見出し画像

『スピン/spin』 創刊号

河出書房新社創業140周年記念に創刊された「スピン/spin」を購入した。

他の文芸誌と比べて小ぶりな姿。キュートさも感じさせるシンプルで洗練されたデザイン。表面の手触りはふわふわとしており、少し曲げるとベストな力加減で押し返してくれる。この雑誌のことは前から気になっていたけれど、本屋で実物を手に取った瞬間、「これは買うしかない!」と思った。内容がどうこうよりも、物理的に視覚的に触覚的に相性が良いと思った。

そして何よりも300円という前代未聞の安さには目をひん剥いた。値段を確認せずにレジに持っていったため、書店員が弾き出した数字の意味を一瞬飲み込めなかった。この紙質とデザインとボリュームとラインナップで300円はどう考えてもおかしい。エナジードリンクを一本買ったら消えてしまう額だ。(もっと値段を上げてくれても全然買います…)

本屋を出た後はそのまま行きつけのカフェに駆け込んだ。レジ袋から「スピン」を丁寧に取り出し、ホットコーヒーを傍に置いた。まずは表紙を楽しむ。日常に「読書」の「栞」を、これが本誌のキャッチフレーズらしい。効率やスピードが常に求められるせせこましい日常に栞を挟み込み、読書というひとときの安らぎをもたらしてくれる雑誌。栞として利用できる本に付いた紐を意味する「スピン」という名前はぴったりだ。そして掲載されている作家たちはほとんど読んだことのない人たちばかりでワクワクする。雑誌の良いところは単行本を買うには勇気がいる未知の作家の文章を気軽に味わえるところだと思うので、これをきっかけに自分の読書の幅が広がれば良いなと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?