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ベンチャーが大手に負けないための「人材」を集めるカルチャー経営とは?

こんにちは、宗像です。今回は、個人的に注目しているカルチャー経営について話したいと思う。

■社長にはビジョンが無い!と言われて気絶しそうになる

2011年5月にイノーバを設立。起業当初、社員は私一人という状態だったが、社員も少しずつ集まり、苦労はありながらも成長を続けることができた。その頃は、”自分たちが何をやりたいのか”という理念の共有も難しいとは感じず、それこそ週に何回かの飲み会でできていた。

しかし社員数も30名を超え、企業の規模が大きくなったいったあたりから目標や理念の共有が難しくなっていった。既存の社員は“昔より自分の意見が通りにくくなった”と感じ、新規の社員は“イノーバのビジョンや戦略が分かりにくい”と感じるようになってしまったのだ。

当たり前だがこれまでどうやったらよりよいサービスを提供できるか、会社が成長できるかを第一に考えてきていた私が、目の前の社員に「社長にはビジョンがない」と言われ言葉通り気絶しそうになった。

実際に気絶するわけにはいかないので、冷静に考えた結果、これには2つの大きな原因があると分析した。

まず、社長である私が以前よりSNSやブログなどで、自らの考えなどの発信をする機会が減ってしまったこと。次に、日々の業務に追われ、正直、社内のチームビルディングなどにあまり注力することができていなかったこと。

会社の規模の変化に合わせて、ビジョンを浸透させる方法や、チームとして一体感を持ってもらえるような工夫が必要だと深く感じた。

■離職率が下がらない!自分は社長失格か?

イノーバを立ち上げてから約5年。多くのベンチャー企業と同じように、離職率の問題に悩まされていた。多くのベンチャー企業にとって、優秀な人材を採用し会社で活躍してもらうことは非常に重要だ。しかし一方でベンチャー企業の離職率が高いのも事実。周囲の声を聞いても、この問題に頭を悩ませている経営者は本当に多い。

一昔前に比べて、ベンチャー企業への就職は、以前より珍しくない。“短期間で成長経験を積みたい”などの理由からベンチャーへ来る人が増えている一方、独立志向の強い人が集まりやすい為、離職も起こりやすい。また企業を知ってから入社までのプロセスが非常に短いケースも多く、働き出してからイメージとのギャップで離職してしまう人もいる。

更に見逃せないポイントが、世代間における意識の差。いわゆるデジタルネイティブと呼ばれる、1980年代後半の世代とそれ以前の世代では、考え方に明確な違いがあると感じている。

デジタルネイティブ世代の特徴として、仕事に対してはお金よりも働く意義を重視し、自己成長を追求する。年金不安などもあって、自分たちはサバイバルな状況に晒されているという意識が強くある。その為、長期間同じ場所に留まっていると自分は成長していないのではないか、という焦りが出てきてしまうようだ。よって、企業側は彼らに、常に成長の場を提供し続けなくてはいけない。

■カルチャー経営に辿り着く

どうやったらこれらの課題を解決出来るだろう?まずは自分経験を振り返ってみようと思った。大学卒業後、富士通に入社し約3年が過ぎた頃、私は社会人としてある悩みにぶつかっていた。自分は何の為にこの仕事をしているのだろう。自分は本当にこのままでいいのだろうか。仕事の内容は面白いと感じていたが、自分に自信が持てなかった。

そんな時、本屋で偶然出会った一冊の本出会った。

その本は、「日本コンピュータの黎明―富士通・池田敏雄の生と死」という本だ。その本には、戦後アメリカの統治下にあった日本において、国をあげて日本企業でコンピューターを作れる会社を作ろう、という理念から誕生したのが、富士通であるということ、池田敏雄さんという天才エンジニアが「日本のコンピューターの父」と呼ばれるほど、素晴らしい功績を数多く残した人物だということが書かれていた。

「富士通ってこんなにすごい会社だったのか?新人研修でこんなこと教えてもらってないぞ!」改めて富士通ではたくことに誇りを感じることができたのだ。

会社のビジョンがどのような思いで作られたのか、これまで先人達の努力や苦労の上に、自分が働いている会社が成り立っているのだという事を知った私は、改めて今自分がいる場所や仕事に誇りを感じられた。その時、私の仕事に対する意識は大きく変わった。この体験がまさに、カルチャー経営の基本だったのだ。

自分の会社はどのようにして始まり、現在に至るまでどんな苦労があったのだろう?そして、これから何をやっていこうとしているのだろう?

これらを明確に伝えることで、社員全員が同じビジョン共有出来る。また、かつての私のようにその会社で働いている意義や、誇りを感じてもらえるだろう。そう、今は本からではなく、直接自分自身から社員へビジョンを伝え、カルチャーを作れるのだ。

更にベンチャー企業においては、成長フェーズが変わるタイミングも、原点回帰する良いタイミングだ。ゼロから1を創り出すフェーズから、1を10に成長させるフェーズへ。この過渡期にもう一度、原点に立ち返ることで、チームとしてより大きな成長を目指していけると、考えている。

■今、海外で注目のカルチャー経営

カルチャー経営の代表とも言えるのが、アメリカ・ザッポス社。ザッポス社はオンラインで靴や衣料品の販売を行う、アメリカ大手企業の一つだ。365日返品可能などの手厚い顧客サービスと共に、社員を非常に大切にすることでも有名。

そんなザッポスが企業としてのコアバリューやカルチャーを社員全員で共有するために使っているのがカルチャーブック。例えば2014年度版は300ページ近くあるかなり長いものだが、膨大な労力と費用を費やしてでも、カルチャー共有を重視するという、ザッポスの理念が表れている。

そして、イノーバも現在新しい取り組みを始めている。

今まで、採用後の研修はイノーバのビジネスは何か、どういう戦略かという実務に近い内容を伝える事が中心だった。しかし、これらの内容を教えることはいつでもできる。

それよりも最初に、

・なぜイノーバを立ち上げたのか

・今までにどういう苦労があったのか

というような、起業のストーリーを積極的に話して共有する内容に変更した。

“今まで多くの苦難があったけれど、なんとか続けられてきた。それは、自分たちのビジョンに対する強い想いがあったからだ。これから一緒にもっと成長していきたい”ということを伝えると、とても共感を持ってもらうことができたのだ。

もしあまりカルチャー経営を行っていない企業があれば、人材を採用した後に、会社の起業ストーリーやビジョンをしっかり時間をとって伝えること。これはお勧めしたい方法の一つである。

■ベンチャー企業の源泉は「人材」

ブランドや資金力も大企業には勝てないベンチャー企業にとって、競争の源泉である「人材」は非常に重要だ。いかに優秀な人材を集め、育成し、留まってもらうかに企業としての成長がかかっている。だからこそ、会社というチームを一つにまとめ、同じ目標に向かって成長を続ける過程において、カルチャー経営は欠かせないと私は考えている。

あなたの会社の原点は何だろうか?そして、最も大切にしている理念は何だろうか?

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