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フィルムカメラを使う理由を考えてみた

 フィルムカメラをどうして使用しているのか――最近、ある方に問われました。その答えとして考えたことを記してみたいと思います。

 まず、フィルムカメラには「画質の魅力」があります。当然ながら、デジタルの画とフィルムが創り出す画はかなり違います。それはいわば、油絵で画を描くか、CGで描くか、という違いです。写真とは、光で画を描くことだと考えていますが、その際、何の“画材”で「光の画」を描くか。その選択肢の中にフィルムカメラがあるのだと思います。
 
 撮影のスタンスの違いもあります。
 私は、フィルムカメラは足し算、デジタルカメラは足し算だと考えています。私はフィルムカメラに関しては、ライカM3とエクサクタを使っていますが、この2台はシャッタースピードも、露出も自分で決めなければならない、フルマニュアルのカメラです。必然的に、撮影前に露出やシャッタースピードを考えて、あるいは状況を予想してそれぞれ設定し、被写体を撮ることになります。すなわち、一枚一枚の撮影のため、思考と行為を「足していく」感じになります。その行為はとても楽しく、そして、自己責任の部分が大きくなります。
 デジタルカメラでも撮影を行いますが、その時はOM SYSTEMのOM-1 Mark IIを使っています。最新のカメラですが、どうしてもタイムラグがあるように「感じてしまう」。また、オートフォーカスのカメラのピントは100%、自分自身の目で決めたピントとは言いがたい時がままあります。そのため、茂みの奥の被写体を捉える時など、正直、最終的に自分自身でフォーカルリングを回していることもしばしばです。また、露出やシャッタースピードはカメラに委ねることが多いので、結果的に100%「自己責任」と言えない状況が生まれます。そのためか、自分の折り合いが付いた画を得るためにシャッターの回数は増え、その何百回の中から、良くないものを「引いていく」感じになります。
 そして、先に書いた記事のとおり、デジタルカメラでは何百回もシャッターを切ったのに、心から気に入った写真がないことも。一方で、フィルムカメラでは72枚の写真で、素敵と思える写真が何枚も撮れる時がある。
 もちろん、フィルムカメラにはシャッタースピードやISOなど限界がありますので、デジタルの恩恵にあずかることもしばしです。ただ、「作品」という意味では、少なくとも私にとっては、フィルムカメラの方に作品性を感じているのが正直なところです。
 
 こんなフィルムカメラの捉え方もあります。
 2020年11月に東京・南青山のNadarで開かれた写真展「明日へのおもざし ~就活生100人×一度きりのシャッターで」は、

  • シャッターは一度だけ、の条件で応じてくれた就活生の写真100枚を展示。

  • スナップ写真が難しくなる中、ウェブに載せないことなどを説明し、その場で1枚撮影。

  • その瞬間に真摯に挑もうとフルマニュアルのフィルムカメラを使用。

というものでしたが、これもフィルムカメラの特性を捉え、撮影行為に活かしたものだと考えます。
 フィルムカメラをなぜ使用するのか――その方法論はまだまだありそうです。その答えを追求していくのもまた、楽しいのではないでしょうか。

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