B2Bコンテンツマーケティングの状況(調査レポート)

世界的なコンテンツマーケティングブームの立役者でもあるContent Marketing Instituteが、B2Bコンテンツマーケティングレポート(B2B Content Marketing, Benchmarks, Budgets, and Trends)を発表した。

このレポートは毎年一回発表されているが、コンテンツマーケティング領域でもっとも網羅的な項目で参考になる情報である。(Content Marketing Instituteに限らないけれど、自社が持っているリストに対して調査しているので、サンプルのバイアスが否めないところはあるが、それを割り引いても価値がある情報である)

レポートは47ページもあって読みこなすのが大変だが、以下、僕が興味深いなと思ったポイントをご紹介したい。

1 B2Bコンテンツマーケティングの重要性は増している

B2Bのコンテンツマーケティングの重要性が増していると答えているのは、全体の71%に至っている。

2 マーケターのキャリアにとってコンテンツマーケティングは重要である

自身のキャリアにとって、コンテンツマーケティングに取り組む意義があると考えているのは、全体の85%に至っている。

3 B2Bコンテンツマーケティングに成功している会社の特徴は、戦略、顧客体験、効果測定の3点

以下は、B2Bコンテンツマーケティングでもっとも成果を出している人と、逆に失敗している人の特徴である。(成功した人の回答と、失敗した人の回答を引き算をしている。)

明らかに読み取れるのは、成果を出す上で重要なのは、コンテンツマーケティング戦略を文書化、一貫した顧客体験の提供、コンテンツ効果測定である。

B2B Content Marketing レポートより宗像が作成

また、成功しているグループでは、全マーケティング予算の50%以上をコンテンツマーケティングに投入していると回答している人が、1/3存在するというのが特徴的である。


4 オンラインとオフラインイベントの組み合わせが重要

過去12か月で成果が出たコンテンツを尋ねた質問に関しては、対面イベント、オンラインイベント/ウェビナーの両方が上位に挙がっている。私が読んだ海外のCMOのインタビューでも、大規模なイベントはオンラインを活用し、ローカルなイベントは対面にするという話をしていた。今後は、オンラインとオフラインの両方の組み合わせが重要になっていくと考えるべきだろう。

5 コンテンツの多言語化にも取り組んでいる

約1/3がコンテンツの多言語化に取り組んでおり、さらにその中で、7割は、翻訳のみならず、ローカライズ(現地のビジネス状況に合わせて、作り変える)ことをしていると回答している。

英語圏のグローバル企業は、英語ベースでまずコンテンツを作り、海外拠点ではローカライズしていくなど、グローバルでコンテンツ制作最適化しているケースが非常に多い。コンテンツマーケティングは、実は言語や国境の壁を越えやすい、という点は、日本企業も真似していきたいポイントだ。

6 計測で重要なのはサイトトラフィック、メール・サイトのエンゲージメント

コンテンツマーケティングの成果測定で良く利用されているのは、サイトのトラフィック、メールのエンゲージメント(開封率・クリック率)、ウェブサイトのエンゲージメント指標(読了率・滞在時間)などである。

参考までにサンプルサイズ、業種、役職、企業規模、地理分類などは以下の通り。このレポートに限らず、調査系の資料を見る時には、サンプルバイアスにはよく気を付けた方がいいと思う。

サマリ

どうだろうか?参考になったのではないだろうか?
一般論として、BtoC/BtoBに限らず、日本のデジタルマーケティングは、アメリカから10-15年位は遅れていると思った方がいい。

アメリカは、世界的にも特殊な国で、Amazon/Facebook等のメガベンチャーが乱立しており、次々とベンチャーを買収するので、次々のベンチャーが創業して、新しい技術領域を開拓していく。以下の図にある通り、過去10年強で、マーケティング領域のソフトウェアは1万弱にも達している。

逆に言えば、デジタルマーケティング領域で、アメリカのトレンドを丁寧に追いかけることで、次に取り組むべきテーマが何なのかが見えてくると言える。

大変残念ながら、こうした海外のデジタルマーケティング事情は、日本にほとんど入ってきていない。入ってくるのは、SalesforceやAdobeなどのグローバルなマーケティングソフトウェアの会社がこうしたマーケティングテクノロジーの会社を買収して、日本に投入してくるタイミングになる。

ちなみに、Marketoの米国での創業は2006年、マルケトジャパンの設立は2014年だ。Pardotの米国での創業は2007年、日本でのPardotの販売開始は2017年なのである。日本がデジタルマーケティングが遅れを取る理由の一端がここにあると言えるだろう。

とはいえ、まず、我々、日本人、日本企業としては、進んだ米国の技術や手法をまずいったん、虚心坦懐に学び、そこから、独自なものを生み出すのが重要だと思っている。なぜなら、ユーラシア大陸の東の端にある日本に住む我々は、過去一貫して外国からの文物を輸入にて発展昇華させてきたのだから。


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