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彷徨う者たち 中山七里 読書感想

宮城県警シリーズ第三弾にして最終章
解体対象の住宅から男の死体が見つかった
密室だが男の頭部は殴られた後がある 自殺ではありえない
被害者の男は仮設住宅に残る住民を他に移ってもらうよう説得する仕事に関わっていた

フィクションとは思えない
被災地のリアル小説として読んでしまう

簡単に移動を口にするが、何故ここに拘るかは復興という名前の元に声が消されてしまう
そんなに近所との繋がりって大事?と思う人もいるだろう
でもいざ自分が年を取ったときに震災に呑まれて、見知った人達から引き離されて放り出されたら同じことを言えるだろうか

護られなかった者たちへ 境界線
シリーズ三作目となるが、声を消されている人達の悲鳴が描かれている
たんなる事件物、というだけではない

タイトルの彷徨う人達の意味が書かれている部分では涙が零れた
人の心に寄り添わない復興ってなんだろう
形だけの復興って誰が喜んでいるんだろう 金儲けしたい人だけなんだよね

今回、うさんくらいボランティアと名乗るNPO団体も絡んで来たリと、切り込んでくる内容だった
1月の地震でも迷惑系ボランティアが問題になっていたのを思い出した
食料をせびったり、写真撮ったり動画撮ったり、迷惑しかならないなら被災地に行くんじゃないよ
SNSの発達と同時に問題が表面化している

さらに被災者でも失った人とそうでない人とで隔たりがあるというのも、悲しいけれど納得してしまう
引け目から幼馴染に強く出られない蓮田刑事
しかしラストで取り戻した友情に心揺さぶられる

最終章に相応しい一冊

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