マガジンのカバー画像

短歌 作品

18
つくった短歌の一部です、ときたま思い出したように更新します よかったら感想おしえてね!
運営しているクリエイター

#現代短歌

油そば 【短歌五首連作】

油そば輝きなさい灼熱の中国四千年を背負って 誰だろう待っているのはどうしようみんなが労働してなかったら 油そばの話を続け三年目 春日亭もまあ戦えてるよ  あの夏のまじえげつねー引き笑いひびかせながら歩き続ける 熱狂の油そばバトルいけます、自分やれます魅せてあげます

炎天下 【短歌八首連作】

人のいない路地をぬければ呟きのごとく静かな塔ひとつ建つ 手のひらの花冠のほろほろと涯からほどけゆく炎天下 水切りの鋭い石が駆けぬける とおく とおくとおく とおく へと 膝をつき道を歩いた 題名を失ってから長い童謡 落とし物 玉虫は花咲く姿、またあるときは現るようで 連絡をとらずに死んだ友人の眼差しだけを覚えている たましいがついばまれている音がする急いで腸を守らなければ 誤答ばかりの川のほとりに引き抜いてあでやかな紺碧の背骨を ■ この連作が掲載された10

JOLENTA WYDAWCA 【短歌七首抄】

ずっと手を振る人たちが遠のいて見えなくなってその繰り返し 硝子片ひろってあるく夕まぐれ何度踏み潰されたのだろう 火刑すらねじ伏せる眼だ掴み取るようにあなたも空を見上げて 遠さへと眼の焦点が合ってゆく釦をはめるようだと思う 硝子瓶叩き割る手を叩き割る手を見つめればかがやきのさなか 星月夜 くつがえることばかりだね背中に薄い手が触れている 乾いている指に指輪の真鍮のいのり そろそろ日がしずむころ ■ わたしは拷問をうけたことがなくて、その痛みを想像できない。彼女が

おへそ 【短歌五首連作】

おへそ 海にいて朝焼けを見る ほんとうに朝と私と海だけがある たましいの重さの限り眼をつぶる母のおへそをつらぬくように 些細な声も手放せないねふるさとの位置も確かになってしまうね 会いたいひとがまだ生きている世界にはなるべく器をふやさなければ 朝焼けのなかを歩いて毛があってもおかしくはない手の甲ゆらす □

昼食を忘れる 【短歌七首連作】

昼食を忘れる 流星群ふりまわしている手のひらに危うく息を盗られてしまう 歩きタバコで近づいてくるお兄さんの完全版の死がありました 丸腰でペルセウス座にも勝てます、いまのわたしの体調ならね 昼食を忘れることを信じられない気持ちを恥じつつあなたと話す 口角からひかりあふれている人よ 真夏のこけらおとしはすぐそこ 久しぶりに風に吹かれて思い出す聴いてた曲の大きなサビを 朝五時の夏の明るさコンビニの前に男女がまだ座ってる □ この連作は歌会ピオーネのフリーペーパー『

反芻 【短歌五首連作】

『反芻』 せやねんなの扱い方を正された動物園の記憶まぶしく おそらく罠とおもうのだけどとてもとても野薔薇のような横顔をくれる 三月は風が生まれてくるために編み込みのある揺りかごの形 駅前に大きな噴水が有ったから瞳をうしなわなかったそうだ ためらいなく真っ直ぐと立つ牛のような動物がいる 反芻燃える

相槌 【短歌五首連作】

『相槌』武田ひか 信号がかわるまで待つ対岸の花になるまで手を振ろうかな 海沿いに伸びている道あるきつつ瓦礫のごとく冷える指先 冴えていく感じがあって 図書館の生まれる様を誰も知らない 蟹鍋の祭りをひらく日取りだけ決まって道は帰路へと変わる 君の打つひどくあかるい相槌に火傷のような部分があって

生菓子 【短歌十五首連作】

私の生家には仏壇のすこし見えにくい位置に、エコー写真が置かれている。それに気づいたのは、仏壇を覗けるくらいに背が伸びたころだった。 ■ 『生菓子』 日向にも井戸にもやがて配られて君へしずかに降る変声期 一九九五年 心臓の台座のごとく生菓子は座す ホールケーキを生菓子とよぶ母親のもとへ生まれてしまって真夏 つるつるの部分にふれる 兄さんの年齢の数だけ母は火を 文鳥に骨格がある寂しさよ 花垣をつらぬく滑り台 お祝いをのべれば長くなりそうにゆっくりと時間はとろけだす

晩鐘 【短歌連作十首】

葉書の光 【短歌八首連作】

『葉書の光』 あ これはたぶん秋やなぁ 濡れている稲の香りが綴じられていて 絵画のある場所にめがけて悪気なくお前もお前も産まれてしまう バイオリンの絶叫がまた挟まった なにか降りそうに夕暮れの中 不確かとつぶやく、横目にグッピー、ふたしか、声はまたぼやけつつ 一年に一回くらいは溜まりっぱなしの隅の埃に触れ、確かめる ふるさとに無い存在は際立って 濃い白色のケトルの背すじ 祖母からの電話をとらず眠るたび僅かに足の指が浮き出る 選ばない言葉を奥へしまいこみ葉書に光

崩れるまで【短歌二十首連作:ワークショップ・31文字の私に出会う】

■ 昨年の秋から、2021年の3月まで行われた、大森静佳さんとNPO法人アートファーム主催の短歌ワークショップ「31文字の私に出会う」に参加させていただきました。 20首連作『崩れるまで』は、参加者のみなさまに批評をいただき、記念冊子に掲載させてもらった作品です。長い連作に挑戦したことがなかったので、おっかなびっくりでした。貴重な場を設けていただき、また丁寧なコメントをいただきありがとうございました。 「31文字の私に出会う」の冊子は一般に販売もされていて、以下のリンク