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UFOにツイテ

UFO??
と言ったら、未確認飛行物体のことだが、、
今回はその類のお話ではないのです。
私の恩師のさとこー先生のお話。

先日、夜道を歩いていたら、
ふと上空にキラキラ光る丸い物体が浮いていた。
フインフインと上下運動を繰り返したと思ったら、
スーッとゆっくり直下していく。

あー、あれはドローンかしらね。

最近ではそういった奴らが空に普通に浮かぶようになったりしたから、
うっかり「あれは!!UFOかいね!!?」
なんてお口をあんぐりして見ていたら笑われちゃったりなんかして。
気をつけなきゃいけないものです。


いつか、、
あれは春先だったかしら。
恩師のさとこー先生が入院なさっていた時に、
退院決定お祝いに私が贈った花束が鉢に見えたらしく、
可愛らしいブーケを捕まえて、
ブツクサ、やれ鉢は病人に贈るものじゃあないんですよだとか、
根付くっていうもんですよだとか、
お電話をいただいたかと思えば、
そんなようなことをおっしゃるもんだから、
違うんですよ先生、それはブーケになっているんですよと、
いつもどおりのチグハグで、けれども平和なやり取りをしていた。

ふと、先生がこう切り出す。
「君、UFOは見た事ありますか?」

え??何をおっしゃるんですか、先生ー。
見た事ないですよー。
なんてケラケラして私が言うと、
「そうですか、、いや大真面目に聞いているんですよ?」
と、先生は声を落として言った。

私は困惑して、少し黙っていると、
「昨日ね、僕はUFOを見たんですよ。」
と先生が静かに言った。

「え?!先生見たんですか?どこでですか??」
「いやね、、、僕が入院している◯◯病院は、海に面しているんですよ。
僕はね、病室に飽きちゃうと、よくお散歩に出かけるんです。
お散歩と言っても、廊下をちょっと歩くだけなんだけれど、
病室が結構高い階にあるもんだからさ、
窓からその海を見れていいもんなんですよ。
そこでちょっと道草をして、気が済んだら病室に帰るんです。」
「あ〜それはいいですね〜。眼下に海が広がるのは壮観でしょうね。」
「でね、僕がいつもの通り、海を見ていると、その上空に小さいものが見えたんです。」
こりゃこりゃ、、いつもの冗談かしらと調子を合わせて話をきく。

「それをじっとね、観察していると、今度はその物体がヒュッとすごいスピードで左に動いたんです。」
「え〜!昼間ですよね?」
「そうです、昼間ですよ。物体は白いんだけれど、それが今度はヒュッと直角に上に動いて、今度はジグザグ動くんです。僕は驚いちゃって驚いちゃって。」
「それは大発見ですね!」

「でね、、問題なのはさ、、、
ビックリして近くにいた先生を呼んで、
ほら、あそこにあるでしょ?あの物体。あれはUFOですかね。
ほら、今変な動きをしたでしょ?って一生懸命僕が伝えていて、
先生もそれを見ているはずなのに、
あ〜すごいですね〜、って言うばかりなんですよ。」
「え?その先生にもUFOは見えているんですよね?」
「そう。なのに、そんな反応でさ。
別の人を捕まえて、ほら、あそこに物体が見えるでしょ?
今動きましたよね?ほら。僕はずっと観察していたんです。
あれはUFOに違いないと思うんですよ。って僕が伝えても、
は〜そうですか〜、ってその人もそんな調子なんですよ。
僕はなんだか気分が悪くってさ。」

私は、様々なことを想起してみたけれども、
それを先生に言うことはなかった。
私がうーんうーんと悩んだ声をあげていると、
ふと、間を空けて先生は、
「君は、僕がUFOを見たことを信じてくれますか?」
と言った。

私は一瞬息が詰まった。
グッと声が出なかった。
それまで冗談半分で先生の話を聞いていたことを反省した。
先生の真実を否定していた自分が情けなくなった。
そして、ブワッと目頭が熱くなった。

「先生、何をおっしゃるんですか。
信じるに決まっているじゃないですか!
私も一緒に見たかったです。
その場に居たかったです。
そしたら一緒に観察できたのに。」

「良かった。そう言ってもらえて。」
先生は少し寂しそうにそう言って、
最近作った作品を早く送ってきなさいよ、と私に話をして電話を切った。


UFOはいるんだろう。
先生が見たものはUFOなんだろう。
そうでなかったとしても、
先生にしか見えない特別な素晴らしいものだったに違いない。
いつかは私も見れるんだろうか。
そんなことをふと、家路の途中で思った。