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2023年6月の記事一覧

立つ鳥跡を、│ 短編小説

立つ鳥跡を、│ 短編小説

俺は今、最高に満ち足りている。
薄暗いバーのカウンターで男は1人、酒を飲んでいた。シワの寄った黒いシャツからは、ツンとした絵の具の香りがする。
「どれでもいい。強いやつをくれ。俺は今最高な気分なんだ」
バーテンダーは何も聞かず、ただ無言で頷いた。

そう、俺は満ち足りている。
ついこの間までは、こんな高い店で酒を飲むなんて、夢のまた夢だった。

死んだ母親が、俺の絵を褒めてくれた。
画家の仕事を始

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