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思い込みにツイテ

私が某大学で研究室の助手をやっていたころ、
ブラジル出身の交換留学生の子が私にお土産を持ってきてくれた。
何やらカンカン(缶のこと笑)には、
美味しそうなマンゴーのイラストが描かれていた。

これはいいものをもらったわ〜と、
研究室のお土産コーナーにひとまず置いて、
仕事が終わったあとに食べようかしらんと思っていた。

けれどもその日はうっかり食べるのを忘れてしまって、
後日、あらそうだったと思い出してコーナーに行ってみると、
あるある、乾燥マンゴーは美味しいぞ〜とヨダレを垂らして見つめる。
そこにたまたま後輩の男の子がいて、
一緒にカンカンを開けて食べることになった。

二人でニマニマしながら、
カンカンのふたのシールをはがして、
さぁ楽しみにしていた乾燥マンゴーを食べましょ!
っとかたいフタを開けた瞬間、
目に飛び込んできたのはドスグロイ塊!

え!?

っと、後輩の子がフタをとっさに閉めて、
パッと同時に目を見合わせる二人。

今のはなんだ??

恐る恐るフタを開けてみると、
どうやら腐っていたのではなく、
ペースト状のマンゴーが中に入っていたのでした。

我々は何だか妙な感覚で不思議な空気に包まれて、
面白いような、ちょっと嬉しいような。
可笑しな勘違いでした。

日本の感覚からすると、
お土産って大抵が、
その場で食べやすいものをと考えたりしますよね?
やれ、何人いるだとか。
やれ、あの人はあれが嫌いだとかアレルギーだとか。
気にして持って行ったりします。

けれども、そんな文化的感覚の違いが、
思い込みを生じさせたわけであって、
別に食べやすいものでなくったっていいわけです。

ブラジルのその子は、
「これおいしいよ〜!◯◯ちゃんに食べて欲しくて持ってきたよ〜!」
と言っていました。
その一心で、持ってきてくれたお土産なのです。

少々戸惑った我々でしたが、
このペーストは舐めて食べるのではなく、
料理が得意なあの人に託そうと、
先輩の女性に預けることにしました。

そしたらなんと数日後、
しっかりとおいしいケーキとなって帰ってきたのです。
持つべき者は料理好きの方ですね!
とても美味しくいただきました。

思い込みは時に人間を縛ったりします。
それは、文化だったり、人種だったり、思想だったりします。
そして思い込みは、とても大きな力を呼び起こします。
それがプラスでもマイナスでも、
強力な人間の原動力となります。

けれども、例えばこの件だと、
すぐ食べられないじゃんと、
ブラジルのあの子を憎んだりしてしまったら、
ちょっと勿体ない関係性になっていたのかもしれません。

大事なのは相手の立場を知ることなのね、
と、そのことを思い出しながら恵比寿でバスを待っていると、
あらま、パスモがない!
って、右ポッケに入れたんだった。
という思い込み。
じゃなくて、それはモノ忘れ。