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作品が生まれる瞬間

 27歳(2003年)の時に、今はもうないJuna21(Nikon)の月間の審査に通過して初めて個展を開かせてもらった。その後10年以上、新しい作品を発表できる場所を探し、挑戦し続けてようやく40歳(2015年)で、二度目の個展をエプサイト(エプソン )で開催することができた。

 長い闇の時代、よく辞めなかったなぁ、辞めなくてよかったなぁと本当に思う。エプソンは個展の前年には開催が決まっていたので、計算するとNikonからちょうど干支が一周したことになるのか・・・。
 
 noteを始めたのが僕の45歳の誕生日。27歳からこの18年間で個展という形で発表できた作品は4つ、写真集は3冊。まぁオリンピックくらいな間隔だろうか。

 プロの人気ミュージシャンが、年間一枚のアルバムを出すことを考えると、僕の創作スピードはものすごく遅い。いくつかのテーマを同時進行で進める器用さも、発想する頭の良さもないからね。それにくわえて一つの作品が一旦終わると、しばらく写真が撮れなくなる・・・。

 今はまさにその時。The 凪。

 タイトルにも書いた「作品が生まれる瞬間」を待っているのは、何を隠そうこの僕なんだ。

 そんなわけで、今日は最新作「nana」の始まりについて振り返り、少し書いておこう。

 「nana」はこの一枚の写真から始まった。この写真を撮影した時には、この後約3年にわたる制作期間に入ることは全く考えていなかったけれど、なぜかとても惹かれる一枚だった。この一枚を眺めていろいろなことを考えた。

 この写真に惹かれる理由は、「被写体に対する興味」なのか、「雨に濡れた地面に光が反射した夜の風景」なのか、「この日の楽しかった思い出の所為」なのか、他にもいろいろ。

 ちょうどこの頃、前作からの凪の時期を超えたあたりだったのかもしれない。漠然と今までの自分を振り返りたいと思っていた僕は、学生時代に立ち返って地元の写真でも撮ろうかなんて考えていた。でも数十年の時を経て、振り返りたい地元の風景は姿を変え、存在自体無くなっているものも多かった。・・・喪失感。

 こんな思いが僕の中にあった頃とこの写真を眺めていたのが同じ頃だった。

 僕がこの写真に惹かれた理由、それが「僕の中の原風景」だということにたどり着いた時に、「そうか、僕の撮りたいものは、目の前にあるものではなくて、記憶の中の風景なんだ。」と、ふっと腑におちる感覚があった。

 「nana」はこの瞬間に生まれたんだと思う。

 まぁ長々と書いてはみたものの、簡単にいうと作品は写真を撮ることで始まる。そしてその「写真を通した自分との対話」の中から、作品は成長する。
 当たり前だけど、奥が深い。

 この記事を読んでくれている人のためというより、むしろ自分にむけて。 次の作品に向かうために、忘れちゃいけないこととして。

 

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