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”変化”の時代を生き抜くために”第一人者”になろう

イノベーションはここから生まれる。変化の最前線に飛び込もう

今までかなりの量の本を読んできたが、その中でもこの本はベスト3に入る。タイトルは “The Power of Pull”。日本語でも「プルの哲学」という題名で翻訳されている。本書では、インターネットで日々起きているイノベーションの仕組みを解説し、変化の早いこの時代を生き抜くために、私たちには何が必要なのかを論じている。

■イノベーションはどうやって誕生するのか?

著者はデロイトコンサルティングのディレクターを務め、企業の経営戦略についてコンサルティングなどを行っている、ジョン・ヘーゲルIII世をはじめとする3名だ。彼らはどのようにイノべーションが起きるか、ということを長年研究している。

本書によると、イノベーションや知識創造が起きる場所は、世の中のメインストリームではなく、EDGEと呼ばれる最先端の部分。なぜなら、そこにはまだ誰も注目してない分野に飛び込んだ、第一人者たちが集まっているからだ。

インターネットが私たちにもたらした最大の功績は、人と人が繋がりやすくなったことだ。そしてこの、「繋がり」こそがイノベーションや知識創造を生み出す、成功の秘訣なのである。もし、自分が興味や関心を持っている分野や、まだあまり注目されていないが自分で「コレは伸びる」と確信している領域があれば、まずは、ネット上で自分と同じように注目している他の人物を探してみよう。恐らく簡単に繋がることができるだろう。

世の中で、まだ着手されていない分野に飛び込もうとする人たちは、ごく僅かだ。圧倒的に人数が少ないため、お互いに情報交換などをする内に、その結びつきは強くなっていく。そして、また新たにその分野に注目した人が、インターネットで仲間を見つけ、その輪に加わっていく。すると、このネットワークの中からまだ誰も見たことがないような、革新的なイノベーションが生み出されるのだ。これが下記の図のEDGEで起きている現象だ。

(参考画像:http://chiefmartec.com/2016/02/hacking-marketing-manage-marketing-software-world/)

一方、この図の中でCOREにいる人たち(組織)は、世の中のメインストリームにいて、EDGEの存在にも気づいていない。更に、変わろうともしてないし、変わる必要もないと考えている。しかし、そこでは新しいイノベーションはほぼ生まれない。よって第一人者も出てこないのだ。

例えば、今注目を集めているVR(バーチャル・リアリティ)。今でこそ、メディアなどでその技術が数多く取り上げられるようになったが、今VRの分野で第一人者と呼ばれるような人たちは、注目を集めるずっと前からこの領域に注目し、研究を続けてきた。「ウェアラブルグラスにするのか?」「操作はどうするか?」などの技術的な課題解決や情報発信を、このEDGEで続けた結果、今の第一人者集団が形成されたのだ。

■なぜ、EDGE(端)に飛び込むべきなのか?

僕自身にも同じ経験がある。2009年頃にデジタル・マーケティングの分野に入り、当時在籍していた会社で注目していたのが、SNSを使ったマーケティング。自分たちと同じように、この分野に注目している人に直接会いに行って情報収集・交換をしている内に、新しいアイディアやイノベーションが誕生した。

この仕組みを経験則的や、知識的に理解していると、EDGEに飛び込むことができる。僕は、若い人や転職を考えている人が、キャリアを積む上で、早いうちからこの先端集団に飛び込むのはとても良い選択肢だと思っている。COREにいる企業や、組織でトップを目指すには、ピラミッド型になっている制度を下から順に登っていかなくてはいけない。しかし、EDGEでは年齢や在籍年数に関係なく、少人数でいかに新しいイノベーションを生み出すかが、最も重視される。早くにここに飛び込み、中心で活躍することで、第一人者になることだってできるのだ。

今まではいい大学や会社へ行ったり、資格を取ることで自分のキャリアや専門性が形成さていた。しかし今は、世界中の人と繋がることができる時代。自分が興味のある分野を見つけ、飛び込んで第一人者になることも可能だし、またその経験がキャリアになり得る。むしろ、そのような経験を持っている人材が、求められる時代でもあるのだ。だからこそ、僕はEDGEに飛び込むことを勧めている。

■Pullの理論を活かした、成功の法則とは?

また本書では、Pullの理論を使ってどのように成功を達成していくかについても言及している。

(参考画像:http://www.apriso.com/blog/2013/06/the-power-of-pull-for-manufacturers/)

上記の図では、縦軸が生存の難しさ、横軸が情報や知識の取り方、中心の大きな矢印はPULLの段階を表している。例えば、ある分野について自分が興味を持ち、調べたり、人に会いに行ったりする段階がAccess。ここで築いたコミュニティや人脈によって、更に多くの人や情報が自分の元へ入ってくる段階がAttract。そしてそこから、自分の目標や目指す姿を達成できる段階がAchieveだ。またその過程の中で、個人・組織・活躍のフィールドが相互作用し、段階を進むにつれて拡大していく。

更に、今後は知識の蓄積よりも、新しい知識のフローを重視していくことによって、Achieve段階へ到達できるようになる。もはや、蓄積するだけでは知識や情報は古くなっていってしまい、高いレベルに上がることはできない。新しい知識のフローの中に身を置き、同じく最先端にいる人と横の繋がりを持つことで、その集団全体がAchieveへ押し上げられていくのだ。

僕がコンテンツマーケティングを本質的に良いことだと思っているのも、この理論に通じる要素があるからだ。企業側が有益なコンテンツを発信し、その分野での一流の人や先端を極めたい人同士が結びつく。その中から協働やディスカッションが生まれ、Achieve(達成)段階へ上っていくことが出来るのだ。そしてこの流れは、日本のビジネス全体を高いレベルへ押し上げる力を持っている、と信じている。

恐らく、この図を見ただけでは分かりにくいと思うし、なかなか伝わりにくいかと思う。しかし、僕自身も今のコンテンツマーケティング事業を始めた時など、この理論に当てはまった事例を体感していたし、周りでも同じ事例を見ているので、非常に説得力がある。全てを理解していなくても、本書に出てくる理論や事例を知ることは、今後のビジネスにおいて大きな助けになるだろう。

■EDGEに飛び込み、イノベーションを起こそう

本書の中には、このPullの哲学に基づいた事例が多く出てくる。サーフィンやオンラインゲームなど、一見すると共通項の無さそうな事例だが、そこには「イノベーション」という大きな軸がある。そして、新しいイノベーションは、今もネット上のあらゆる場所で生まれ続けていて、そのスピードは加速する一方だ。もし自分が極めたい分野があるならば、迷わずEDGEに飛び込んでみよう。その中での、人との繋がりが、未来を変えるイノベーションを生み出す。これが僕が本書から得た、成功の秘訣だ。


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