。

主にファンコミュニティアプリのプロモーションを目的としていますが、最も大事なのは「ファンの顔が見える」ことなんですよ。

とかくITサービスだと、ユーザーの顔が見えづらいわけですが、リアルでアプリを使っていただいているユーザーと接することができるのは、非常に大きいことだと思っています。

長井:レベニューシェアモデルだからこそ、単にシステムを提供するだけではなく、ユーザー体験をアップデートしていくためにワンチームで運用していく。

各アーティストごとに事業計画を立て、PL/BSやキャッシュフローを追っていくのは、まさに稀有な取り組みだと感じていますね。

そこまでの責任を負いながら、事業にコミットしている状況なので、各アーティストのファンクラブ運営も「自分ゴト化」することができ、良い成果につながっているのではないでしょうか。

ファンコミュニティの設計で大事にする「共有・共創・共感」

── ALLLYの強みや導入後の反響・手応えについて教えてください。

大竹:アーティストの活動とファンクラブの両輪で、LTVが維持されるわけですが、後者のファンクラブの設計で重要視しているのは、「共有・共創・共感」です。

この3つのサイクルをアプリの中で連動的に回していき、ファンの熱量を溜め込み続けることが大事で、タイムラインでの情報発信、アーティストによるライブ配信、チャットコミュニティでのファン同士の交流など、ファンコミュニティ全体の熱量を安定的に保つために、独立機能ではなくそれぞれの相関、流動性や継続性を意識するように運営しています。


長井:今までのファンクラブに比べ独自のコンテンツ提供量も多く、日々ファン同士の能動的なコミュニケーションが多くあるため本質的なLTVが醸成されていると感じます。

公演ごとに立てられているチャットのエリア別スレッドには地域毎のファンが集まり参戦情報を共有したり、初めて来る他の地域の方に地元の美味しい情報を紹介したりされている姿から活発な共感の手応えを感じますね。

大竹:ファンの熱量を溜めていくために、ファンクラブの企画や運用を継続して行っていけば、付加価値やLTVも上がる。

チケット先行予約だけのためにファンクラブに入るのではなく、アーティストが毎日日記を更新してくれたり、チャットに降臨したり。

ファンと一緒にグッズを制作したりと、これまでのファンクラブにはなかった体験価値を、ALLLYが提供できているのは非常に大きいと思っています。

長井:よくユーザーに言われるのは「こんなにアーティストとファンの距離が近いアプリは他にない」ということです。

また、チャットコミュニティでファン同士の横の繋がりもできるので、「アプリを通して推し活友達ができた」という声もいただいています。

ファンが安心して楽しめる“オアシス”のようなコミュニティを目指す

── ファンクラブの熱量を高め、その状態を維持するための運用ナレッジはどのようなものがありますか?

大竹:アーティストやファンの「想い」はファンクラブによって異なりますが、システムを提供する側としては両方のニーズを捉え、やりたいことを咀嚼しながら、具現化させていきました。

チャットコミュニティでのトラブルシューティングや、コンサートでのバックアップ体制など、アーティスト活動全般を支えるような運用ナレッジをマネジメントサイドと相談しながら体系的に培って、それをシステムに反映させてきたわけです。

Sun*は国内外含め、1500名以上のエンジニアやクリエイターを抱えており、常に最新の技術を取り入れていけるサステナブルな環境を持っています。

こうした万全なバックアップ体制を強みにして、長く続いていくアーティスト活動を支えられたらと思っています。

理想として創りたいのは、ファンの方が安心して楽しめる“オアシス”のようなコミュニティなんですよ。

熱量を維持するために、共創の観点からアプリ内で販売されるグッズをライブ配信を通じてファンと一緒に考えたり、公演直前のバックステージからファンと
円陣を組む姿を配信したり、ファンを巻き込んだ企画をコンテンツとして豊富に
盛り込んでいます。

長井:ALLLYの強みは「低い運用コストでファンコミュニティ醸成ができる」ことです。

これまで数千人規模のファンを持つアーティストのファンクラブでは、チャットでの“荒らし”やファン同士の喧嘩など、オープンなコミュニティで起きうるリスクを懸念して、チャットの運営には積極的に取り組んできませんでした。

クローズドなファンクラブと異なるSNSで見られる様々な攻撃的リアクションに関してはプロモーションとしての優位性と隣り合わせのリスクがさらに大きくなっています。

その一方、ALLLYでは独自に培ったコミュニティ運用や体験設計によって、チャットコミュニティの活性化させ、それを起点にしたマーケティングを実践できるほか、言論の抑制ではなく根気よくマナーを浸透させてトラブルも最小限に抑えられるのが強みになっています。

大竹:ファンクラブの運営では珍しいコミュニティマネージャーを配置し、未然にユーザー同士のトラブルを防ぐ試みにもチャレンジしています。

何か意見の相違があった際には、建設的な方向に促していき、対立構造にならないように努めるのがコミュニティマネージャーの役割です。

長井:「アーティスト自身も同じコミュニティにいる」という意識づけをし、ファンが自ら治安を守るという風潮ができやすいように心がけていますね。

Sun*とマネジメント事務所側では、治安の維持や健全な文化づくりの施策を一緒に練りながら、コミュニティの運営を行っています。

── 最後にALLLYの今後の展望についてお聞かせください。

長井:中長期的には、ブロックチェーンやAIといった技術を生かして、誰もが推し活に参加できるエコシステムを作っていければと考えています。

アーティストとファンと運営が相互に関わり、より良いコミュニティへと発展していく“新しい推し活経済圏”の創出を目指していきたいですね。

大竹:ファンの推し活を可視化することで、今よりもさらに強固なコミュニティになっていく。

そのような目標を見据え、これからも事業を推進していきたいと思います。


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