がまん強い子どもは将来成功する?

あなたは、目の前に置かれたマシュマロを、食べずに我慢することができるだろうか?
この方法を用いた実験によって、驚くべき結果が報告されている。

10年後の驚くべき結果

 社会心理学者のウォルター・ミシェルらによって行われた通称「マシュマロテスト」と呼ばれるこの実験では、4~5歳の幼少期の子どもを対象に、マシュマロのような報酬をすぐに受け取るか、しばらく待ってより多くの報酬を受け取るかのジレンマ状況をつくり出す。
 例えば、保育園の子どもに椅子に座ってもらい、実験者は部屋から退出する。子どもの目の前に置かれた皿には1個のマシュマロが載っており、
これをすぐに食べることもできる。しかし、実験者が部屋へ戻ってくるまでその場から動かず待つことができれば、子どもは2個のマシュマロを受け取ることができる。つまり、このテストでは、ただちにマシュマロを食べてしまう子どもと我慢できる子どもを弁別することができる。

ミシェルらは、マシュマロテストに参加した子どもたちを数十年にわたって追跡調査したところ、ある事実が明らかになった。
 マシュマロを食べずに我慢できた子どもは食べてしまった子どもよりも、大人になった後の様々な成績が優れていたのである。より具体的に言えば、
10年後の青少年期においては、先のことを考えて計画・行動ができ、誘惑に負けにくいという特性が見出された。さらに、大学進学適性検査では、マシュマロを我慢できた子どものほうが我慢できなかった子どもよりもはるかに高い得点を示した。また、成人期にさしかかると、我慢できた子どもは肥満指数が低く、対人関係スキルにも優れていた。

マシュマロを我慢できた子どもの脳内基盤は、我慢できなかった子どもと何が違うのだろうか。
fMRItと呼ばれる脳内の血液代謝を測定する方法による検討では、我慢できた子どもも前頭前野と線条体の機能的結合が強いことが明らかとなった。
前頭前野は脳内ではいわばブレーキの役割をしており、行動や思考の制御、
抑制に関わる領域である。それに対して、線条体は報酬系と呼ばれ、快楽に対して強く反応する領域である。つまり、マシュマロを我慢できる子どもは前頭前野によって線条体の活動を適切に制御することができている一方で、
我慢できなかった子どもは制御なしに線条体が反応してしまっていると考えられる。


我慢できない子はどうするのか


このように、マシュマロを我慢できるかどうかによって、その後の人生が大きく左右されることが明らかとなってしまったが、我慢できない子はどうすればよいのだろうか。
仮にあなたのお子さんが我慢できなくても心配はいらない。
というのも、このような自制能力は後天的に身につけることが可能だからである。特に重要なのは、自制の方略を身につけることである。
例えば、マシュマロテストでは、自分の目の前にマシュマロを置くよりも隠しておいた方が我慢のできる時間が長くなる。また、親が過保護にコントロールするよりも、子どもの自主性に任せて育てた方が自制能力は高くなることが示されている。子どもの生活する環境は、遺伝子的な要素とともに、
自制能力の発達に重要なのである。


心理学ビジュアル百科 抜粋

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