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宇宙人は大阪を選びなよ


前々から、宇宙人が日本に潜伏するなら「大阪」を勧めたいと思っている。

大都市なので紛れやすいというのもあるが、紛れなくても馴染んでしまうと思うからである。体が多少ウロコで覆われていても青色の肌でピンクの大きな耳が付いていても、大阪では誰も気に留めない(それは言い過ぎかもしれない)あるいは受け入れる人がすこしだけ多いのではないかと思う。

つい最近まで「あびこ」という大阪市の端に住んでいた。駅前に昨今にしては栄えている地元に根付いた商店街があり、ダイエーというスーパーの2階には休憩スペースがある。そこでは平日の昼間から近所のおじいやおばあが集まって雑談したり、ひとりで思い思いの時間をじっと座って過ごしている。憩いの場としての様子なのかと言うと、そうでもなく、いささか異様な感じでもある。なぜかと言われると説明しにくいのだが、とにかくそこには統制のとれたものが何も無い。見た目の違い(というか個性の強さ)もさることながら、忖度なしに相手の痛いところを突き合った会話を繰り広げ、恋愛沙汰も当然あれば喧嘩もある。まず話が噛み合っていない時も多いように思う。それでも毎日、思い思いに集まってくる。

この様子を見かけるとなぜだか少しほっとする。分かり合うために集まったり話したりしているのではないんだな。「この人何ゆうてんねん」の気持ちのまま、分かり合えないさみしさのまま、人は人と過ごしているんやと再確認できる。分かり合えないまま受け入れ合っているんやなと。相手のことは分からない。相手がどこで生まれて育ちどうやって生きて何を感じてきたのか。

大阪には昔からいろんな国籍や故郷を持っている人が暮らしている。

小さいころから大阪で「それぞれにちがう人生を持ったひとたち」を知る機会は多かった気がする。でもだから何ということはない。みんな同じ街で同じ時間を生きている。それがすべてなんだと思う。

「大阪」には「ちがう」ことを「ちがう」ままに受け取り流せるしなやかさがあると思う。

そして「ちがう」ということ、それが何なのかをいつも考えてきた気がする。違うことを恐れないのは難しい。それでも、自分がその「ちがう」の中のひとりであると知ることで私たちは繋がってきたのではないか。



ようこそ宇宙人さん。


そういえば、寄生獣という漫画を初めて読んだ時、付き合っていた彼氏にミギーに似ていると言われた。そしてその時、飼っていた猫のことを田宮良子に似ていると言っていた。普通逆だと思うが言われて納得したのを覚えている。


青だと言う
黒にしか見えないよ
だからこそ
あなたとわたしは
かろうじて隣にいる

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