黒澤監督が複数台のカメラで撮影するようになったのは1954年公開の『七人の侍』からだ。合戦シーンでは何が起きるか分からいという理由で使い始めた。
普通の芝居場面でも使うようになったのが、1955年公開の『生き物の記録』からだ。
「何故3台のカメラを使うのか?」という『乱』の現場に取材に来たフランス人記者に質問されると黒澤監督は明確に答えた。
「カットを割って撮影すると、人間の感情が途切れてしまう。だから長いシーンをワンカットで撮る」そんな撮影をするには長い稽古が必要だとも語っている。
「演技の成長には時間がかかる。毎日少しずつ確実に成長する。現場に来て求めても急には出来ない。長い時間を掛けて演技とは何かから教える」
こうしてクランクイン前の6か月間リハーサルが行われた。稽古中役者はメーキャップを施して衣装をまとい撮影時と同じ格好で臨んだ。これは過去の黒澤作品で行われてきた伝統的な方式だ。リハーサル中にメイクと衣装が俳優の体になじんでくるのを狙っている。
リハーサルは黒澤フィルムスタジオの会議室で行われた。撮影現場とは環境が全く違う。だから現場では改めて演技指導が必要になる。その様子を克明に記録したのが谷口と河村が撮影したこの記録だ。
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