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崩れるまで【短歌二十首連作:ワークショップ・31文字の私に出会う】

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昨年の秋から、2021年の3月まで行われた、大森静佳さんとNPO法人アートファーム主催の短歌ワークショップ「31文字の私に出会う」に参加させていただきました。

20首連作『崩れるまで』は、参加者のみなさまに批評をいただき、記念冊子に掲載させてもらった作品です。長い連作に挑戦したことがなかったので、おっかなびっくりでした。貴重な場を設けていただき、また丁寧なコメントをいただきありがとうございました。

「31文字の私に出会う」の冊子は一般に販売もされていて、以下のリンクから購入できます。たったの180円!僕の作品のほか、参加者のみなさまの作品とエッセイが読めます。興味のある方は、ぜひお手にとってみてください。


『崩れるまで』

花の絵をかざる手つきでアリエールかおる洗濯物を空へと
訪れる春の気配を抱きかかえいつもより綺麗な白湯の色
焦げかけのトーストの音 ものすごいはやさでかけよってくる愛だね
前世では花だったひと つつつっと手の甲にロクシタン重ねて 
生まれつきあなたは花の比喩だから独り言さえ季語に似ている
文字化けのゆっくりすすむ生活のむこうで揺れている火のかたち
ゆうやけがてらす東京とぷとぷと赤いうつわになる時間帯
本日はちょっぴり雲が多すぎる、とはいえ何もいえないけれど
前世では恐竜だった地下鉄の胃の中の哺乳類たちの群れ 
お疲れ様です お疲れ様です 二億年前からずっと疲れていてさ
東京の冷えた感じを守るため星をぬりつぶしてゆくバイト
上の人がSUM関数で管理するぬりつぶされた星々の数
「純粋に疑問ですけどひとびとが死ぬのって悲しくないですか?」
なにもかも忘れていたい一息に水平線を崩す想像
もえさかる花、欠けてゆく花びら、輪郭を持つ幾億秒を
かなしみの背後へそっとまわりこみ死ぬまで脇をくすぐってやる
休符さえ光になっておちてくる 崩れるまでの世界の話
感情に名前がついていなかった頃の記憶を思い出してる
ずっとずっと悲しみたいよ 緩んでく火の終わりへと翳す指先
朝焼けはすました顔で流れ込むかつては言葉だった温度と

(初出元:閑花空庭 31文字の私に出会う)


読んでくださってありがとうございます! 短歌読んでみてください