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まごころ

職場にたどりつくまでの最後の坂道、
気合を入れてペダルを漕ぐと
オモイキリの良い音が足元で鳴った。
信号が変わらないうちに
冷静に向こう側へ渡る途中
振り返ると案の定チェーンは綺麗に切断されていた。
今日は会議が重なって、
お昼休みもほぼ存在しないようなものなのに、
とりあえず誰に聞いたら直す場所がわかるのかを
考えながら駐輪場に自転車を止めた。


はじめに会った職場のお姉さんに
今朝の自転車の件を相談すると
「それは大変!」と
自転車屋さんを教えてもらうだけにとどまらず、
会議詰まりの私に変わって電話をかけ、
自転車を見てもらえないか交渉してくれたうえ、
仕事にキリが付いたところで
自転車屋さんに状況を聞きに行くと、
代車まで手配してくれていた。



今朝も私は代車があるので、
自転車が治るまで何不自由なく過ごしている。

チェーンを交換するときの自転車屋さんの説明は
異様なほどに丁寧で、
必要な箇所を必要なだけ治してくれるみたいだった。
こんなサービスは街にあまりなくて、
お店屋さんとお客さんの関係じゃなくて、
困っている人と助ける人の関係に近いような気がした。



本来の「商売」はそんなところから
始まったのではないかと考えたりもした。
自転車が壊れて、新しいモノをまた、
経験させてもらった。



いつもは通らない道をいつもと違う自転車で通ると
川沿いの道はまた違って見えて、
また改めて写真をとりに来ようと思う。

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