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ポースケ 津村記久子 (感想)

カフェ・ハナタカに集う人達のゆるい日常

主人公は変更になっているがポストスライムの舟から続く世界

この本でポースケを知った。イースター(復活祭)といえばわかりやすいか。ポースケという気の抜けた名もなにか可愛い。

復活祭。出て来る登場人物は何かしら抱えている。些細と言われるようなものから深刻なもの。

会社でちくっと嫌なことを言われるのぞみ。

いちごを学校で育てたいと日々プランターを移動させる恵奈。

前の会社でパワハラを受けていた佳枝。

元彼からストーカーされるゆきえ。

娘の就職活動に心を痛める十喜子。

子どものいない冬美。

どれも日常でありそうな悩み。

最後にハタナカでポースケを開催する。

ゆるいようでチクチクとした日常を生きている人達。

ハタナカに集まる人達が全員で解決!という展開はない。

本人達が折り合いをつけたり、事態がちょっと変わったりするくらい。

こういう日々あるなと思いながら読んだ。

ポストライムでは空気の読めないそよ乃がポースケではそこまでうざいキャラではなくなっていたのに、あの日々からその乃も変わっていたんだなと感じた。

亜矢子を助けたいの十喜子さんが一番好きかも。

就職活動上手くいかなくて苛々している亜矢子に頼まれて、代わりにSNSを更新する母親。

ここまでするのか、もう放っておけと思わなくもなかったけど、母親というのは心配でたまらないのだろう。

できることはほとんどない。自分が社長なら良かった。芸能人で、この子の面倒を見てちょうだいと誰かに言える立場ならよかった。何か継がせられるような家業をしていればよかった。

就活で苦しんで泣く娘に母親は心を痛める。しかしどうにもならない。

出来るのはそっとしてあげられるだけ。

我々しもじもの者は、一つ一つ通過して、傷付いて、片付けていくしかないのだ。そうする以外はできないのだ。

子供達を見守る十喜子さんに録り溜めしたドラマをゆっくりと視聴する日々がいつか訪れてほしいと願う。

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