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グループ会社のGROOVE GEARが「Sun terras」へ社名変更。リブランディングで大事にした“らしさ”や“ブランド理解”

2018年にSun*へグループインしたGROOVE GEAR(グルーヴ・ギア)は、2024年2月に社名をSun terras(サンテラス)へと変更し、それに合わせてコーポレートロゴやブランドデザインなどのリブランディングを敢行しました。

新たにSun terrasとして船出を切った背景や、リブランディングに込めた思いについて、プロジェクトメンバーの鈴木 篤史(PM/Director)、上田淳子(Lead Designer)、山本 響(Designer)に話を聞きました。


アイデンティティの確立とグループシナジー強化を目指したリブランディング

── 2024年2月にGROOVE GEARからSun terrasへと社名変更し、リブランディングすることになった背景について教えてください。

鈴木:GROOVE GEARは2018年にSunグループに加わり、既存事業の運営を続けてきました。しかし、Sun*グループとの連携をこれまで以上に強化し、より強固なアイデンティティを確立するためにリブランディングのプロジェクトが立ち上がりました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)には、デジタイゼーションとデジタライゼーションの両方のアプローチが必要です。現場では「GROOVE GEARはSun*の子会社です」と説明していましたが、具体的な連携が見えづらく、クライアントに違和感を与えていました。

両社が事業としてより緊密に連携していくためには、「Sun」を社名に含めた方がブランドコミュニケーションがスムーズになる。

そう考えたことも、Sun terrasというネーミングに決めた経緯になっています。

ブランドパーソナリティやブランドコアの言語化に加えて「なりたい未来を描くこと」が大切

── 本取り組みにおける3人の役割や8ヶ月に渡るプロジェクトにおけるブランディングのプロセスについてお聞かせください。

鈴木:私はプロジェクト全体のPMとディレクションを担っていました。上田さんはリードデザイナーとして、クリエイティブに対する最終的なクオリティの担保をする役割を担当し、山本さんは実際に手を動かすデザイナーの立ち位置で、プロジェクトに関わっていました。

また、ブランディングのプロセスについては、まず最初にリサーチを行い、そこで得たインプットをもとに共創型でワークショップを実施しながらアイディエーションやブランドの核となる部分を策定していきます。

最も大事なブランドコンセプトを言語化し、クライアントの合意形成を経て、視覚的ななビジュアル・アイデンティティを作っていく流れになります。

── ワークショップでは具体的にどういうことを実施したのでしょうか?

鈴木:ワークショップではブランドパーソナリティやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の元となるブランドコアの部分と、それに基づいたネーミングや、ブランドのロードマップなどを決めていきました。

1回目のワークショップでは会社の強みや弱み、らしさのアイデア出しを行い、そこからSun Terrasの持つ価値についてもみんなで考え、意見を出し合っていきました。

2回目は、前回の結果を踏まえつつ、市場から求められるものやSun*とのシナジーの両方の観点から方向性を決めていくことに着手しました。

1回目と2回目でアウトプットされた内容を、プロジェクトメンバーがまとめて、ブランドコアという形で言語化し、こうして決まったコンセプトをもとに、新しいネーミングを決めていきました。

ワークショップで心がけていたのは、ブランドの持つ価値を言葉として定義していくのに加え、「なりたい未来を一度描いてみること」でした。

そうすることで、ブランドとしてのあり方や目指す方向性がより具体性を持って示されるわけです。


上田:ワークショップを通じて経営陣と現場のメンバーと目線合わせをしていくなかで、「こういう見方や意見があるんだ」というのを確認し、お互いが認め合えたからこそ、双方の考えるリブランディングの目的の“乖離”があまり生まれずに済んだと思っています。

山本:またワークショップは、全社員からのアンケートや一部メンバーへのインタビューを「インプット」として設計しているので、そこに対して、経営陣や現場のメンバーが違和感をもつというのもあまりなかったですね。

アンケートやインタビューを通して、社員の皆が感じていることをインプットとしている為、ワークショップ全体では「もっとこうしていきたい」というみんなの思いが更に発散されたのではと考えています。

鈴木:会社のブランディングを決めていくというのはある種、抽象的なことを決めていくわけで、そういう思考が得意な人とそうでない人がいると思っていまして。

それでも、GROOVE GEARの社員の皆さんは「自分たちはどうあるべきか」だったり「自分たちは何をしたいのか」といった本質の部分の話を普段からしていたので、ワークショップでメンバー同士が話し合うときも意見がたくさん出ていました。

また、みんなから上がってくる意見についても、しっかりと筋の通ったものが多かったなと感じています。

ワークショップごとに出た意見を、プロジェクトメンバーがまとめたり表現をブラッシュアップし、次のワークショップの最初にサマリという形で提示するのですが、そこで社員から違和感の意見が出ることは少なかった印象でしたね。

グループシナジーを考える際に重要な「価値観」や「共通言語」の深掘り

── プロジェクトを進めていく上で苦労したことはありましたか?

山本:難しかったのは、みんなからの意見で可視化された会社の「強み」や「らしさ」の中からどれを選んでいけばいいのかということでした。

「強み」で言えば、キャリアの選択肢が広い、顧客ファーストで寄り添う姿勢がある、営業とエンジニアにおけるコミュニケーションとフォローが手厚いなど、いくつかの候補があったのですが、「Sun*のブランドや事業とよりシナジーを持たせていく」という大きな判断軸があったので、それをもとに選んでいきましたね。

鈴木:Sun*の持つ事業・アセットとのシナジーや連携を考えていく際に、同じグループとして共有する「価値観」や「共通言語」についてもワークショップの中で深掘っていきましたが、ワークショップの設計は結構悩みましたね。

それこそ、会社全体の戦略や経営判断に踏み込むような内容なので、参加者は経営視点というような高い視座から考えていくことが求められていました。そのため、抽象度と具体度のバランスを保つのが難しかったように感じます。

山本:最終的には、「デジタライゼーション領域」をSun*が担い、「デジタイゼーション領域」をSun terrasが担うというシナジーの組み方をすれば、Sun*グループ全体でDXを包括的に推進できるし、ビジョンにもマッチするのでいいのではという意見でまとまりました。

そのほか、Sun*が新規開発を行い、その後の体制構築や保守運用をSun terrasができるようになっていくというのを中長期的なグループ連携の目標に置いています。

Sun terrasにはチーム開発の知見や、クライアント先での保守運用から蓄積されたSES事業のノウハウなどを持っているので、そうした座組が作れればすごく親和性が高いと考えているからです。

Sun terrasらしさを表現するために独自のロゴを開発

── メンバーから上がってきた意見やアイディアをもとに、どのようなクリエイティブプロセスでプロジェクトを進行していったのでしょうか?

鈴木:ネーミングアイディエーションは1回で終わる予定でした。ただ、ブランドコンセプトは別として、表現としてのコンセプトはどうあるべきかというのがワークショップ内で定まりきらず、2回目では、表現としてのコンセプトにもう少しフォーカスして、ネーミングアイディエーションを行いました。

Sun*と関連する大地や土壌、DXの地盤をGROOVE GEARが担っていくことや、教育の意味合いが含まれる成長や進歩といった表現に絞り込んで、ワークショップを実施したのです。

山本:ひとつの案として社名の頭にSun*を付けるというのは決まっていましたが、それに固執せずに色々なネーミングの方向性を探っていくためにリサーチを行いました。

そしてワークショップではアイデアを発散し、Sun*がネーミングに入るもの
・そうでないものも含めて、いくつか候補案をピックアップしたんです。

その中から最終的には、Sun*を社名に付けることで、「Sun*との連携やシナジーを表現できる」という目的を達成することができるという結論にいたりSun terrasという名前が選ばれることになりました。

鈴木:その一方、Sun*を社名に付けることで「グループ会社という意味合いがより強くなってしまい、GROOVE GEARとしての独立性が薄まってしまうのでは」という抵抗感や懸念もありました。

そうしたなかで、GROOVE GEARの内部の社員にヒアリングを重ねていくうちに、Sun*のグループ会社であることに対して想像よりポジティブな意見や想いを持っていることがわかったんです。

社員の声があったからこそ、Sun*を社名に付けることに納得感を抱くようになりました。

山本:Sun terrasに決まってから、クリエイティブを作っていく作業に入ったわけですが、アプローチとしては「Sun*のロゴやトンマナを踏襲するパターン」と「Sun terrasの独自性を出すためにSun*と相性の良いフォントを使うパターン」、「完全オリジナルでSun terrasのフォントを作るパターン」の3種類がありました。

その中から、Sun terrasらしさを訴求していきたいという思いから、自分たちで独自のフォントを作り、それをロゴにしていく方針に決まりました。

上田:「土壌を照らしていく」ことや、「地盤を整えていく」という意味がterrasには込められているので、そのロゴのコンセプトに従って、アニメーションやデザインに落とし込んでいきました。

制作途中で迷ったときも、ロゴのコンセプトに立ち返って、軸からぶれないように意識していましたね。

営業資料やホームページなどに統一感を持たせ、ブランドとしての一貫性が伝わるようにクリエイティブ制作では心がけていました。

鈴木:前段のワークショップを通じて、ブランドのコアな部分を定義していたからこそ、ブランド単体としてのオリジナリティを出す部分とグループとしての統一感を持たせる部分をしっかりと分けることができたと思っています。

社内お披露目会ではブランド浸透を促す設計を重視

── GROOVE GEARのメンバーに新しい社名をお披露目したときの反響はいかがでしたか?

山本:リブランディングプロジェクトに関わるメンバーだけで「ブランドが変わります」というものにはしたくないというのが前提にありました。

やはり会社全体の人たちがこれから育てていくものになるので、しっかりと新しいブランドを説明して、それを理解してもらう機会を作ることが重要だと考えていました。

そうした背景から、社内でセレモニー(お披露目会)を開き、リブランディングの経緯やブランドコンセプトを伝えていったほか、今後の事業展開についても社長の大西から発表する場を設けたのです。

また、ブランドが変わるだけではなく、ブランドと事業が連携しているというのを会社全体に浸透させるために、ブランド理解を促すワークショップもセレモニー内で実施しました。

会の終了後には、Sun terrasのロゴに込められた「地盤を固め、新しく成長していく」というのを実際に感じてもらうために、植物の栽培キットをノベルティとして配布し、それを自宅で使ってもらうことで、今後のブランドを考えてもらう設計にしました。

このような取り組みのおかげで、Sun terrasというネーミングに関しては社内から高評価をいただき、非常に良い反響が得られたのではと思っています。

リブランディングプロジェクトで学んだ関係者間の「合意形成」と「納得感の醸成」

── リブランディングを主導してみて思った感想や、今後同じようなプロジェクトに関わる場合に、今回の経験をどのように活かしていくのかをお聞きしたいです。

山本:Sun terrasへの社名変更に伴うブランディングをゼロから考え、具現化していくのは初めての経験でした。

自分のような若手のデザイナーだと、どうしてもブランディングで重要な要素はビジュアルだけだと考えがちですが、それ以外にも言葉の表現や事業とのシナジーなど、ビジュアルを作るための、ブランドのコアの部分に関する幅広いアウトプットが必要になります。

そういう意味でも、ブランドをトータルでデザインしていく際のアウトプットにおける質や量を知ることができたのは、自分にとって大きな学びになったと思っています。

また、今回はグループ会社だったこともあり、新しいブランドを作って、それをインナー向けに浸透させていくところまで一緒に関わらせてもらえたのは、あらためてブランドを会社全体に浸透させていく重要性に気づくことができました。

上田:今回のリブランディングプロジェクトは、グループ会社という近い立場のクライアントだったために意見がしやすく、今後の経営方針も詳細に聞くことができたので、柔軟に物事を進められました。

ただ、これが外部のクライアントになるとそうはいかないので、本音の部分を引き出せるようなコミュニケーションに時間をかけて、良好な関係性を築けるように意識したいと思います。

また、「独断でやっていくのではなく、社内の人に納得してもらうのをプロセスに入れたい」と社長の大西が言っていたように、他のプロジェクトでも関係者全員が納得感を持って進めていくのが大事になります。

そのことを意識して、他のブランディング案件に携わっていきたいですね。

鈴木:今回はゼロからリブランディングに関わることができたのは、本当に貴重な経験だったと感じています。

グループ会社だからこそ、腹を割って話し合い、ブランディングの視点から事業のあり方まで考えていくことができたのはすごく良かったですね。

他の案件だと、なかなか予算や納期の関係でここまで広く関わることはできないと思うので、今回のリブランディングを通して得た学びは自分の成長にもつながりました。

今回の経験をきっかけに、ビジネスや経営、組織についても勉強していくことがデザイナーにとって大事だと再認識することができ、今後関わるプロジェクトでもビジネス目線を取り入れたデザインをすることを心がけていきたいです。


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