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女たちの避難所 垣谷美雨 読書感想

被災に巻き込まれた人達
ギャンブル中毒の夫が亡くなっていることを願う福子
乳飲み子を抱え夫の無事を願う遠乃
学校にいた子どもの無事を願うシングルマザーの渚
避難所に集まった人たちは先の見えない生活に苛立ちや心細さを感じていた


被災地で過ごす女性たちの心情をリアルに描いた小説

怖かったのが作者の後書きに仕切りを最後まで使わせなかった避難所があったというところ
フィクションよりも怖い
絆だから、家族だから一緒に乗り超えていきましょう、だって
いや、家族でもプライバシーはありますけど。
女性だからプライバシー必要ですじゃなく、男性だって他人が側にいたら落ち着かないよ
小さな子供連れている人なんて、仕切りがあるだけでかなり安らぐだろうに。

遠乃は赤ちゃんを連れていて、その授乳を舅と義兄が仕切りなしだから毛布越しで見ようとしているのがまた気持ち悪い
昔の女は堂々と授乳していたって、その言い方も気持ち悪い

仕切りをくれって言っても絆だからと聞き入れてくれない
しかもそれを声高には言えない。和を乱すからと躊躇してしまう。
女の分際で言うな、という地域
都会から被災見舞いに来た福子の息子夫婦はその感覚はなんだと首を傾げてしまうのだが、この土地では女性が意見を言うと反発されてしまう


かといってこの小説が田舎は男尊女卑でダメ、というのだけを書いているのではない
都会に映った人達は都会では都会で違うことに戸惑い、ラストで戻るかどうかは将来考えるということになっている
え、あの舅がいる土地に帰るの、って思うけれど、やっぱり住み慣れた土地への愛着はあるのでしょう
でもあのまま住み続けていたら最悪な事態になっていたのは明らかだから、
一時の避難は必要
それを故郷を捨てたと言うのは間違い
それぞれの事情っていうものがあるのだから。

トイレ行くにも女性はひとりでいけない
避難所で女性を狙う悪いやつがいるとか恐怖

田舎だからじゃない
きっと都会でも大きな地震が起きて沢山の人が避難所に押し寄せたら直面する問題

小説だから良き方向で終わったけど、現実はそう上手くいっただろうかと考える

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