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【竜とそばかすの姫】すずちゃんの成長って

※以下ネタバレ含みます


幼い子供が目の前で母親を失うショックの大きさは計り知れない。
見ず知らずの子供を救って亡くなってしまったお母さんに対して、「どうしてお母さんは私じゃなくて名前も知らないあの子を選んだのか」と、ずーーーーっと悩んで憎んで葛藤していたすずちゃん。なぜお母さんが自分と一緒に生きていく選択を捨てたのか、納得が出来ないまま高校生になる。

高校生なんてまだまだ子どもだ。幼い頃の記憶も鮮明に残ってる筈。ましてやトラウマなら尚更。大人と違って「割り切る」ことが出来ないすずちゃんに、年相応の子どもらしさを感じて少しホッとした。納得が出来ないとお母さんの死を受け入れる事もできないだろう。
すずちゃんが母親の死を受け入れるには、お母さんがどうしてそんな行動をとったのか、すずちゃん自身が納得しないといけない。

映画終盤のクライマックスシーン、竜を救おうとしたベルが、己の本当の姿(すずちゃん)を晒して歌を歌うあの場面。ベルのような、世界的レベルで有名なアカウントが身バレするだなんて、プレッシャーも批判の数も女子高生がひとりで背負えるレベルじゃないと思う。さらに、すずちゃんは匿名の恐ろしさを知っている。母親が自己犠牲で川に飛び込んで亡くなった時も、匿名で散々批判された記憶は彼女にとってまだ新しいだろう。

ベルは、すずちゃん自身を取り戻してくれた場所だ。あの世界で真の姿を見せる事は、その場所を失うという事。それはもう一人の自分(ベル)が死んで、すずちゃんの精神的な死が訪れる事を意味していた。







それでもすずちゃんは自分の姿で歌うことを選んだ。






名前も知らない、画面の向こうの誰かを救う為に。







すずちゃんは自分を犠牲にした。もう一人の自分が死んでしまったのだ。もう二度とベルには戻れない。

でもそこで初めて、すずちゃんは幼き頃のお母さんの行動の意味を知った。自分を犠牲にしてまで誰かを助けに行った母親の行動を思い出した。彼女はあの時のお母さんと全く同じ事をしていた。

Uの地平線に浮かぶ三日月を眺めるすずちゃんの表情。すずちゃんが、お母さんの死をようやく受け入れた瞬間。お母さんを憎む自分はもういない。 

お母さんの行動を理解したすずちゃんは、無謀にも関東まであの兄弟を救いに走り出す。



過去から解放されて前を向けるようになったすずちゃんは、あの時のお母さんのように誰かの人生を救うことになるのだ。





すもやま

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